著者
藤永 徹 水野 信哉
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

感染病、炎症あるいは組織損傷の初期に生ずる一連の現象を急性相反応という。この時血漿中に増加する蛋白が急性相反応蛋白と呼ばれ、感染病などに対する抗体や細胞性免疫反応が発現するまでの間の初期における生体の防御反応を非特異的に担う重要な血漿蛋白群といわれている。本研究ではウマのC-反応性蛋白(CRP)、セルロプラスミン(CP)、α_<1->酸性糖蛋白(α_1AG)、酸可溶性蛋白(ASP)、ハプトグロビン(HG)、血清アミロイドA蛋白(SAA)およびα_<2->マクログロブリン(α_2MG)をとりあげ、それぞれの蛋白を分離・精製して性状を調べ、ウマ血清中の濃度測定法を確立した。次いで、正常馬の加齢性および周産期におけるそれら蛋白の血清中濃度変動を明らかにし、炎症性病態における急性相蛋白の診断法を確立し、その意義について検討した。その結果、α_2MGはウマでは急性相蛋白ではないと判断された。急性相蛋白としての血清濃度の変動は、炎症刺激に対する反応性が最も速い蛋白はSAAで、処置後2日目には処置前値の数十倍から数百倍にも上昇した。次はα_1AGとCRPで、α_1AGは処置後2,3日目に約1.5〜2倍の上昇を示し、CRPは処置後3、4日目に約4倍の上昇を示した。HGは処置後4、5日目に約1.5〜9倍の上昇を、ASPは処置後5日目に約1.8〜1.9の上昇を示した。CPは処置後6〜7日目に1.5〜2倍の上昇を示した。また、SAAとCRPはその血中濃度が良く相関したが、SAAがより鋭敏であった。この様な蛋白毎の反応性の違いは今のところ不明であるが、今後これら急性相蛋白の変動を詳細に検討することによって、急性相蛋白の血中濃度測定の臨床的意義がより明らかにされるものと考えられる。しかしながら、この様な蛋白の幾つかを組合わせて血中濃度を測定することによって、病期が推測できる可能性が示唆され、病勢の診断や治療指針に有力な情報となりうる可能性が示唆された。
著者
山下 和人 藤永 徹 奥村 正裕 滝口 満喜 角田 修男 水野 信哉
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.p1019-1024, 1991-12
被引用文献数
2

抗ウマCRPウサギ血清を用いた単純放射免疫拡散(SRID)法により, 臨床的に正常なウマの加齢および周産期におけるCRPの血中動態および実験的に炎症を作出したウマにおけるCRPの血中動態を検討した. 初乳未摂取の新生子の血清CRP濃度は雌雄ともに測定限界以下であったが, 幼齢期に上昇し, 青壮年期に低値を示し, 以降やや増加して安定するという加齢性の変化を示した. 周産期には, 分娩時および分娩後2か月目から4か月目の血清CRP濃度上昇および分娩2か月前の低下を認めた. 炎症刺激後24時間目より血清CRP濃度は上昇し, 3〜5日目で処置前の3〜6倍に達し最高値を示した. その後低下し14日目には処置前値に回復した. 以上の成績から, ウマにおいでもCRPは急性相蛋白であることが判明した.