著者
殷 敏 三好 彰 程 雷 白川 太郎 榎本 雅夫 嶽 良博 彭 解人 阮 標 今野 昭義 佐橋 紀男
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6Supplement2, pp.625-629, 1999-11-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

1995年より中国南部の3つの省 (江蘇省・広東省・雲南省) において、1660名の小中高校生と2167名の大学生を対象に、視診・ 問診・ スクラッチテストから成る鼻アレルギー疫学調査が実施された。また1998年春には南京医科大学第一付属医院耳鼻咽喉科外来にて、鼻アレルギー症例の臨床的観察が行われた。疫学調査からは、スクラッチテストで3.8%の被験者がスギ花粉に対して陽性であることが、またスギ花粉症の頻度は0.26%であることが判明した。スギ花粉症はまぎれもなく中国に存在するが、まだその頻度は低い。スギ花粉飛散量とともに、社会的背景要因の関与が原因として推測されている。
著者
澄川 靖之 上木 裕理子 三好 彰 程 雷 殷 敏 時 海波 澄川 真珠子 幸野 健 青木 敏之 片山 一朗
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.1270-1275, 2007-10-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
19
被引用文献数
2

【目的】日本,中国におけるアトピー性皮膚炎の有症率と皮膚のバリア機能について調査を行い比較検討を行った.【方法】中国チベット自治区ラサ市68名,江蘇省宜興市67名,兵庫県西宮市99名の小学1年生を対象に皮膚科検診を行い,その際に経皮水分蒸散量(TEWL : transepidermal water loss),角質水分量(capacitance)を測定した.またラサ市,宜興市,大阪府大阪市の中学1年生を対象に入浴回数についてのアンケート調査を行った.【結果】アトピー性皮膚炎の有症率は,ラサ0%,宜興2.63%,西宮4.26%であった.TEWLは西宮が宜興・ラサに比し有意に高く,capacitanceはラサが西宮・宜興に比し有意に低かった.また入浴回数はラサで月2.2回と西宮・宜興に比べ少なかった.【結論】TEWLの増加に従いアトピー有症率が増加する傾向がみられた.生活習慣・環境の変化によりアトピー性皮膚炎の有症率や皮膚のバリア機能がどう影響を受けるか今後も調査を行っていく必要があると考えられた.
著者
佐橋 紀男 渡辺 幹男 三好 彰 程 雷 殷 敏
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6Supplement2, pp.630-634, 1999-11-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
10

中国 (天目山) と日本 (屋久島・伊豆大島) で採集したスギの針葉を、酵素多型による解析から以下の結果を得た。14種類の酵素を使用して18遺伝子座を確認したが、LAPだけが天目山集団で対立遺伝子aのみを持ち、屋久島集団と伊豆大島集団は対立遺伝子a, b, cを持っていた。このことから、もともとは同じ起源を持つ集団が日本海によって隔離されたことが、ごく僅かな遺伝的変異を生じさせたに過ぎない。従って酵素多型による解析からは中国のスギと日本のスギは品種程度の分化しかなく、別種に分類する必要性は示唆されなかった。一方、外部形態的な特徴も中国のスギは日本のスギと大変良く似ている。しかし、中国産のスギは長く下垂した針葉を持つ反面、日本産はあまり下垂しない短めな針葉が一般的であるが、これだけでは、酵素多型による解析結果を否定する要因にはならない。
著者
三好 彰 中山 明峰 程 雷 殷 敏 時 海波 陳 智斌 鮑 永生 魯 春林 白川 太郎
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4Supplement2, pp.S147-S152, 2003-09-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
22

近年の日本におけるスギ花粉症などのアレルギー疾患増加が、回虫など寄生虫の減少に起因しているとの仮説に対して、実際の疫学調査の結果と文献による考察を行った。疫学調査の結果からは、寄生虫感染例でもスクラッチテストに陽性反応を示す症例の存在することが分かり、むしろ感染例の方が非感染例よりも陽性率の高いことすらあることが示唆された。文献的にも、この仮説を裏付け得るだけの論文は見当たらず、仮説は根拠に乏しいものと判断された。アレルギー疾患の増加が、寄生虫感染の減少に起因しているとはいえない。