著者
毛 鋭 鷲田 祐一
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングレビュー (ISSN:24350443)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.20-27, 2022-02-28 (Released:2022-02-28)
参考文献数
22

本研究の目的は,社内のデザイン組織の活動や成果を共通的な視点で定量的に評価できる手法を開発することを通じて,デザイン経営における「デザイン価値の可視化」問題を明らかにし,デザイン資源の有効活用に寄与することである。そこで,本研究は実務的な視点から,日本大手企業4社のデザイン組織を対象に,プロジェクト単位で合計465名の社内他部門の中間管理層によるデザイン組織へのパフォーマンス評価を求めて,社内デザイン組織は事業へ貢献する主な要素を「商品開発力」・「情報の提供」・「ブランドの一貫性」・「アウトプットの速度」および「コスト」,という五つの要素に抽出することができた。その上,重回帰分析を用いて,それがデザイン組織への満足度に与える影響性を考慮し検証したところ,各社には社内デザイン組織への評価あるいは求めるポイントは異なることがわかった。分析結果を受けて,各企業におけるデザイン組織のパフォーマンスを定量的に評価する指標が策定できることを示唆した。
著者
毛 鋭
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.81-89, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
35

デザインの名を冠した様々概念が発散し注目を集める中で,デザインという言葉の多義性が理解の混乱を招く恐れがある。日本ではデザインに対する一般的な理解は「意匠」という狭い定義に留まる一方,デザイン研究において拡張された定義が定着しないため,「デザイン経営」の概念に対して違和感や認識の齟齬が生じる。したがって,本研究の目的は,経営の文脈で多義的に使われるデザイン概念を概観し整理したうえで,デザイン経営研究の課題を提示することにある。具体的には,既存研究におけるデザイン概念の拡張を時系列に確認し,その多義的な概念を,成果物としてのデザインとプロセスとしてのデザインとを両極とする連続体上に位置づけ,整理する。定義を明確にすることにより,デザイン経営研究の範囲と成果の測定について検討し,将来の研究課題を提示する。