著者
武藤 晃
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.461, 2001 (Released:2001-10-01)
参考文献数
11

企業は効率優先型の経営によって一時的に回復をみせたが,将来への展望は依然として開けない時代において,IT化の進展に伴い,社会は急速に知識集約型へ移行しつつある。企業は,知識の創造と活用が不可欠であるとの認識から,知的資産への関心がいやおうなしに高まってきた。知的所有権(Intellectual Property=IP)は知的資産の中核を形成するものであり,この知的所有権の価値がプロパテント政策によって一層高まろうとしている。「ポートフォリオ」の語は2つの意味を持っている。古典的な「プロダクト・ポートフォリオ・マネージメント」(PPM)で代表される分析手法と,資産がどの程度の価値があるかを示す指標,あるいは,単に資産群という意味合いである。知的所有権の価値を表す指標または知的資産の評価という観点におけるIPポートフォリオの研究は,日本ではまだ始まったばかりである。しかし,「プロパテント政策」は,企業の知的資産への急速な関心と合致し,IPポートフォリオは企業経営戦略の重要な柱になってきた。IPポートフォリオの周辺の状況と,IPポートフォリオ・マネージメントの基礎的な活動をみる。
著者
武藤 晃
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.604-614, 2000
被引用文献数
1 3

レファレンス・サービスに精通したライブラリアンや情報分析を専門とするスペシャリストは多くの分野の情報を扱い,彼らからみれば特許情報はその一部にすぎない。しかし,科学技術文献に絞ってみれば特許文献のウエイトはきわめて大きい。それにもかかわらず,特許情報は知財部門のパテントサーチャが扱い,情報スペシャリストは一般技術情報を扱うという「棲み分け」ができてしまったかのようである。知財部門と情報部門の連携がうまくいき,パテントサーチャと情報スペシャリストとが互いに協力する構図ができていれば問題ない。現実はそうばかりでない。パテントサーチャは一般技術情報には消極的であり,情報スペシャリストは特許情報に疎い。知財部門からみた場合,一般技術情報を必要とする局面は確かにあり,情報部門から特許情報を必要とする局面もあることは容易に想像つく。両者は互いの専門領域の情報を必要とする局面があるにもかかわらず,その局面への相互乗り入れが低調である。多くの情報スペシャリストにとって特許情報は扱いにくい情報である。法的な側面に加え,特有ないくつもの特許分類,複雑な国際的な対応関係などが横たわっているからである。世界的な規模において重要化している知的財産権を考えると,情報スペシャリストにとって特許情報は扱いにくい情報であってはならない。最近の知的財産権分野の状況をみながら,特許情報の扱いの難しさの周辺を探る。
著者
武藤 晃 湯川 奈穂美
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.510-519, 2000

"欧州は一つである"という認識が一般化してきている。共通通貨ユーロができたのはまだ最近のことであるが,特許の世界は一足早く1973年に欧州特許条約(EPC)が調印され,単一の手続きにより特許を得ることができる欧州特許機構(EPO)が創立された。現在では加盟国は25か国にのぼっている。2000年5月18日には公開特許の件数が遂に100万件に達した。今回は加盟国のハーモナイゼーションを主要な目的とするEPOのウェブサイトを解析する。EPOのホームページを見ると,米国特許商標庁ほどのボリュームはないものの,公用語の英語,ドイツ語およびフランス語によって必要な事柄が簡潔に平易な文章で表現されている。文化の異なる国の人にも分かりやすいように工夫されていることが分かる。「エスパスネット」esp@cenetの名で知られている EPO特許情報データベースは欧州を中心とする約3,000万件の特許情報を擁していて,世界の特許情報を一挙に検索できるメリットがある。また,欧州特許(EP)やPCT国際公開特許(WO)の個別データベースに加え,日本の公開特許英文アブストラクトのデータベースも用意されている。英語の多少分かる人なら日本人でもアクセスして調査を行ったり,特許明細書のコピーを得ることができる。簡単な使い方を解説する。