著者
岸森 健文 小菅 邦彦 井上 豪 関 淳也 犬塚 康孝 武田 晋作 竹内 雄三 岡田 正治 池口 滋
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.11, pp.2221-2229, 2016-11-10 (Released:2017-11-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

院内心停止で自動体外式除細動器(automated external defibrillator:AED)がショック不要と判断した中に3例の心室頻拍(ventricular tachycardia:VT)が含まれていた.事後検証で解析システムには問題がないとわかった.医療関係者は,AEDによる解析の限界を認識しておく必要がある.また,心電図モニターをいち早く患者に装着し,必要に応じてマニュアル除細動器を手配することが求められる.心電図モニター付きAEDを設置している施設では,マニュアルモードに切り替えて電気ショックをする方法に習熟しておく必要がある.
著者
福田 庸太 平野 優 井上 豪 玉田 太郎
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.83-87, 2022-02-05 (Released:2022-02-05)
参考文献数
14

生体内で様々な化学反応を触媒するタンパク質(酵素)の働きを理解するために,この微小な分子機械の全体像,すなわち原子レベルでの立体構造を明らかにする研究が盛んにおこなわれている.なかでも単結晶X線構造解析は最も一般的な手法である.他方,得られた構造情報を用いて量子力学に基づいた量子化学計算をおこない,酵素反応機構に迫る研究も多数おこなわれている.だが,X線結晶構造解析には様々な限界があり,時として実験結果と計算結果との齟齬が生まれ,真の化学反応機構の解明に到達することが難しい.そのような例として,地球上の窒素循環に関わる銅含有亜硝酸還元酵素(CuNIR)があげられる.これは亜硝酸イオンの一酸化窒素への一電子還元というごく単純な反応を触媒する酵素である. CuNIRについて,過去30年以上様々な研究グループが反応機構の解明に取り組んでおり, X線結晶構造解析も精力的におこなわれてきた.しかし,結晶構造に基づいて提案された機構と,理論計算から予想された機構には,電子伝達経路や反応中間状態に違いがあり,どちらが正しいかの議論が続いている.この理由の1つは,X線結晶構造解析では水素原子の観測が原理的に困難だということである.タンパク質を構成している原子の約半数が水素原子であり,タンパク質を取り巻く水分子にも水素原子が含まれている.さらに,CuNIRが触媒する反応は,亜硝酸イオンへ水素イオンが渡される過程を含む.よって,水素原子位置も含めた精密な構造情報を得ずして,反応機構の詳細に迫ることができないのは当然であろう.こうした問題を解決すべくわれわれは,水素原子の直接可視化に優れた中性子結晶構造解析をCuNIR研究に適用することを目指した.CuNIRの大型かつ高品質な結晶を作製し,中性子回折強度データ収集を大強度陽子加速器施設(J-PARC)の物質・生命科学実験施設(MLF)内にある茨城県生命物質構造解析装置(iBIX)を用いておこなった.構造解析の末に得られたCuNIRの構造では,酵素活性中心に存在するアミノ酸残基や水分子上の水素原子をすべて可視化することができた.これにより,亜硝酸イオンへの水素イオンの運搬に関わる2つの触媒残基について,アスパラギン酸は脱プロトン化されており,ヒスチジンはプロトン化されているということが判明した.つまり基質への水素イオン運搬はヒスチジンから始まることが示唆された.さらに,反応中心に存在する銅イオン上に,水分子からプロトンがひとつ外れた水酸化物イオンが観測された.この構造は計算化学的に予想されていたものの,直接可視化されたのは初めてである.また,同じく量子化学計算によって予想されていたタンパク質内電子伝達経路中に,電子伝達反応を有利にするような強固な水素結合が存在することも実験的に初めて証明できた.今回,中性子結晶構造解析によってわれわれが得たものは,これまで矛盾がみられたCuNIRをめぐる実験と理論の双方を繋げるものである.今後,原子構造から量子レベルで生命現象を理解する「量子構造生物学」への橋渡しとなることが期待される.
著者
土井 健史 井上 豪 橘 敬祐
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ヒストンH3K9を特異的にメチル化するSETDB1について、その酵素機能を制御する分子機構を解析した。(1)SETDB1のモノユビキチン化修飾がH3K9me3活性を介して、遺伝子発現を制御していることを明らかにした。また、その制御機構に関わる因子として、クロマチン制御因子であるTRIM28を同定した。(2)核内のSETDB1がプロテアソーム阻害剤と核外排出阻害剤によって増加し、それに関わる候補因子を見出した。(3)SETDB1-MCAF1のX線結晶構造解析を行うため、蛋白質の精製および結晶化を試みた。本研究で明らかとなった知見は、SETDB1を標的とした新たながんの治療薬の開発につながる。
著者
井上 豪 岡島 寛 浅井 徹
出版者
一般社団法人 システム制御情報学会
雑誌
システム制御情報学会 研究発表講演会講演論文集 第51回システム制御情報学会研究発表講演会
巻号頁・発行日
pp.101, 2007 (Released:2008-06-16)

4WS車両は,2WS車両では不可能な平行移動が可能であるなど,運動自由度が高い車両であることが知られている.このような制御対象で軌道追従を行う場合,冗長な自由度を適切に利用すれば,乗り心地や車両の安定性など,追従以外の性能の改善が期待できる.そこで本研究では,2つある入力自由度を追従に関する部分と性能改善に関する部分に分離することで,最適制御問題の枠組みで乗り心地などを考慮した制御を行う.その際,数値例により有効性の検証を行う.
著者
井上 豪
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.316-317, 2017-12-31 (Released:2017-12-31)
著者
井上 豪 松村 浩由 溝端 栄一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

アレルギーや炎症の媒介物質であるプロスタグランジン(PG)D2 は、補酵素グルタチオン(GSH)存在下、造血器型プロスタグランジン(PG)D 合成酵素(H-PGDS)の働きによって産生される。以前、Ca,および Mgイオンの働きによって活性化される分子メカニズムをX線構造解析によって解明したが、これを中性子線解析法によって解明する目的で大型結晶の育成研究に取り組んだ結果、0.5 mm^3程度の高品質結晶が得られることが判明した
著者
井上 豪 裏出 良博
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.036-043, 2007 (Released:2007-02-21)
参考文献数
22

The structural based drug-design (SBDD) is one of the useful methods for producing a novel medicine. We recently succeeded in X-ray crystallographic determination of two target molecules. One is human hematopoietic prostaglandin (PG) D synthase (H-PGDS) that produces PGD2 as an allergic mediator in mast cells and Th2 cells. The other is Trypanosoma brucei PGF2α synthase (TbPGFS), a member of the aldo-ketoreductase superfamily, catalyzes the NADPH-dependent reduction of PGH2 to PGF2α, whose overproduction during trypanosomiasis causes miscarriage in infected female subjects. In this report, we introduce the recent progress in the research of the high resolution structures of human H-PGDS and TbPGFS useful for SBDD.
著者
井上 豪 中村 努 石川 一彦 甲斐 泰 松村 浩由
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

超好熱始原菌Aeropyrum pernix K1株由来のペルオキシレドキシン(Prx)であるThioredoxin Peroxidase(ApTPx)は、チオール依存型のペルオキシダーゼであり、過酸化水素H_2O_2やalkylperoxideを水やアルコールに還元する働きを持つ。ApTPxは、子量20万の10量体蛋白質であり、プロトマー1分子中に3つのシステイン残基(C50,C207,及びC213)を持ち、たとえば、過酸化水素を水に還元する反応を行う。これまでの研究から、ApTPxのアミノ酸配列は1-CysのPrxと相同性が高いのに対し、その反応機構は2-CysのPrxと同様に2つのシステイン残基(C50及びC213)が反応に必須であることが報告されている。本研究課題では、変異体C50S,C20,7S,C213Sの結晶中で過酸化水素と反応させ、中間体構造を低温でトラップしてX線構造解析を行う方法で、ApTPxによるH_2O_2の還元機構の詳細の解明を目指した。その結果、C50SおよびC213SについてX線回折強度データの収集を行い構造精密化中で反応機構に関する知見はまだ得られていないが、C207S変異体からは、Cys50がCys-SHから、Cystein sulfenic acid (Cys-SOH)の状態へと酸化され、S-OH中間体を形成し、配位子数4の硫黄原子(10-S-4)を持つ超原子価構造をとることが判明した(Proceedings of the NattionalAcademy of Sciences USA(PNAS),in press)。