- 著者
-
細見 彰洋
- 出版者
- 一般社団法人 園芸学会
- 雑誌
- 園芸学研究 (ISSN:13472658)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, no.2, pp.185-191, 2019 (Released:2019-06-30)
- 参考文献数
- 23
- 被引用文献数
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イチジク株枯病抵抗性がある ‘セレスト’,‘ネグローネ’,‘イスキア・ブラック’,‘キバル’ を台木としたイチジク ‘桝井ドーフィン’ 接ぎ木樹について,本病汚染がない圃場での生育と果実生産性を,いや地耐性のある ‘ジディー’ 台樹を参考に加えて自根樹と比較した.健全圃場において定植2年目から4年目ないし5年目まで調査した結果,結果枝の全長と基部径は ‘セレスト’ 以外の台木使用樹で自根樹を上回る年があった.また,果実生産性(着果率,成熟日,1果重,果皮色,果肉糖度)は,基部節付近(1~5節)において,‘ネグローネ’台樹,‘キバル’台樹,‘ジディー’ 台樹の着果率が,また,‘ジディー’ 以外の台木使用樹の果肉糖度が,それぞれ自根樹を下回る年があった.しかし,これらは限定的で,大半の特性に自根樹との差異はなかった.また,イチジク株枯病の発生はないものの,いや地が生じている圃場で,定植2~4年目の生育を比較した.その結果 ‘ネグローネ’,‘イスキア・ブラック’ 台樹の生育は,‘ジディー’ 台樹には劣るものの,自根樹とは有意差がなかった.以上,イチジク株枯病抵抗性の4品種いずれを台木として使用しても,自根樹に比べて穂木 ‘桝井ドーフィン’ の生育や果実生産性が大きく変化することはなかった.よって,これら4品種の台木としての価値は抵抗性の強弱を第一として評価され,この点で優れる ‘キバル’ や ‘ネグローネ’ の選択がふさわしいと考えられた.