著者
加藤 秀夫 国信 清香 齋藤 亜衣子 出口 佳奈絵 西田 由香 加藤 悠
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.137, no.3, pp.120-124, 2011 (Released:2011-03-10)
参考文献数
19
被引用文献数
3 2

からだのリズムは,体温や血圧,睡眠,運動などの生命活動を始め,心と身体の健康を管理している司令塔であり,生活リズムに適応するための自律的な予知機能も備えている.明暗サイクルのあるなしに関係なく,一定の摂食時間に餌を与えると血中副腎皮質ホルモンはいずれも摂食直前にピークを示す日内リズムが形成される.次の日から絶食にしても血中副腎皮質ホルモンの日内リズムは持続し,典型的な内因性のリズムを示す.このことから,血中副腎皮質ホルモンのリズム発現には,明暗サイクルより摂食サイクルが重要であると考えられる.血中副腎皮質ホルモンのリズム形成には口から摂取する食餌そのものと,食餌を感知する消化管が関与している.血中副腎皮質ホルモンのリズム形成・維持には摂食リズムと食餌の刺激を感知する空腸が重要な役割を果たしている.ヒトでの研究においても同様の知見が得られ,血中副腎皮質ホルモンのリズム形成には,摂食リズムが重要であることを明確に示した.一方,ヒラメ筋グリコーゲンは摂食によって増加し,その後減少する日内リズムが認められる.しかし,1日摂食量の1/3を遅い時刻に摂食させた場合,摂食によるヒラメ筋グリコーゲンの増加はなかった.また,脳などにグルコースを供給する肝臓グリコーゲンは,摂食によって増加し,その後,糖新生の利用による低下が認められる.しかし,1日摂食量の1/3を遅い時刻に摂取させると肝臓グリコーゲンの総貯蔵量は減少した.つまり,遅い時刻に摂取する夜食では,摂取した栄養素が筋肉や肝臓グリコーゲンの合成に利用されず,むしろ脂肪蓄積につながると考えられる.次に,食塩の摂取と血圧との関係を時間栄養学の観点から検討した.朝や昼に比べて夕食後に食塩の尿排泄が多く,血中アルドステロンの日周リズムと連動していた.血中成長ホルモンの分泌は,朝の運動で減少し,夕方の運動で増大した.トレーニング効果を高めるためには生体リズムを考慮することも重要である.以上のことから,時間栄養学は体内時計が実証する新しい健康科学である.
著者
西田 由香 出口 佳奈絵 前田 朝美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.64-75, 2021-04-01 (Released:2021-05-15)
参考文献数
70

【目的】食事の摂取時刻とミネラル代謝の関連を調べることを目的に,同一の食事で夕食の摂取時刻のみ変化させた際の尿中ミネラル排泄量と尿排泄リズムへの影響を検討した。【方法】腎機能に異常のない若年成人女性10名を対象に,夕食を18:30に摂取する「早い夕食」と23:30に摂取する「遅い夕食」の2種類の摂食条件で採尿実験を実施した。実験前日17時以降の食事と飲水量を統一し,朝6:30から翌朝までの24時間尿を2時間(夜間は6時間)の間隔で全尿を採取した。尿中ナトリウム,カリウム,リン,カルシウム,マグネシウム,クレアチニン濃度を測定し,尿中ミネラル排泄の日内変動(クレアチニン補正値)と各食後6時間の尿中排泄量を検討した。【結果】遅い夕食では,翌朝6:30(24:30~翌朝6:30)におけるカリウムとリンの尿排泄(クレアチニン補正値)が早い夕食に比べて有意に低下した(カリウムp=0.002,リンp=0.006)。ナトリウムとカリウムでは,18:30から翌朝6:30までの12時間尿中排泄量が早い夕食より遅い夕食で有意に低値を示した(ナトリウムp=0.025,カリウムp=0.030)。カルシウムとマグネシウムの尿中排泄量は,摂食時刻に関係なく食後の経過時間に応じた尿排泄パターンを示した。【結論】夜遅い時間帯に夕食を摂取すると,ナトリウムとカリウムは尿排泄されにくく体内に蓄積しやすいことが示唆された。高血圧予防や腎不全の食事管理において,夕食時刻を遅くしないことが重要であると考えられる。
著者
武政 睦子 出口 佳奈絵
出版者
川崎医療福祉学会
雑誌
川崎医療福祉学会誌 = Kawasaki medical welfare journal (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.71-78, 2016

健全な食生活は健康で豊かな人間性の基礎をなすものである.子どもへの食育を通じて保護者自身 の食育への期待が高まっている.そこで,H 町小学校高学年を対象に食育講座「わくわく早島キッチ ン2014~楽しくおいしくクッキング~」を開講した.参加者14名のうち食行動アンケートが回収でき た9名の子どもとその保護者を対象とした.アンケートは,子ども自身,保護者自身,保護者からみ た子どもについて,回答を得て点数化し評価した.講座前の子どもの食行動の得点数は保護者と差が なく,子どもの食行動は保護者の食行動に依存していることが明らかとなった.しかし,保護者から 見た子どもの食行動の得点数は有意に低かった.講座後では,保護者から見た子どもの食行動の得点 数は有意に増加し.保護者自身も増加傾向にあった.このことより小学生を対象とした食育講座は, 子ども本人だけではなく子どもを通じて保護者の食行動変容が期待できると示唆された. A workshop entitled"Hayashima Happy Kitchen 2014—Fun and Yummy Cooking"was offered to older students at H-Town Elementary School. Parental views of their children's dietary behaviors appeared to be significantly lower than children's views and parents'views of their own behaviors. After workshop participation, however, parental scores of their children's dietary behaviors were significantly improved, and scores of parents'own dietary behaviors also appeared to be rising. Taken together, the findings of this study suggest that dietary workshops for children can help to improve the eating behaviors of children as well as parents.