著者
土岐 真朗 板垣 英二 倉田 勇 内田 康仁 田部井 弘一 畑 英行 蓮江 智彦 山口 康晴 石田 均 高橋 信一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.1, pp.143-146, 2013 (Released:2014-01-10)
参考文献数
5
被引用文献数
4 5

症例は65歳,女性.腺腫様甲状腺腫にて甲状腺亜全摘出術後から,チラージンS®錠の内服を継続し,経過中に肝障害を発症した.各種肝炎ウィルス等は陰性で,画像所見は異常所見なく,リンパ球刺激試験も陰性であった.肝生検の結果は,薬物性肝障害に矛盾しない所見であった.乾燥甲状腺末に内服を変更したところ,肝障害は軽快したことから,肝障害の原因としてチラージンS®錠の添加物が考えられた.注意喚起も含め報告する.
著者
中村 正彦 Anders Øverby 高橋 哲史 松井 英則 高橋 信一 村山 琮明
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.278-284, 2016-04-01

はじめに ヘリコバクター・ピロリ(以下,ピロリ菌)の発見と前後して,人間の胃に別の種類のらせん菌が存在することが,ドイツのHeilmannら1)により報告された.この菌は,“ハイルマニイ菌”と総称され,ピロリ菌に比べて大型で,粘液層に加え,胃腺腔深部に存在することが報告された(図1).ピロリ菌は霊長類以上にしか通常は感染しないのに対し,ハイルマニイ菌の大きな特徴は,いわゆる人獣共通感染症の一つであり,犬,猫,豚などがホストだということである.わが国においては,1994年に弘前大学のTanakaら2)により初めて報告されているが,その後の報告は,畜産関係以外は,あまり多くなかった. 2014年2月に,わが国ではピロリ菌陽性慢性胃炎に対する除菌が保険適用となり,ピロリ菌の国民総除菌時代に突入した.その結果,ピロリ菌の除菌が進み,上部消化管疾患の変容が始まりつつある.その一つである,菌交代現象として,ハイルマニイ菌感染が増加することが危惧されており,研究代表者らはハイルマニイ菌陽性症例を報告している.また,ピロリ菌陰性の胃MALTリンパ腫,慢性胃炎,鳥肌胃炎などで陽性症例を認めているが,MALTリンパ腫以外については,いままで報告は断片的なものだった. 診断に関しては,ハイルマニイ菌では,ウレアーゼ(urease)活性は陰性あるいは弱陽性程度のため,リアルタイムPCR(real time-polymerase chain reaction:RT-PCR)法がゴールドスタンダードとなっている.そのために,簡便で迅速な診断法の開発が急務と考えられる. 筆者らは,2005年より動物および人由来のハイルマニイ菌をマウスへ感染させることで,高頻度に胃MALTリンパ腫を誘発することに成功し,そのモデルを用いて,基礎,臨床両面からの検討を行ってきた. 本稿では,現時点でのハイルマニイ菌の全体像,最近の話題および検査とのかかわりについて述べたい.
著者
木村 健 浅香 正博 勝山 努 川野 淳 斉藤 大三 佐藤 貴一 下山 孝 杉山 敏郎 高橋 信一 服部 隆則 藤岡 利生
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.96, no.2, pp.199-207, 1999-02-05
被引用文献数
17

第二次<I>Helicobacter pylori</I>治験検討委員会が改訂した治験ガイドラインの主な内容は,以下の通りである.<BR>I.除菌の利点と問題点: 利点は消化性潰瘍の再発抑制効果,そして低悪性度胃MALTリンパ腫の改善,かつそれらの医療経済効果である.問題点は薬剤耐性の獲得,および除菌後に新たに生じる疾患があり得ることである.<BR>II.除菌治験の適応疾患: 除菌治験を速やかに行うべき疾患は,現在のところ,胃・十二脂腸潰瘍と低悪性度胃MALTリンパ腫である.<BR>III.除菌薬: 酸分泌抑制薬+抗菌薬2剤の3剤併用療法をfirst-line therapyとする.<BR>IV.存在診断と除菌判定: 存在診断は培養,鏡検,ウレアーゼ試験にて行う.除菌判定は,培養と鏡検に加えて<SUP>13</SUP>C尿素呼気試験を必須とし,血清学的検査法とPCR法を削除する.除菌判定の時期は,治療終了後6~8週とする.
著者
太田 博崇 工藤 安澄 井手 麻友美 嶋田 隆介 田邉 秀聡 池崎 修 近藤 恵里 横山 政明 田部井 弘一 山口 高史 原田 徹 二階堂 孝 柳田 修 高橋 信一
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.173-175, 2020-06-26 (Released:2020-07-07)
参考文献数
6

The patient was a 66-year-old woman who had not been to the hospital or taking any medication. She visited our hospital with chief complaints of fever, headache, and general malaise. Blood tests showed an abnormally high inflammatory response. Chest, abdominal, and pelvic plain CT did not reveal any obvious abnormalities that could cause inflammation.Streptococcus bovis was detected in blood cultures. Because of the high incidence of colorectal lesions related with the bacterium, a lower gastrointestinal endoscopy showed an advanced colonic cancer in the ascending colon. A laparoscopically assisted right hemicolectomy was performed.It is a rare case of advanced colorectal cancer discovered by bacteremia caused by S. bovis.
著者
菊地 翁輝 齋藤 大祐 池崎 修 三井 達也 三浦 みき 櫻庭 彰人 林田 真理 徳永 健吾 小山 元一 森 秀明 久松 理一 高橋 信一
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.69-72, 2016-06-11 (Released:2016-07-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1

症例は60歳代女性.卵巣癌stageⅢcの診断にてパクリタキセルとカルボプラチンの投与による化学療法(TC療法)が施行されたが,投与10日後より腹痛・下痢が出現し,投与12日後に入院となった.入院時に施行した造影CT検査では全結腸の拡張および腸液の貯留を認め,大腸内視鏡検査では横行結腸から下行結腸にかけて縦走する潰瘍性病変が散見され,虚血性大腸炎と診断した.成因としてパクリタキセルによる血流障害が疑われ,絶食および抗癌剤再投与中止により症状は改善した.発症機序として,薬剤による上皮細胞の分裂・増殖停止に伴う粘膜障害や,血管平滑筋細胞の増殖・遊走・新生内膜集積の阻害に伴う血管障害の関与が考慮されている.タキサン系抗癌剤を含む化学療法の導入後に出現した腹部症状においては,虚血性大腸炎の発症に留意し診断を行う必要がある.
著者
石寺 永記 荒井 祐之 土屋 雅彦 宮内 裕子 高橋 信一 栗田 正一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J76-D2, no.4, pp.873-880, 1993-04-25

我々人間の視覚系は,点パターンのように離散的な対象でも仮想線を知覚でき,色や明るさの段差がなくてもそこに明りょうな主観的輪郭を知覚することがある.これは補間問題と考えることができる.そこで,本論文では生理学的データに基礎をおく階層的視覚情報処理モデルを提案し,仮想線と主観的輪郭の知覚といった補間問題に応用する.主観的輪郭を形成するためには,実際の輪郭,主観的輪郭の通る点,そしてその輪郭の伸びていく方向を決定することが重要であり,本モデルではこれらの処理を並列処理で実現する.このモデルは2種類のSimpleセル(StypeとLtype)の出力から,大域的処理により輪郭の検出と点パターンの補間を行うComplexセルと,主観的輪郭が通ると考えられるエッジの端点や曲率の高い点を検出するHypercomplexセルをモデル化する.この処理はすべて並列処理で行われる.またこれらの情報が伝達されるときに重み付けをすることによって主観的輪郭の伸びる方向を決定する.こうした階層的な処理によって得られた情報を統合することによって実際のエッジと主観的輪郭が同様に検出されるようなモデルを構成した.
著者
鈴木 裕 中里 徹矢 横山 政明 阿部 展次 正木 忠彦 森 俊幸 杉山 政則 土岐 真朗 高橋 信一
出版者
日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.102-105, 2012 (Released:2012-05-15)
参考文献数
12

急性膵炎の重症化と合併症発生に対する肥満の影響について概説した.肥満の影響を考えるに当たり,多くはBMI(Body mass index)を用いているが,近年はCTを用いて内臓脂肪や皮下脂肪をパラメーターとしている報告も散見される.各報告をみると重症化や合併症発生に肥満は何らかの影響があると予想される.BMIでは,欧米では多くの肥満例が重症化と全身合併症に相関し,全身合併症の多くは呼吸不全である.本邦ではBMIは有意な重症化の危険因子とはならず人種差の可能性はある.しかし,日本人でも内臓脂肪の増加は急性膵炎重症化や合併症の発生に影響する可能性があり,肥満のタイプが重要であると思われる.今後は内臓脂肪面積などを画像診断による肥満のタイプをパラメーターとして詳細な検討を行う必要があると思われた.その際は,可能な限り発症早期の画像を用いるべきであり,理想は膵炎発症直前の測定が望まれる.
著者
倉持 基 高橋 信一
出版者
中経出版
雑誌
歴史読本
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.190-199,12-13, 2013-07
著者
高橋 信一 田中 昭文 徳永 健吾
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.1273-1282, 2010 (Released:2010-08-05)
参考文献数
46
被引用文献数
2

2009年,日本ヘリコバクター学会から改訂ガイドラインが発表され,そこではすべてのH. pylori感染者に対し除菌を行うよう強く勧められるとされた.H. pylori胃炎を背景として,さまざまな上部消化管疾患や消化管以外の疾患が発症するが,除菌により組織学的胃炎の改善とその後発症する疾患の予防に結びつくことが期待されている.世界の標準除菌治療は,プロトンポンプ阻害剤(PPI)+クラリスロマイシン(CAM)+アモキシシリン(AMPC)もしくはメトロニダゾールによるものだが,CAM耐性菌による除菌率の低下が問題であり,近年,連続療法やラクトフェリンなどによる除菌率上乗せ効果が注目されている.
著者
高橋 信一
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.550-555, 2003-12-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
5
著者
石寺 永記 荒井 祐之 土屋 雅彦 宮内 裕子 高橋 信一 栗田 正一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.873-880, 1993-04-25
被引用文献数
16

我々人間の視覚系は,点パターンのように離散的な対象でも仮想線を知覚でき,色や明るさの段差がなくてもそこに明りょうな主観的輪郭を知覚することがある.これは補間問題と考えることができる.そこで,本論文では生理学的データに基礎をおく階層的視覚情報処理モデルを提案し,仮想線と主観的輪郭の知覚といった補間問題に応用する.主観的輪郭を形成するためには,実際の輪郭,主観的輪郭の通る点,そしてその輪郭の伸びていく方向を決定することが重要であり,本モデルではこれらの処理を並列処理で実現する.このモデルは2種類のSimpleセル(S typeとL type)の出力から,大域的処理により輪郭の検出と点パターンの補間を行うComplexセルと,主観的輪郭が通ると考えられるエッジの端点や曲率の高い点を検出するHypercomplexセルをモデル化する.この処理はすべて並列処理で行われる.またこれらの情報が伝達されるときに重み付けをすることによって主観的輪郭の伸びる方向を決定する.こうした階層的な処理によって得られた情報を統合することによって実際のエッジと主観的輪郭が同様に検出されるようなモデルを構成した.