著者
鈴木 裕 中里 徹矢 横山 政明 阿部 展次 正木 忠彦 森 俊幸 杉山 政則 土岐 真朗 高橋 信一
出版者
日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.102-105, 2012 (Released:2012-05-15)
参考文献数
12

急性膵炎の重症化と合併症発生に対する肥満の影響について概説した.肥満の影響を考えるに当たり,多くはBMI(Body mass index)を用いているが,近年はCTを用いて内臓脂肪や皮下脂肪をパラメーターとしている報告も散見される.各報告をみると重症化や合併症発生に肥満は何らかの影響があると予想される.BMIでは,欧米では多くの肥満例が重症化と全身合併症に相関し,全身合併症の多くは呼吸不全である.本邦ではBMIは有意な重症化の危険因子とはならず人種差の可能性はある.しかし,日本人でも内臓脂肪の増加は急性膵炎重症化や合併症の発生に影響する可能性があり,肥満のタイプが重要であると思われる.今後は内臓脂肪面積などを画像診断による肥満のタイプをパラメーターとして詳細な検討を行う必要があると思われた.その際は,可能な限り発症早期の画像を用いるべきであり,理想は膵炎発症直前の測定が望まれる.
著者
正木 忠彦 石丸 悟正 富永 治 山形 誠一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

目的大腸癌に見られる遺伝子変化の中で18番長腕の染色体の欠失が大腸癌の進展の中で、どのような意義があり、また臨床上応用されうるかを検討しるものである。材料と方法手術より得られた大腸癌原発巣80例で検討した。標本は-80℃で保存し、proteinase-K及びフェノール/クロロフォルム症例によりDNAを抽出した。18番長腕の染色体の欠失は、DCC内のマイクロサテライトの多型性を利用し、polymerase chain reaction (PCR)法を用いLOHを判定した。結果遠隔転移による死亡はDCCのLOHが見られないものでは、3/15 (20%)、LOHのみられるものでは13/31(42%)であった。術後生存期間をDCCのLOHで検討してみると、単変量解析では、有意差が出なかったが、有意に生存に関与していたDukes分離と(p=0,019)組織型(p=0.002)を考慮に入れた多変量解析をおこなったところ、DCCのLOHのある症例は、術後生存期間が短いという傾向が出た。(p=0.056)結論ガン抑制遺伝子であるDCCの存在する第18番染色体長腕の欠失は、大腸がん患者において予後に相関し、有用な臨床マーカーとなりうる可能性が示唆された。