著者
歌代 崇史
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.117-120, 2014

学習者の習得段階に応じて,教室で使用する言葉を教師が調整し,調整された表現をティーチャー・トーク(教室内言語調整)という.ティーチャー・トークは円滑な授業運営に重要であるが,日本語教員を目指す日本語教育実習生(以下実習生)にとって,その練習は容易ではない.本研究では特定の日本語教科書とその進度に応じてティーチャー・トークの練習が可能なwebシステムTeacher Talk Trainer (T3)を開発し,T3を使った学習効果の検討を行った.その結果,T3を使用してティーチャー・トークの練習をすることにより,実習生は自分のティーチャー・トークと学習者が理解できるティーチャー・トークの差異に気付くことがわかった.
著者
志賀 靖子 歌代 崇史 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.121-124, 2009
参考文献数
9
被引用文献数
1

電子掲示板は対面授業内外やe-learningにおいて広く活用されている.しかしながら,従来の電子掲示板は投稿機能のみが議論の参加手段であるため,非言語的手がかりが欠如し,相手の存在を意識しにくいとともに,投稿を読んでもコメントを積極的に行いにくいという問題点がある.本研究では投稿以外のフィードバック手段として下線引き機能を提案し,実装した.2つの評価実験より,投稿内容に下線を引くことは,他者から自分の投稿がどのように受けとめられているかということや他者同士の関係を把握しやすい可能性が示された.特に下線を引かれたのが自分の投稿である場合,励ましといった心理面への効果を持ち,より動機づけの低下を防ぐ可能性が考えられた.
著者
歌代 崇史 柳沢 昌義
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.93-107, 2009

相づちに代表される聞き手反応は対面コミュニケーションにおいて不可欠である.しかし,その形態や使用は言語・文化により異なるため,日本語学習者にとって聞き手反応の学習は,目標言語環境におかれたとしても,必ずしも容易ではない.聞き手反応を教授する試みはあるものの,聞き手反応の教授が日本語学習者にどのような効果を及ぼすか実証的に調査した研究は非常に少ない.そこで本研究は,聞き手反応の教授が日本語学習者に及ぼす効果を明らかにするため,22名の中・上級日本語学習者を聞き手反応を教える群(RT群)と教えない群(NRT群)に分け,それぞれの群に70分の教授を行い,教授の前(pre),直後(pos1), 1週間後(pos2)に母語話者との対面会話テストを実施した.さらに,学習面に関する効果を検討するため, pos2においてインタビューを行った.対面会話テストの分析の結果, RT群の適切な聞き手反応の使用に関して, pre-pos1間とpre-pos2間で統計的に有意な差があり,教授により学習者の聞き手反応の産出能力が向上することが示された.さらに,インタビューの分析から, RT群には教授後,母語話者の対面会話を意識的に観察するといった学習行動の変化が複数見られ,語用意識の向上が示された.これらの結果に基づき,聞き手反応の教授による日本語学習者の聞き手としての認知変容モデルを示した.