- 著者
-
櫻井 英樹
- 出版者
- 公益社団法人 日本化学会
- 雑誌
- 日本化学会誌 (ISSN:03694577)
- 巻号頁・発行日
- vol.1990, no.5, pp.439-450, 1990
- 被引用文献数
-
1
ペルシリル置換π電子系化合物についての最近の著者らの研究を総合的に報告する。ここでのπ電子系化合物としてはアセチレソ,エチレン,アレン,ブタトリエン,トリメチレソメタン,メチレンシクプロペン,シクロブタジェン,フルベン,ベンゼンおよびベンゼンの原子価異性体である。これらのロ化合物の若干の遷移金属錯体についても述べた。シリル基は電子的および立体的に,π 電子系に強い摂動を与えるので,時として異常とも思えるような興味深い性質を示す事がある。例えばテトラキス(トリメチルシリル)エチレンやヘキサキス(トリメチルシリル)ベンゼンは可逆的なサーモクロミズムを示すし,後者は容易に相当するDewarベンゼンやプリズマンへの原子価異性を起こす。ピスシリル置換アセチレソの遷移金属錯体上での容易な1,2-シリル転位も特筆すべきもので,その結果,フルベンやトリメチレンメタン0或いはメチレンシクロプロペンの遷移金属錯体が得られた。特にメチレンシクロプロペン錯体はこれまでに得られていないものである。以上の新規化合物のX線結晶解析による構造解析は興味ある結果をもたらした。これらについて詳述する。