著者
布川 寧 藤永 徹 平 知子 奥村 正裕 山下 和人 角田 修男 萩尾 光美
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.1011-1016, 1993-12-15
被引用文献数
5

セファデックスG-75を用いたゲルクロマトグラフィーを3回繰返すことによって急性期ウマ血清から血清アミロイドA(SAA)を分離した. これをウサギに免疫して得られた抗ウマSAAを用いた一次元放射免疫拡散(SRID)法によって, ウマ血清中のSAA濃度を測定した. 臨床的に健康なウマのSAA濃度は, 出生直後から1週齢にかけて高値を維持した後一旦低下したものの, その後も加齢に従って若干の増減を示した. 12ヵ月齢以下の子馬のSAA濃度の平均は19.37±9.41μg/ml, 18か月齢以上の成馬では平均21.53±9.81μg/mlであった. 周産期にある雌馬の血清SAA濃度の推移は, 分娩4か月前から分娩時まで特に変動はみられなかったが, 分娩直後より急上昇し, 分娩3日目には最高値136.78±56.74μg/mlを示したが, 分娩1か月以内に正常値範囲内に回復した. 実験的炎症作出馬では処置後6時間目より急激に上昇し, 処置後2日目には処置前値の約4〜20倍の最高値に達した. その後, 局所の炎症消退につれて10日から4週間以内に処置前値に回復した. 検査に供した炎症性病態にある多くの症例馬の平均SAA濃度は正常値と比較して有意に高値を示した. 以上の結果から, ウマSAAは各種炎症性疾患の急性期の初期に著増する急性相蛋白の一つであると判断された.
著者
藤永 徹 水野 信哉
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

感染病、炎症あるいは組織損傷の初期に生ずる一連の現象を急性相反応という。この時血漿中に増加する蛋白が急性相反応蛋白と呼ばれ、感染病などに対する抗体や細胞性免疫反応が発現するまでの間の初期における生体の防御反応を非特異的に担う重要な血漿蛋白群といわれている。本研究ではウマのC-反応性蛋白(CRP)、セルロプラスミン(CP)、α_<1->酸性糖蛋白(α_1AG)、酸可溶性蛋白(ASP)、ハプトグロビン(HG)、血清アミロイドA蛋白(SAA)およびα_<2->マクログロブリン(α_2MG)をとりあげ、それぞれの蛋白を分離・精製して性状を調べ、ウマ血清中の濃度測定法を確立した。次いで、正常馬の加齢性および周産期におけるそれら蛋白の血清中濃度変動を明らかにし、炎症性病態における急性相蛋白の診断法を確立し、その意義について検討した。その結果、α_2MGはウマでは急性相蛋白ではないと判断された。急性相蛋白としての血清濃度の変動は、炎症刺激に対する反応性が最も速い蛋白はSAAで、処置後2日目には処置前値の数十倍から数百倍にも上昇した。次はα_1AGとCRPで、α_1AGは処置後2,3日目に約1.5〜2倍の上昇を示し、CRPは処置後3、4日目に約4倍の上昇を示した。HGは処置後4、5日目に約1.5〜9倍の上昇を、ASPは処置後5日目に約1.8〜1.9の上昇を示した。CPは処置後6〜7日目に1.5〜2倍の上昇を示した。また、SAAとCRPはその血中濃度が良く相関したが、SAAがより鋭敏であった。この様な蛋白毎の反応性の違いは今のところ不明であるが、今後これら急性相蛋白の変動を詳細に検討することによって、急性相蛋白の血中濃度測定の臨床的意義がより明らかにされるものと考えられる。しかしながら、この様な蛋白の幾つかを組合わせて血中濃度を測定することによって、病期が推測できる可能性が示唆され、病勢の診断や治療指針に有力な情報となりうる可能性が示唆された。
著者
星野 有希 高木 哲 大崎 智弘 奥村 正裕 藤永 徹
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.383-387, 2009-05-20 (Released:2016-09-03)
参考文献数
15

悪性腫瘍罹患犬10症例に対して活性化リンパ球療法を実施した.症例犬より採取した末梢血単核球を抗CD3抗体およびヒトリコンビナントIL-2を用いて14日間培養後,ヒトリコンビナントIFN-αを感作した細胞を活性化リンパ球とし,当該症例に複数回投与した.その結果,すべての症例で末梢血単核球細胞の構成細胞比が変化し,うち2症例で血清IFN-γ濃度の上昇が認められた.また活性化リンパ球の投与による副作用は認められず,症例の生活の質を十分維持することが可能であった.以上のことから,本治療法は腫瘍の発症およびその治療により生活の質が低下しがちな犬に対しても免疫応答を活性化することが可能であり,腫瘍の成長および転移に対する免疫学的防御能を活性化させる治療法として十分適用可能であると考えられた.
著者
山下 和人 藤永 徹 奥村 正裕 滝口 満喜 角田 修男 水野 信哉
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.p1019-1024, 1991-12
被引用文献数
2

抗ウマCRPウサギ血清を用いた単純放射免疫拡散(SRID)法により, 臨床的に正常なウマの加齢および周産期におけるCRPの血中動態および実験的に炎症を作出したウマにおけるCRPの血中動態を検討した. 初乳未摂取の新生子の血清CRP濃度は雌雄ともに測定限界以下であったが, 幼齢期に上昇し, 青壮年期に低値を示し, 以降やや増加して安定するという加齢性の変化を示した. 周産期には, 分娩時および分娩後2か月目から4か月目の血清CRP濃度上昇および分娩2か月前の低下を認めた. 炎症刺激後24時間目より血清CRP濃度は上昇し, 3〜5日目で処置前の3〜6倍に達し最高値を示した. その後低下し14日目には処置前値に回復した. 以上の成績から, ウマにおいでもCRPは急性相蛋白であることが判明した.
著者
高木 哲 北村 剛規 保坂 善真 大崎 智弘 ボスナコフスキー ダルコ 廉澤 剛 奥村 正裕 藤永 徹
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.385-391, 2005-04-25
被引用文献数
1 11

RECKは近年発見された膜結合型内因性マトリクスメタロプロテイナーゼインヒビターであり, ヒトの臨床例においてその発現量と腫瘍の悪性度に負の相関が認められることが報告されている.本研究では犬のRECK遺伝子のクローニングを行った.その結果, cDNAは2,913塩基で, ヒトと95.5%, マウスと91.9%の相同性を示す971残基のアミノ酸から構成されることがわかった.様々な正常組織でのmRNAの発現量をリアルタイムPCR法にて定量した結果, 肺と精巣で高い発現が認められたが, 腫瘍細胞では極めて低い発現のみ認められた.免疫染色では精子, 平滑筋, 偽重層上皮などに強い染色性が認められ, 発現ペクターを用いた実験では腫瘍の浸潤能が抑制されていた.
著者
渡邊 一弘 菊池 正浩 奥村 正裕 廉澤 剛 藤永 徹
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.889-894, 2001-08-25
被引用文献数
2 8

犬の歯根尖部にみられるapical deltaという複雑な構造は, 根尖病変の要因の一つと考えられている. 本研究では, apical deltaを含む根尖病変を除去するために行われている根尖切除術を実験的に犬に施した後, エナメルマトリックスタンパク(EMP)を根尖部に注入し, 根尖部歯周組織再生に対するFMPの効果を組織学的に検討した. ビーグル成犬5頭に対し, 全身麻酔下で左右の上顎第4前臼歯頬側近心根および上顎犬歯根の根尖とセメント質を除去した後, 左右いずれか一方の術部にEMPを注入し, 反対側を対照群とした. 12週間後, 安楽死して組織を採取し, 光学顕微鏡下で根尖切除部位における欠損の大きさ, 新生セメント質およびこれと新生骨を結ぶコラーゲン線維の有無を評価した. その結果, EMP群では対照群に比べ, 切除部位の欠損部は小さく, 新年セメント質の形成は優勢であった. 特に, 対照群では認められない新年セメント質と新生骨を結ぶコラーゲン線維が明らかに存在し, EMPが根尖切除後の根尖部歯周組織の再生を促進することが確認された. これらの所見は, 犬の根尖切除術に対するEMP使用の有用性を示唆するものである.