著者
毛 鋭 鷲田 祐一
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングレビュー (ISSN:24350443)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.20-27, 2022-02-28 (Released:2022-02-28)
参考文献数
22

本研究の目的は,社内のデザイン組織の活動や成果を共通的な視点で定量的に評価できる手法を開発することを通じて,デザイン経営における「デザイン価値の可視化」問題を明らかにし,デザイン資源の有効活用に寄与することである。そこで,本研究は実務的な視点から,日本大手企業4社のデザイン組織を対象に,プロジェクト単位で合計465名の社内他部門の中間管理層によるデザイン組織へのパフォーマンス評価を求めて,社内デザイン組織は事業へ貢献する主な要素を「商品開発力」・「情報の提供」・「ブランドの一貫性」・「アウトプットの速度」および「コスト」,という五つの要素に抽出することができた。その上,重回帰分析を用いて,それがデザイン組織への満足度に与える影響性を考慮し検証したところ,各社には社内デザイン組織への評価あるいは求めるポイントは異なることがわかった。分析結果を受けて,各企業におけるデザイン組織のパフォーマンスを定量的に評価する指標が策定できることを示唆した。
著者
植田 一博 鷲田 祐一 有田 曉生 清水 剛
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.611-634, 2010 (Released:2011-03-08)
参考文献数
22

Previous studies suggest, contrary to our naive understanding that ideas for innovation are generated by supply-side such as product developers, that the ideas can be actually generated by consumers, especially the users called “early adopters” who keep some distance from product developers in product adoption and knowledge. This research tested, through two experiments for idea generation, which was more important to idea generation for innovation; information, i.e. preceding ideas about new usage of a product, or individual cognitive feature, i.e. innovator or early adopter. One experiment was conducted with general consumers, taking as an example idea generation for new products and services related to information technology, and the other was done with R&D members in a real company. The results suggest that information, i.e. preceding ideas about new usage of a product, was important to generation of creative ideas for innovation and, at the same time, that it was early adopters rather than innovators who could make effective use of the information in the idea generation: This is considered to call for a rethink of “sticky information hypothesis” by von Hippel (1994), which claims the dominant role of information in innovation. This research also suggests, through an additional experiment for information retrieval, that tendencies of innovators to avoid communication with people other than innovators and to think much of function and spec that a product has may degrade their performance in creative idea generation.
著者
藤田 幸久 鷲田 祐一 鳥海 不二夫 植田 一博 石井 健一郎
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.49-61, 2010-01-26

昨今,情報通信技術の発達により,一般生活者が日常的に入手しうる情報の量と種類が飛躍的に増加している.意思決定や価値判断において,情報の有無は重要であり,情報量の増加は個人の行動に影響をもたらしている.多くの既存研究では,保持している情報の量と種類が多ければ,影響力や意思決定力が強くなるものとしている.しかし,その真偽を再考する研究も現れており,情報量の飛躍的増加という未曾有の現象の本質を理解することが望まれる.本論文では,情報の多様化を考慮した情報伝播モデルを提案し,情報の多様化が情報伝播に及ぼす影響をシミュレーションにより分析する.特に,既存研究において強い影響力を持つとされるイノベータに着目した.シミュレーションの結果,情報の多様化によりイノベータの影響力が低下し,イノベータ以外の層がコミュニティ全体に対して影響力を持つことが確認された.また,イノベータの影響力低下は,情報の価値が均一になる「フラット化」によってもたらされることを明らかにした.
著者
和嶋 雄一郎 鷲田 祐一 植田 一博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.68, pp.277-282, 2014-05-29

文系と理系という区別は,学業上の人工的な区別でしかなく,人間行動にとって特に重要な意味はないと考えられがちである.事実,日本以外の国々,特に欧米諸国では,広く受け入れられている概念とは言いにくい.しかしながら先行研究では,文系と理系の違いが社会行動に影響を及ぼす可能性がアンケート調査によって示唆されている.そこで本研究では学部4年生と大学院生を対象として,文系と理系の違いが「情報技術やサービスに関するアイデア生成」という創造的思考に影響しているのかどうかを実験的に調査した.その結果,理系からのアイデアを受けた文系がより創造的なアイデアを出すなど,文系・理系の違いと創造性との関係が示唆された.
著者
鷲田 祐一
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.116-124, 2020-01-11 (Released:2020-01-11)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

家具販売大手であるニトリは,2007年の大規模リコール事件を契機に,製品安全・品質管理を自社の最大のテーマとする方針転換を実施し,製造元企業への積極的な経営・技術指導や,自社の組織風土改革を推進してきている。それらの成果として,家具販売の競合他社を引き離して32期連続の増収増益,世界576店舗までの圧倒的な量的拡大を実現しつつも,経済産業省主催の製品安全対策優良企業表彰において二回連続で経済産業大臣賞(最高賞)を受賞するという快挙を両立した。製造物責任の時代を超えて,企業やその商品・サービスがどのようにして社会と共生していくのか,という視点で見るとき,今までのニトリの一般的イメージとは違う真の姿が見えてきた。
著者
野村 郁也 鮫島 和行 植田 一博 鷲田 祐一 岡田 浩之 大森 隆司
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第10回大会
巻号頁・発行日
pp.64, 2012 (Released:2012-07-20)

新商品が次々と発売される消費社会において,既知の商品と未知の商品との間の選択は日常的に行われており,いずれを選択するかは消費者行動の重要な一面となっているが,このような選択に関する実験的研究はまだ少ない.本研究では,ミネラルウォーターを用いて,実験参加者にとって既知の商品と未知の商品との間の選択を繰り返し行い,その選択に関わる個人特性について検討した.さらに,商品選択を行っているときの脳活動をfMRI計測によって調べた.その結果,情報探索的な実験参加者ほど未知の商品を選択する割合が高くなる傾向が見られ,また,未知の商品の選択時には右前頭極に活動が見られた.これらの結果はともに未知の商品を選択することが情報を得るための行動であることを示唆するとともに,損得勘定に基づく判断であるとする従来のマーケティング現場の通念を変えうるものである.
著者
和嶋 雄一郎 足利 純 鷲田 祐一 植田 一博
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

近年最も身近な人工物となったインターネットを利用してアイデア生成のための情報収集を行った場合,どのような情報収集傾向が見られるのか,またその情報収集傾向が生成されるアイデアの質にどのような影響を与えるのかを検討した.インターネットを利用して情報を収集させた後,アイデア生成を行わせたところ,多くの実験参加者が技術的な情報を収集する傾向があり,独自性の低いアイデアが生成されることが明らかになった.
著者
鷲田 祐一 七丈 直弘 粟田 恵吾
出版者
特定非営利活動法人 横断型基幹科学技術研究団体連合
雑誌
横幹 (ISSN:18817610)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.89-97, 2018

As a step of the National Innovation System, foresight activity is increasingly operated ina variety of countries. One of the major methods in the foresight studies, Horizon Scanning method isbeing penetrated in the world foresight community. We investigated such national foresight activitiesin Taiwan, Thailand, Philippines, South Korea, Iran, Singapore, Brunei, Australia, China, Finland,and USA. On the other hand, we found that in Japan, corporate foresight activities are more activethan Japan's national foresight activity. In about 15 years, many Japanese corporates have adoptedHorizon Scanning method as a way of idea generation for new business developments. Howeverrecently, some Japanese corporates refocused on the same method as a way of building internal inno-vation ecosystems, in which creating their own future chronology map was effective to share commonfuture scenarios in their organizations. In Japan, sharing common future scenarios between nationaland corporate level should be a current challenge.
著者
和嶋 雄一郎 鷲田 祐一 植田 一博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.67, pp.277-282, 2014-05-29

文系と理系という区別は,学業上の人工的な区別でしかなく,人間行動にとって特に重要な意味はないと考えられがちである.事実,日本以外の国々,特に欧米諸国では,広く受け入れられている概念とは言いにくい.しかしながら先行研究では,文系と理系の違いが社会行動に影響を及ぼす可能性がアンケート調査によって示唆されている.そこで本研究では学部4年生と大学院生を対象として,文系と理系の違いが「情報技術やサービスに関するアイデア生成」という創造的思考に影響しているのかどうかを実験的に調査した.その結果,理系からのアイデアを受けた文系がより創造的なアイデアを出すなど,文系・理系の違いと創造性との関係が示唆された.
著者
和嶋 雄一郎 鷲田 祐一 冨永 直基 植田 一博
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.409-419, 2013-09-01 (Released:2013-07-10)
参考文献数
26
被引用文献数
1

Previous studies of innovation have recognized that many innovations are developed by users. However, there is a risk of leaking new ideas by users who join a discussion to generate ideas. In order to avoid the risk, this study proposes a new workshop method to generate business ideas. In the workshop method, idea generators are required to discuss new business ideas based on information that is organized by users who do not join the discussion and thus never know new ideas that are created in this workshop. Idea generators who are given the user-organized information are considered to be able to create new ideas using the given information. We conducted an experiment to test this. In our experiment, participants were divided into two groups: the first group was asked to generate new business ideas based on the information with user perspective while the second group was asked to do so based on the information with engineer perspective. Performance of the first group was compared with that of the second group. Eight outside experts rated all ideas generated in terms of novelty, benefit and feasibility. The result showed that the ideas generated by the first group were rated significantly higher in terms of novelty as well as lower in terms of feasibility than the ideas generated by the second group. Furthermore, a questionnaire survey carried out to those who joined this workshop supported this finding. Our findings suggest that our workshop method is useful for bringing user perspective into actual business idea generation.
著者
鷲田 祐一 七丈 直弘
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.42-59, 2017-06-30 (Released:2020-03-10)
参考文献数
23

本論ではホライゾン・スキャニング法を援用した未来洞察ワークショップを用いて,AIやIoTの普及に関して,2025年ごろに発生が懸念される想定外事象に関する仮説を検証した。その結果,AIやIoTの普及に関しても,2025年から2030年ごろに,現段階の国を挙げての開発ビジョンでは想定されていない「モザイク型」普及,すなわち技術導入の進捗度が相分離する状況が想定されると結論された。AIやIoTの開発に実際に携わる特に技術系の研究者はこのような「モザイク型」普及に対する「備え」を持つことが重要である。AIやIoTは人を排除し,人の知的作業を代替してしまうものというよりも,人と共存し人の知的作業を縁の下の力持ち的に補助するもの,という人間中心的ビジョンを明確化することで,より現実的な近未来のマーケティングが想定できるだろう。幅広いマーケティング実務者にとって,AIやIoTのインパクトをもっと身近に理解できるようになる一助になると思われる。
著者
和嶋 雄一郎 鷲田 祐一 冨永 直基 植田 一博
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

製品に関するアイデアを生成する際のユーザ視点の有益性は数多く報告されているが,情報漏洩等のリスクを考えると,企業における製品開発アイデアの生成に,常にユーザを直接参加させることはできない.そこで本研究では,アイデア生成時に与える情報を操作した実験を行った.その結果,ユーザ視点で作成された情報を与えることで,直接ユーザを参加させずともユーザ視点が取り込まれたアイデアが生成されることを示した.
著者
鷲田 祐一 植田 一博
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.1515-1526, 2008-04-15

本研究では,知人同士をつなぐ生活者間情報ネットワーク構造に着目することで,需要側で起こるイノベーション現象のきっかけになる「新アイデア」がどのように発生するのかを,新技術に関する情報伝播実験を用いて,仔細な検証を試みた.その結果,イノベーションにつながるような「新しいアイデア」は,生活者の情報ネットワークを伝播する過程で生み出されること,また,その主役的な役割は,最初期の採択者ではなく,普及率が10%前後に到達する頃に新技術・新サービスに接してくる過渡的な層であることが強く示唆された.
著者
鷲田 祐一 三石 祥子 堀井 秀之
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-15, 2009 (Released:2010-05-14)
参考文献数
10
被引用文献数
7 6

本研究では, 8つの代表的な科学技術研究開発領域と, 「スキャニング」手法を用いて作成された近未来における社会変化シナリオとの「交差点」で発生する多様な社会技術問題を議論することを目的とした. 各専門領域における有識者が「スキャニング」データベースを用いて, 生活者視点での社会変化シナリオを構築することで, 他の技術普及予測があまり取り扱わない外部性要素をうまく取り込むことができた.