著者
武田 三男 谷 正彦
出版者
信州大学
雑誌
特定領域研究(B)
巻号頁・発行日
1998

バンドギャップ中に現れる不純物モードはそのQ値が極めて高く、これを利用すればレーザー光に匹敵する単色性が得られることが期待される。本研究では、共通ギャップが存在しかつ不純物の制御が比較的容易な積層型エアーロッド単純立方格子および積層型エアーロッド三角格子に着目した。このフォトニック格子中に光混合型発振器もしくは非線形光学結晶を組み込み、その発振周波数を不純物モードに一致させることにより、高効率の単色性の高い発振が可能である。具体的には、フォトニック結晶を共振器として用い、その中に電磁波発振源を埋め込んだテラヘルツ領域における高効率の単色光発振器を設計試作するものである。本研究は、フォトニック結晶中において電磁波の群速度異常により非線形光学効果や光伝導スイッチ素子における光-電磁波エネルギー変換効率が増強することに着目し、テラヘルツ帯の高効率発振機器を開発するものである。本研究は主に、(1)テラヘルツ時間領域分光法によるフォトニック結晶中の電磁波分散関係の決定、(2)フェムト秒レーザーパルス光によるテラヘルツパルス電磁波の発生、および、(3)CWレーザー光による差周波光混合テラヘルツCW電磁波の発生実験の研究で構成されている。得られた主な研究成果は、(1)テラヘルツ時間領域分光による電磁波分散関係の決定及び局在モードの確認、(2)非線形光学効果によるテラヘルツパルス電磁波発生による不純物モードの励起、(3)連続波差周波光混合によるフォトニック結晶共振器中の不純物モードの励起と増強効果の確認、(4)テラヘルツ領域ダイヤモンド格子フォトニック結晶の作製と評価、(5)二次元エアーロッド格子中の線欠陥モードの波数ベクトル依存性とその磁場強度空間の解析、(6)マイクロ波帯フォトニック結晶(周期性マイクロストリップライン)の作製と評価、(7)単純立方格子における不純物モードの理論解析(FDTD法)である。
著者
武田 三男 本田 勝也 天児 寧 宮本 欽生 桐原 聡秀 迫田 和彰
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

自己相似性を有する三次元フラクタル構造体であるメンジャースポンジを誘電体及び金属を用いて作製し、テラヘルツ時間領域分光法により、透過率、反射率及び直角散乱スペクトルを測定した。外形サイズ9mmで、ステージ2のサンプルにおいて、局在モードに対応すると考えられる透過率の極小及び直角散乱スペクトルの極大をそれぞれ見出した。金属サンプルにおけるその特性波長は二番目の正方形エアロッドの遮断周波数に一致し、マジックテイー効果で直角方向に伝播してゆくものと考えられる。現在、反射率測定のより高制度の測定システムを改良中である。フラクタル構造体中の局在モードの電磁場の空間振動パターンを確認するために、カントールバー型一次元フタクタル構造を持つマイクロストリップラインを作製した。ステージ数は1〜4である。また、比較のために周期構造を有するフォトニック結晶に欠陥構造を挿入したラインと、カントールバーと欠陥フォトニック結晶との中間構造のラインも作製した。ネットワークアナライザーにより透過及び反射の振幅と位相スペクトルを測定した。ステージ数3及び4においてフォトニックギャップ領域に局在モードに対応する鋭い透過ピークが見いだされた。モーメント法による数値解析を用いて、これらのピーク振動数のモードの電流空間分布を求めた。カントールバー中の局在モードは中央の幅の広いラインに整数の節を持つモードであるが、フォトニック結晶の欠陥モードのように欠陥領域に強く局在しているのではなくむしろカントールバー全体に少し広がったフォトニック結晶のバンド端モードに近い振動パターンを持つことが分かった。ラインの両翼もしくは中央のセグメントの長さを変えることによって、ライン全体を自己相似パターンから少し変化させ、局在モードの様子を調べた。局在モードのQ値はほぼ自己相似性を保っている構造において一番高いことが判明した。一方、数値解析としてはカントールバー構造中の電磁波の伝播特性について、マックスウェルの波動方程式を用いて、透過振幅及び透位相シフトスペクトルのステージ数依存性を計算し、ステージ数が4までのスペクトルではフォトニックギャップ領域に局在モードに対応した鋭い透過率ピークを確認した。局在モードの位相シフトの傾きがほとんどゼロになることを見いだした。また、テラヘルツパラメトリック発信分光システムを購入しフラクタル構造体によるテラヘルツ波の非線形光学効果の制御のためのシステムを構築した。