- 著者
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石井 伸尚
末竹 真将
奥野 裕佳子
武島 玲子
冨田 和秀
- 出版者
- 日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.0828, 2017 (Released:2017-04-24)
【はじめに】COPD患者に対して,換気効率の良い呼吸法を提示しながら有酸素運動を行うと,運動耐容能が改善することが明らかになってきた(Collins 2008)。呼吸筋酸素消費量の少ない呼吸方法は,運動時に呼吸筋の酸素消費量を軽減し運動耐容能の増加に寄与する可能性がある。そこで,我々は呼吸筋酸素消費量の少ない呼吸法をフィードバックする機器の開発を進めている。しかし,随意呼吸における胸腹部運動比と呼吸筋酸素消費量の関係は不明な点が多い。本研究の目的は健常者を対象として,随意呼吸における胸腹部運動比の違いによる呼吸筋酸素消費量(oxygen consumption of respiratory muscles:VO2resp)を測定し,胸式呼吸と横隔膜呼吸のVO2respの差異を比較することとした。【方法】対象は健常男性9名(20.7±1.3歳)とした。測定肢位はリクライニング60度の車椅子坐位とし呼吸筋以外の筋活動が少なくなるように配慮した。VO2respの測定は,容量約12Lの死腔を用いた再呼吸負荷デバイスと呼気ガス分析器を接続し,分時換気量(VE),1回換気量(TV),酸素消費量(VO2),体重あたりの酸素消費量(VO2/W),呼吸数(RR)を測定した。測定条件は安静呼吸3分間,胸式呼吸1分,横隔膜呼吸1分とし,各測定間は十分な休息をとった。胸腹部バンドセンサーを使用し,各条件での胸腹部の動きを記録した。胸腹部運動比は1回換気量における胸部と腹部の変化量の合計を100%とし,そのうちの胸部変化量の占める割合として規定した。胸式呼吸と横隔膜呼吸におけるVO2respは,VO2resp=(随意呼吸時VO2/W-安静呼吸時VO2/W)/(随意呼吸時VE-安静呼吸時VE)と相対的な変化量として算出した。統計処理は反復測定分散分析を行いそのうちVO2/Wの安静時から随意呼吸時の変化量とVO2respは対応のあるt検定を行い,解析にはSPSS,Statistics22を使用し,有意水準を5%未満とした。【結果】胸腹部運動比(%)は安静呼吸28.4±7.5,胸式呼吸65.3±13.3,横隔膜呼吸14.0±5.2となった。RR(回/min)は安静時11.9±4.9,胸式呼吸9.6±2.7,横隔膜呼吸9.7±2.6,VE(L/min)は安静時7.9±2.1,胸式呼吸13.9±5.2,横隔膜呼吸13.2±4.0,TV(ml)は安静時735.6±228.1,胸式呼吸1481.7±289.7,横隔膜呼吸1379.3±239.8であった。VO2/W(ml/kg)の安静時との変化量は胸式呼吸0.645±0.878,横隔膜呼吸-0.213±0.954であり,横隔膜呼吸で有意に低下した(p<0.05)。VO2respは胸式呼吸0.093±0.141,横隔膜呼吸-0.057±0.201であり,横隔膜呼吸で有意に低下した(p<0.05)。【結論】横隔膜呼吸は,呼吸筋酸素消費量の少ない随意呼吸方法であることが明らかになった。今後,呼吸負荷増加時や運動時における横隔膜呼吸の効果について検証を進める必要がある。