著者
上岡 洋晴 早坂 信哉 武田 淳史
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
pp.2349, (Released:2021-10-25)
参考文献数
39

本研究は,温泉施設や公衆浴場の利用はCOVID-19に感染するリスクは低いというエビデンスの収集を第1の目的とし,さらに入手した報告を中心として温泉医学分野において取り組むべき研究課題の包括整理を行うことを第2の目的とした.  文献データベースは,CINHAL,Chochrane Library(Clinical Answer, Cochrane Protocol, Cochrane Review, Editrials, Special Collections, Trials),医中誌Web,MEDLINE,Web of Science Core Collectionを用いた.それぞれのデータベースにおいて,開設されてから検索をした2021年7月26日までの結果を採用することとした.介入研究及び実験的研究の場合には,次の変形型のPICOSとした.P(Participant:参加者-疾患の有無にかかわらず制限なし),I(Intervention:介入-普通の呼吸あるいは意図的にくしゃみやせき,会話をする行為),C(Comparison:比較対照-制限なし),O(Outcome:アウトカム-浴室や脱衣室での室内空気の流れや飛沫の動態と飛沫をシミュレートしたマーカー),S(Study design:研究・実験デザイン-コントロール群のない介入研究・実験を含む)を,観察研究の場合には,PECOS,P(参加者:疾患の有無にかかわらず制限なし),E(Exposure:曝露-公衆入浴施設),C(比較対照-制限なし),S(研究デザイン-横断研究,コホート研究,ケース・コントロール研究)とした.  第1目的において,適格基準に合致した研究は0編で,温泉施設や公衆浴場の利用はCOVID-19に感染するリスクは低いというエビデンスを現時点では示すことができなかった.第2目的に関しては,関連する先行研究が15編あった.COVID-19に強く影響される社会において,チャレンジすべき4つの研究課題をエビデンス・マップの位置づけで提案することができた.「A.温泉施設や公衆浴場の利用はCOVID-19の感染リスクが低いこと」,「B.温泉の泉質や公衆浴場の室温・水温がSARS-CoV-2を不活性化・弱毒化させること」,「C.温泉施設,公衆浴場,家庭での入浴習慣はCOVID-19の予防や症状の軽減につながること」,「D.入浴によってCOVID-19罹患後の患者の多様なリハビリテーションにつながること」であり,それぞれに適合した研究方法論でのアプローチが必要だと考えられた.
著者
近藤 照彦 武田 淳史 武田 信彬 下村 洋之助 谷田貝 光克 小林 功
出版者
The Japanese Society of Balneology, Climatology and Physical Medicine
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.131-138, 2008-02-01
被引用文献数
3 2

We performed a physio-psychological research on the mental, physical relaxation and health-keeping effect of <i>Shinrin-yoku</i> (forest walking) in Kawaba village. Eleven male and 8 female healthy elderly residents in Kawaba village, whose average age was 74.0±3.5 years old for male and 74.9±2.9 years old for females volunteered for this experiment. All members walked for one hour in the Kawaba Forest on August 17 under cloudy skies, 30-32°C temperature, 58-60% humidity, and, 0-2m/sec wind condition and walked again for another one hour in a non-forest rural agricultural area on August 21 under almost the same weather conditions. Phytoncides in the air, Profile of Mood State (POMS) test, blood pressure (BP), heart rate (HR), fasting levels of serum natural killer cell activity (NK), plasma catecholamine (adrenaline, noradrenalin and dopamine), plasma cortisol, and serum adiponectin were measured before and after walking. Phytoncides were detected in the forest and non-forest, all members showed a decrease of POMS total scale, BP, adrenalin and serum cortisol. Six (3 male and 3 female subjects) of them expressed an increase of serum NK cell activity after the forest-walking. One female showed a high serum NK cell activity after both forest and non-forest rural walking.<br>Our experiment on the forest-walking in Kawaba village indicated that its relaxation and health-keeping effects, probably due to walking in the fresh forest air.
著者
近藤 照彦 武田 淳史 小林 功 谷田貝 光克
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.169-177, 2011 (Released:2012-12-07)
参考文献数
22
被引用文献数
1

森林浴は、リラクセーションならびに心身の健康をもたらすとされる。我々は高齢者を対象として、森林浴が生体に及ぼす生理学的効果について検討した。被験者は、2008年から2010年の3回の森林浴測定に参加した高齢者男性24名(65.5±2.5歳)および女性24名(65.0±3.0歳)である。森林浴測定は、8月第3週水曜日の日程で2時間行った。測定時の天候は晴れ、気温30℃から32℃、湿度58%から60%、風速0m/secから2m/secであった。森林浴および非森林浴の測定は、被験者を3グループに分けた。1つのグループは、防臭マスクによる嗅覚遮断男性8名および女性8名、アイマスクによる視覚遮断男性8名および女性8名、コントロール男性8名および女性8名(非遮断)である。非森林浴は、同一被験者による室内環境において日を変えて同一条件下で測定した。フィトンチッド濃度は、ガスクロマトグラフィー質量分析法を用いた。測定項目は、森林浴ならびに非森林浴前後の気象データ、心拍数、血圧、カテコールアミン3分画、コルチゾールおよびNK細胞活性について調べた。本研究における森林浴測定地点から樹木由来のフィトンチッドが3種類検出された。男性の森林浴および非森林浴における平均心拍数は、89bpmおよび85bpmであった。女性の森林浴および非森林浴における平均心拍数は、86bpmおよび85bmpであった。森林浴前後の男女収縮期血圧は、嗅覚遮断およびコントロールにおいてそれぞれ有意に低下した。森林浴前後の男性拡張期血圧は、嗅覚遮断およびコントロールにおいてそれぞれ有意に低下した。森林浴前後の男女アドレナリンは、嗅覚遮断およびコントロールにおいてそれぞれ有意に低下した。森林浴前後のノルアドリナリンは、男性のコントロール、女性の嗅覚遮断およびコントロールにおいてそれぞれ有意に低下した。同様に、男女のコルチゾールは、嗅覚遮断およびコントロールにおいて有意に低下した。森林浴前後の男女NK細胞活性は、有意差を認めなかった。非森林浴前後における血圧、カテコールアミン、コルチゾールおよびNK細胞活性は、男女とも有意差を認めなかった。    森林浴は、フィトンチッドや緑の森林環境が生体に対してリラックス効果を及ぼすことが指摘されている。今回、高齢男性および女性を対象とした検討から、視覚遮断群で有意差は認めた測定項目はなかった。有意差を認めた測定項目は、嗅覚遮断およびコントロールの両群であった。森林浴の生体に対する効果は、フィトンチッドも含めた生体五感に関わる複合的要素の生理学的効果が短時間に存在する可能性が示唆された。    香りや視覚の量的、質的データと生理・心理的応答との関連性の調査結果の蓄積が今後の課題である。
著者
近藤 照彦 武田 淳史 武田 信彬 下村 洋之助 谷田 貝光克 小林 功
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.131-138, 2008 (Released:2010-08-06)
参考文献数
15
被引用文献数
1

We performed a physio-psychological research on the mental, physical relaxation and health-keeping effect of Shinrin-yoku (forest walking) in Kawaba village. Eleven male and 8 female healthy elderly residents in Kawaba village, whose average age was 74.0±3.5 years old for male and 74.9±2.9 years old for females volunteered for this experiment. All members walked for one hour in the Kawaba Forest on August 17 under cloudy skies, 30-32°C temperature, 58-60% humidity, and, 0-2m/sec wind condition and walked again for another one hour in a non-forest rural agricultural area on August 21 under almost the same weather conditions. Phytoncides in the air, Profile of Mood State (POMS) test, blood pressure (BP), heart rate (HR), fasting levels of serum natural killer cell activity (NK), plasma catecholamine (adrenaline, noradrenalin and dopamine), plasma cortisol, and serum adiponectin were measured before and after walking. Phytoncides were detected in the forest and non-forest, all members showed a decrease of POMS total scale, BP, adrenalin and serum cortisol. Six (3 male and 3 female subjects) of them expressed an increase of serum NK cell activity after the forest-walking. One female showed a high serum NK cell activity after both forest and non-forest rural walking.Our experiment on the forest-walking in Kawaba village indicated that its relaxation and health-keeping effects, probably due to walking in the fresh forest air.
著者
小林 功 近藤 照彦 武田 淳史 Teruhiko Kondou 武田 淳史 Takeda Atsushi
出版者
群馬パース大学
雑誌
群馬パース大学紀要 (ISSN:18802923)
巻号頁・発行日
no.15, pp.57-62, 2013-03

林野庁長官、秋山氏は1982年、最初に"森林浴"を提唱し、森林療法の概念を確立した。"森林の中には殺菌力を持つ独特の方向が存在し、森の中にいることが健康な体をつくる"とする、この構想の下につくられた林野庁のオリジナルの概念であった。それは健康な体をつくるために、国有林や他の自然林を利用して、心身ともに鍛えるためにそれらを利用することから始まる。国有林と自然林での生体反応を楽しみながら。健康な身体の状態を取り戻すためには、森林浴でのハイキングにより、健全な心身の健康状態を取り戻す必要がある。ところで、我々を含む人間、日本国民が、人為的に古代からの自然環境の下で現代文明、文化を発展させてきた。人間は約500万年前の人類の誕生から、その長い歴史の中で人間と自然との関係について考えるとき、人類は現代の都市文明の中で生きていると言える。人間は、自然界に適応しながら、サルから進化した人間にとってこのことは、長い歴史から見れば、ごく最近の出来事であるが、それまでは、森林の中で、長い時間を共存してきた偉大な歴史があり、この中で、人類は進化してきた。加えて、我々日本人は欧米人とは異なる親密な自然観のもとに生活をしている。この点からも、現代人においても、私たちの周囲の自然環境が密接に温泉周辺の森林生活環境に快適性を認めている。日本は森林の土地面積が全体の75%を占め、世界有数の森林国の一つである。この数値は、アマゾン流域の無限のジャングルを持つブラジルと同一である。一方、中国、イギリスに至っては、10%前後の少ない森林の土地面積となっている。日本は、亜寒帯から亜熱帯まで、北海道から沖縄まで細長い気候分布を持つ中で人々が生活している特色を持っているのである。
著者
武田 淳史 近藤 照彦
出版者
医療体育研究会
雑誌
リハビリテーションスポーツ (ISSN:13471201)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.30-35, 2009-06-30
著者
近藤 照彦 武田 淳史 武田 信彬 下村 洋之助 谷田貝 光克 小林 功 関 耕二 福村 幸仁 村上 正巳 山口 貴史 冨岡 淳
出版者
群馬パース大学
雑誌
群馬パース大学紀要 (ISSN:18802923)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.435-442, 2007-03
被引用文献数
1

我々は、川場村において「癒しと健康をもたらす」とされる、森林浴の生理学的効果を検討した。被験者は、川場村在住の19名の高齢者(男性11名、女性8名)、年齢は平均74歳(男性74±3.5歳、女性74.9±2.9歳)。8月17日の1時間森林集団散策時の天候は曇り、気温30℃から32℃、湿度58%から60%、風速0m/secから2m/sec、コントロールは、同じメンバーによる8月21日の田園地域1時間の集団散策とし、非森林浴時の天候は、森林浴時とほぼ同様であった。森林揮発性物質(フィトンチッド)、気分プローフィール(POMS)、血圧、脈拍数、空腹時の血清からNK活性細胞、カテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドパミン)、コルチゾール、アディポネクチンを森林浴・非森林浴前後に測定した。川場村における森林浴調査地から森林揮発性物質が検出され、全員で、森林浴前後においてPOMSの総得点、血圧、コルチゾールおよびアドレナリンが有意に低下した。被験者中の3例に森林浴でNK細胞活性の増加を認め、女性1例のみ森林浴および非森林浴の両者でNK細胞活性の増加を認めた。川場村における森林浴研究結果から、POMS、カテコールアミンおよびコルチゾールの血中濃度低下は、森林浴が癒しと健康をもたらす効果をもつ可能性を示唆する所見と考えられた。