著者
飯野 智絵 櫻木 美菜 増永 啓康 櫻井 和朗
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.84-88, 2012 (Released:2012-02-24)
参考文献数
10

遺伝子送達のための輸送媒体(ベクター)として,一級アミンを有する芳香族カチオン性脂質と,zwitter 型の中性脂質である DLPC(2-Dilauroyl-sn-glycero-3-phosphocoline)を混合して脂質ミセルを準備した.この脂質と 3 量体から 20 量体までの異なる塩基数をもつ一本鎖 DNA を混合して DNA/脂質複合体(リポプレックス)を作製した.これらリポプレックスの構造解析を小角 X 線散乱にて行った.DNA 添加前の脂質ミセルは球状であり,DNA と複合化させると層状のラメラ構造へと変化した.dA と dT でラメラ構造が形成され始める塩基数が異なり,塩基数が多い場合の層間隔にも違いがあった.また円偏光二色性測定よりリポプレックス中の DNA のコンフォメーションが異なり,dA は水中におけるコンフォメーションが変化することなくリポプレックス中に存在しており,dT は水中でのコンフォメーションが維持できず,カウンターイオンや水分子との配位または水素結合が優先され,分子内でのスタッキングが難しく新たな規則性が生まれていることが示唆された.
著者
櫻井 和朗
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.218-225, 2015-07-25 (Released:2015-10-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1

siRNAやCpGDNAなどの核酸医薬を抗原提示細胞へ選択的に送達するDDSツールとして実用化を目指して開発研究が進んでいる、多糖核酸複合体に関して、その発見から現在にいたる過程を、著者のDDSとの出会いにさかのぼって概説する。
著者
田之畑 大二郎 真田 雄介 望月 慎一 宮本 寛子 櫻井 和朗
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.37-47, 2015-02-25 (Released:2015-02-25)
参考文献数
22
被引用文献数
2

筆者らは,β-1,3-グルカンの1種であるシゾフィラン(SPG)が核酸と複合体を形成すること,その複合体が核酸医薬の薬物送達システム(Drug delivery system:DDS)の材料として利用できることを見いだした.DDSとしての有効性の検証はもちろんのことながら,その開発の基礎となり,かつ,薬事申請で必要となる複合体の構造や水溶液中での性質など基礎物性を明らかにすることは極めて重要な課題である.本報では,SPGや核酸/SPG複合体の溶液中における分子形態に焦点を当てた最近の研究成果について報告する.この中で,核酸/SPG複合体はもとの三重らせんのSPGと同様に枝分かれのない半屈曲性高分子鎖としてふるまうこと,硬さの指標である持続長はもとのSPGより減少することなどがわかった.さらに,本報ではSPGにカルボキシ基を修飾した新しいカルボン酸SPGについて紹介する.
著者
三好 賢太郎 上江洲 一也 櫻井 和朗 新海 征治
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.451-457, 2006 (Released:2007-09-21)
参考文献数
25

地球上に豊富に存在する天然多糖の一つにβ-1,3-グルカンがある. この多糖は3重らせん構造をとり, その構造は水素結合によって安定化することが知られている. 近年, この多糖と核酸が特異的な高分子複合体を形成することが発見された. 本報では半経験的分子軌道法 (MOPAC) を用いてこのβ-1,3-グルカン/核酸複合体の構造検討を行った. その計算結果から, 複合体中において核酸鎖はβ-1,3-グルカン鎖の還元末端側に3'末端側が配置され, らせんの巻き幅が拡張していることがわかった. 一方, β-1,3-グルカン2重鎖には大きな構造変化は見られなかった. また, この複合体はβ-1,3-グルカンの2位のヒドロキシル基と核酸塩基との間で水素結合を形成し, 安定化していることが示唆された.