著者
水野 量
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.115-121, 1992 (Released:2007-10-19)
参考文献数
37
被引用文献数
13 13

日本列島の150地点における地上気象観測データを用いて、あられ降水の統計的特徴を調べた。1971-1986年の全国150地点の地上気象観測によると、あられ日数は冬期の東北•北陸地方の日本海沿岸で卓越している。また、1982-1986年のデータから、この地域の1月のあられによる降水量は少なくとも月降水量の1/4~1/3であると推定された。以上のあられ降水の統計分析から、日本列島におけるシーディングポテンシャルが議論された。
著者
斉藤 和雄 村上 正隆 松尾 敬世 水野 量
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.797-813, 1996-12-25
被引用文献数
1

冬季北日本山岳域と日本海側平野部への降雪における地形効果と雲物理学的役割を調べるため、水物質の混合比と氷物質の混合比および数濃度を予報する2次元非静水圧モデルを用いて感度実験を中心とする数値実験を行った。東北地方とほぼ同スケールの単純化した地形と海陸分布を与えた実験により、日本海上での気団変質と降雪雲の発生、山岳域風上側斜面での降雪の集中と風下側での雲の消滅がシミュレートされた。雲頂高度は海上から海岸付近、内陸の順に増大し、雲頂温度の低下に伴って氷晶数の増大が見られた。降雪の分布への副次的な要素として海陸の粗度と温度差の影響を調べた。比較実験では、陸域風上側での降雪の集中には海陸の温度差による収束効果が寄与しており、粗度の違いによる摩擦収束の影響は小さかった。日本海上で変質した気団が山の高さだけ強制上昇させられることを前提に、強制凝結量の内どれだけが陸面での降水になるかを求めて降水能率を定義し、山の高さを変えて降水能率を比較した。実験では、山の高さが雲底高度を越えると降水量の急増が起こり、600m以下で40%前後だった降水能率は1000m以上では80%前後に上昇する。一方、氷相過程を取り除いたwarm rain processでは、山の前面で凝結した雲水の大部分は雨水へと転化する前に山岳後面の強制下降域に入ってしまい、降水量・降水能率ともに氷相を含む実験の1/3程度の低い値に留まった。氷晶生成項についての感度実験を行い、山岳域で氷晶生成を抑制することで陸域の降雪が減少することと、山が無くても陸域で氷晶生成を促進すると降雪量が増大することを確かめた。これらの結果は、冬季北日本の地形性降雪においては、一般に指摘されている地形強制上昇による水蒸気凝結のみならず、山岳域での雲頂温度低下に伴う氷晶生成の促進による天然の種蒔き効果-natural seeding-が、降雪量の増大に重要な役目を果たしていることを強く示唆している。日本海上の特定の場所で水晶生成を促進する実験を行い、人工的な種まきによる降雪の抑制あるいは促進の理論的な可能性を示した。
著者
村上 正隆 松尾 敬世 水野 量 山田 芳則
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.671-694, 1994-10-25
被引用文献数
8

1989年から1992年の4冬期間に、雲粒子ゾンデ・雲粒子ドロップゾンデ・ドップラーレーダ・マイクロ波放射計を用いて、日本海上の対流性降雪雲の観測を行った。この論文では、雲の一生の中でステージの異なる雪雲の観測例を多数コンポジットし、雲頂温度-20±3℃の比較的寿命の短い対流性降雪雲内の微物理構造の変化を調べた。発達期には中程度(〜4m/s)の上昇流によって雲全体に断熱凝結量に近い高濃度の過冷却雲水が生成される。このとき水晶数濃度(200μm以下)は10個/リットル程度で降雪粒子(200μm以上)はまだ形成されていない。最盛期には、氷晶は時々100個/リットルを越える高濃度となり、アラレや濃密雲粒付雪結晶からなる降雪粒子ができ、その濃度は10個/リットル程度となる。これらの降雪粒子の昇華及びライミング成長により、過冷却雲水のかなりの部分が消費される。衰退期までには、ほとんどの過冷却雲水が消費され、雲内には全くライミングしていないか、又は軽くライミングした雪結晶が残る。降雪機構としては、過冷却雲粒の共存下で発生した氷晶(特に厚角板や角柱などの軸比が1に近い結晶)が、昇華・ライミング成長を続け、最終的にアラレになる機構が主なものである。一方、暖かい雨の形成機構が慟いていることや、凍結水滴がアラレの芽となっている可能性を示唆する結果も得られているが、過冷却及び凍結水滴の数濃度が低いこと、また分布が時空間的に限定されていることから、その寄与は小さいものとみられる。雲水量の収支計算から、発達期には、気塊の断熱上昇による過剰水蒸気生成項が卓越しており、雲水量は断熱凝結量に近い値となるが、一端降雪が強くなると、1m/s程度の上昇流を含む雲でさえ定常状態を維持できなくなり、降水粒子の昇華・ライミング生成に消費され、過冷却雲水は急速に減少・消失することが示された。