著者
武政 睦子 市川 和子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.325-330, 2012 (Released:2013-01-08)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

【目的】血液透析(以下HD)患者の低栄養が問題となって久しい。その中でも,HD患者では血清セレン濃度が低く,血清セレン濃度が低いことが心血管系合併症の要因であること,死亡率,とくに感染症死亡のリスク要因になることが報告されている。今回,HD患者の血清セレン濃度およびセレン摂取量の現状把握を行った。【方法】HD患者10名(男性4名,女性6名)を対象とした。年齢は,62.7±5.9歳,透析歴は,190±157ヵ月であった。4日間の食事調査,血液生化学検査および体格を調査した。【結果】血清セレン濃度は12.7±2.4(9.0~17.3)μg/dlであり,セレン摂取量は51.1±14.3(31.6~70.8)μg/dayであった。血清セレン濃度と血清尿素窒素濃度,たんぱく質摂取量,セレン摂取量はいずれも有意な正の相関(r=0.804,0.697,0.660)が認められた。セレン摂取量とエネルギー摂取量,たんぱく質摂取量,リン摂取量,カリウム摂取量は有意な正の相関(r=0.766,0.740,0.672,0.674)が認められた。血清セレン濃度(μg/dl:Y)と標準体重当たりたんぱく質摂取量(g/標準体重kg/day:X1),セレン摂取量(μg/day:X2),カリウム摂取量(mg/day:X3)との間に重回帰式 Y=10.633X1+0.142X2-0.004X3+3.590(r=0.962,p=0.001)が得られた。【結論】HD患者において,たんぱく質摂取量の低下がセレン摂取量の低下を引き起こし,血清セレン濃度の低下につながることが危惧される。
著者
武政 睦子 出口 佳奈絵
出版者
川崎医療福祉学会
雑誌
川崎医療福祉学会誌 = Kawasaki medical welfare journal (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.71-78, 2016

健全な食生活は健康で豊かな人間性の基礎をなすものである.子どもへの食育を通じて保護者自身 の食育への期待が高まっている.そこで,H 町小学校高学年を対象に食育講座「わくわく早島キッチ ン2014~楽しくおいしくクッキング~」を開講した.参加者14名のうち食行動アンケートが回収でき た9名の子どもとその保護者を対象とした.アンケートは,子ども自身,保護者自身,保護者からみ た子どもについて,回答を得て点数化し評価した.講座前の子どもの食行動の得点数は保護者と差が なく,子どもの食行動は保護者の食行動に依存していることが明らかとなった.しかし,保護者から 見た子どもの食行動の得点数は有意に低かった.講座後では,保護者から見た子どもの食行動の得点 数は有意に増加し.保護者自身も増加傾向にあった.このことより小学生を対象とした食育講座は, 子ども本人だけではなく子どもを通じて保護者の食行動変容が期待できると示唆された. A workshop entitled"Hayashima Happy Kitchen 2014—Fun and Yummy Cooking"was offered to older students at H-Town Elementary School. Parental views of their children's dietary behaviors appeared to be significantly lower than children's views and parents'views of their own behaviors. After workshop participation, however, parental scores of their children's dietary behaviors were significantly improved, and scores of parents'own dietary behaviors also appeared to be rising. Taken together, the findings of this study suggest that dietary workshops for children can help to improve the eating behaviors of children as well as parents.
著者
川崎 靖子 寺本 房子 武政 睦子
出版者
川崎医療福祉学会
雑誌
川崎医療福祉学会誌 = Kawasaki medical welfare journal (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.285-293, 2020

川崎医療福祉大学の管理栄養士養成課程4年生を対象に,職業選択と管理栄養士のコンピテンシーの達成度との関係を調査した.有効回答者42名を病院(以下,病院群)25名(59.5%),福祉施設(以下,福祉群)8名(19.0%),企業7名(16.7%),その他2名(4.8%)に分けた.本研究におけるコンピテンシー平均達成度を,全国管理栄養士養成課程の4年生を対象にした調査と比較した.病院群は基本コンピテンシーが最も高く,学修目標到達度の「栄養マネジメント能力」および「職域分野別コンピテンシー」のすべての項目が高かった.しかし,福祉群は基本コンピテンシーの「自己確信」の項目が低かった.管理栄養士養成課程の教育やカリキュラムを改善するための提案について考察した.