著者
村上 正隆
出版者
北海道大学低温科学研究所 = Institute of Low Temperature Science, Hokkaido University
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.297-310, 2014-03-31

人工的に生成した氷の微粒子を雲内に導入し, 自然の雲が雨・雪を生成するメカニズムの持つ律速過程にバイパスをつけて降水を促進させる人工降雨技術(意図的気象改変)は, 第二次世界大戦直後に華々しく登場し, 現在では世界40か国で使用されている. 本稿では, 人工降雨の原理・歴史・現状と問題点を述べるとともに, 最新の人工降雨研究の取り組みを紹介する.

18 7 1 0 OA 人工降雨とは

著者
村上 正隆
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.5-13, 2015-03-20 (Released:2015-04-16)
参考文献数
17
被引用文献数
1

Scientifically-based methods of rainmaking (one of planned weather modification technologies) appeared brilliantly just after World War II, and are currently used in about 40 nations and regions worldwide. The rainmaking methods introducing dry-ice pellets or artificially generated aerosols which act as cloud condensation nuclei and/or ice nuclei into clouds, bypass the rate-limiting processes in rain and snow formation mechanisms in natural clouds by producing precipitation embryos in the form of large droplets in warm clouds or ice crystals in cold clouds, and lead to precipitation enhancement. In this paper, while describing the necessity, history, principle and problems of rainmaking, the leading-edge trend of the planned weather modification research is briefly introduced.
著者
折笠 成宏 村上 正隆
出版者
(公社)日本気象学会
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.1033-1039, 1997-12-25 (Released:2009-09-15)
参考文献数
8
被引用文献数
4 18

低濃度の氷晶からなる巻雲を測定するために新型の雲粒子ゾンデを開発した。このゾンデは倍率の異なる2台の小型ビデオカメラを搭載しており、粒径7μm-5mmの粒子の映像を1.6GHzのマイクロ波を通して地上に伝送する。従来の雲粒子ゾンデでは、サンプリング体積が小さいために、雲粒子の数濃度が低い雲の粒径分布が正確に評価できなかった。この点を克服するために、吸引用の小型ファンを付加することによって十分なサンプリング体積を確保した。また、周囲の気圧変化やゾンデの上昇速度によるサンプリング体積の変化を室内実験によって評価した。捕捉率の理論的計算から、10μm以上の粒子が全て捕捉されると考えられる。強制吸引式雲粒子ゾンデによる巻雲の観測例から、10μm以上の氷晶の粒径分布を250m間隔で精度良く決定できることがわかった。この雲粒子ゾンデの観測結果は、巻雲の生成や維持の機構を理解するのに有益な情報を与える。
著者
山下 克也 村上 正隆 田尻 拓也 斎藤 篤思
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.174-182, 2014-09-20 (Released:2014-10-04)
参考文献数
13
被引用文献数
1

Aerosol particles acting as cloud condensation nuclei (CCN) determine initial cloud droplet concentrations and subsequent evolutions of microphysical structures of clouds and precipitation, and affect a short-range precipitation forecast and climate change projection. The Global Atmosphere Watch Scientific Advisory Group recommends the CCN monitoring as a part of determination of the spatio-temporal distribution of aerosol properties related to climate forcing and air quality on multi decadal time scales and on regional, hemispheric and global spatial scales. We have been monitoring CCN concentrations along with aerosol concentrations, aerosol size distributions, and ice nuclei (IN) concentrations on the campus of Meteorological Research Institute in Tsukuba city (36.06°N,140.13°E), Ibaraki, Japan since March 2012. In this report, the maintenance information for long-term measurements with continuous-flow stream-wise thermal gradient chamber type CCN counter, especially calibration methods of supersaturations in the CCN counter and their error factors, are described. Also, the results of the long-term monitoring of CCN concentrations and the research activity on cloud droplet formation processes at MRI are briefly introduced.
著者
折笠 成宏 村上 正隆 斎藤 篤思
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.24-31, 2015-03-20 (Released:2015-04-16)
参考文献数
9
被引用文献数
1

As one of the physical evaluation techniques of seeding effects, cloud seeding experiments were conducted utilizing an instrumented aircraft, with the use of dry-ice pellets in cold clouds and hygroscopic flares and salt micro-powders in warm clouds as a seeding agent. We demonstrated from the in-situ measurements that dry-ice pellet seeding of mixed-phase orographic clouds were effective, based on the comparison of estimated radar reflectivity factor, ice water content, or precipitation intensity from the 2D images of ice particles between seeded portions and their surroundings. The observational results we obtained so far showed that hygroscopic seeding of warm clouds might be effective under limited conditions.
著者
村上 正隆
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.715-720, 2003-09-30
被引用文献数
2
著者
斉藤 和雄 村上 正隆 松尾 敬世 水野 量
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.797-813, 1996-12-25
被引用文献数
1

冬季北日本山岳域と日本海側平野部への降雪における地形効果と雲物理学的役割を調べるため、水物質の混合比と氷物質の混合比および数濃度を予報する2次元非静水圧モデルを用いて感度実験を中心とする数値実験を行った。東北地方とほぼ同スケールの単純化した地形と海陸分布を与えた実験により、日本海上での気団変質と降雪雲の発生、山岳域風上側斜面での降雪の集中と風下側での雲の消滅がシミュレートされた。雲頂高度は海上から海岸付近、内陸の順に増大し、雲頂温度の低下に伴って氷晶数の増大が見られた。降雪の分布への副次的な要素として海陸の粗度と温度差の影響を調べた。比較実験では、陸域風上側での降雪の集中には海陸の温度差による収束効果が寄与しており、粗度の違いによる摩擦収束の影響は小さかった。日本海上で変質した気団が山の高さだけ強制上昇させられることを前提に、強制凝結量の内どれだけが陸面での降水になるかを求めて降水能率を定義し、山の高さを変えて降水能率を比較した。実験では、山の高さが雲底高度を越えると降水量の急増が起こり、600m以下で40%前後だった降水能率は1000m以上では80%前後に上昇する。一方、氷相過程を取り除いたwarm rain processでは、山の前面で凝結した雲水の大部分は雨水へと転化する前に山岳後面の強制下降域に入ってしまい、降水量・降水能率ともに氷相を含む実験の1/3程度の低い値に留まった。氷晶生成項についての感度実験を行い、山岳域で氷晶生成を抑制することで陸域の降雪が減少することと、山が無くても陸域で氷晶生成を促進すると降雪量が増大することを確かめた。これらの結果は、冬季北日本の地形性降雪においては、一般に指摘されている地形強制上昇による水蒸気凝結のみならず、山岳域での雲頂温度低下に伴う氷晶生成の促進による天然の種蒔き効果-natural seeding-が、降雪量の増大に重要な役目を果たしていることを強く示唆している。日本海上の特定の場所で水晶生成を促進する実験を行い、人工的な種まきによる降雪の抑制あるいは促進の理論的な可能性を示した。
著者
村上 正隆 Clark Terry L. Hall William D.
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.43-62, 1994-02-25
被引用文献数
7

新しい雲の微物理パラメタリゼーションを組み込んだ2次元3重ネステッド雲モデルを用いて、二つの事例について、日本海上での混合層の発達と対流性降雪雲の形成過程の数値実験を行った。一つは、集中観測期間中の1989年2月2-4日に、並の寒気吹き出しに伴って出現した雪雲である。この例は、雲の微物理構造について観測結果との詳細な比較がなされた。もう一つは、1990年1月24-26日の強い寒気吹き出しにともなって出現した雪雲である。この二例の比較を通して寒気吹き出しの強さが混合層の発達と雪雲形成に及ほす影響を調べた。モデルは、暖かい海面からの熱と水蒸気の補給(総熱フラックスは、1989年の例では439W/m^2、1990年の例では895W/m^2)と、それに続く対流輸送による混合層の発達をよく再現した。雲が形成されるまでの吹走距離、雲頂・雲底高度、混合層内での気温の増加等については、モデルと観測との良い一致が見られた。雲の力学及び微物理学的見地からは、上昇流、雲水量、雪水量などの観測値がよく再現された。また、雪雲中での霧雨(drizzle)の生成や、雲水の高濃度域と氷晶の高濃度域の一致という観測事実もよく再現された。モデルと観測結果の不一致の主なものは氷晶濃度で、モデルは観測値を約6倍過小評価した。一般的に、雲は大陸東岸から50-150km(寒気吹き出しの強さによる)風下で形成され、吹走距離とともに徐々に雲頂高度が高くなり、対流活動も活発になる。日本付近では、海岸から約30km風上側で雪雲の活動が強まり、その後、陸面からの熱と水蒸気の補給を断たれて徐々に衰弱する。これらの雲の中では、最初、主に過冷却雲粒の凍結によって氷晶が生成し、昇華凝結及び雲粒捕捉により成長する。代表的な降水粒子は、海上・海岸域ではアラレで、山岳域に進むにつれて雪へと変化する。山岳斜面上では、衰退しつつある上層の雪雲と地形による上昇流で形成された下層雲の間で顕著なSEEDER-FEEDERメカニズムが働いている。海上でも、ライフステージの異なる隣接する雪雲間で同様のメカニズムが働くが、山岳斜面上ほど顕著ではない。寒気吹き出しが強まる(低温になる)ことにより、雪雲の対流活動は活発になり混合層も厚くなる。昇華凝結核の活性化により、高濃度の氷晶が生成され、これら氷晶間での過当競争により雲粒捕捉成長が抑えられ、アラレの雪に対する比率が減少することが示された。
著者
村上 正隆 折笠 成宏 斎藤 篤思 田尻 拓也 橋本 明弘 財前 裕二 牧 輝弥 荒木 健太郎 松木 篤 久芳 奈遠美
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

つくばサイトに於いて、各種エアロゾル測定・採取装置、雲核計、氷晶核計を用いて通年観測を継続実施した。エアロゾルの物理化学生物特性および雲核・氷晶核活性化スペクトルの季節変化について明らかにした。大気エアロゾルの主要構成要素である、黄砂粒子・バイオエアロゾル・種々の人為起源エアロゾル(標準粒子)を対象とした雲生成チェンバー実験や雲核計・氷晶核計を用いた測定結果と詳細雲微物理モデルの結果に基づき、その雲核能・氷晶核能を種々の気象条件下で調べ定式化した。その結果を用いて非静力学モデルなどに用いるエアロゾル(雲核・氷晶核)・雲・降水を統一的に取扱う新機軸のパラメタリゼーションを開発した。
著者
斉藤 和雄 田宮 久一郎 青梨 和正 瀬古 弘 小司 禎教 川畑 拓矢 大関 誠 原 昌弘 柳野 健 中澤 哲夫 國井 勝 田中 博 古本 淳一 永戸 久喜 村上 正隆 田中 博 津田 敏隆 古本 淳一 若月 泰孝 林 修吾 露木 義 小泉 耕 西嶋 信 石川 宜広 本田 有機 三好 建正 経田 正幸 山口 宗彦 澤田 謙 酒井 亮太 米原 仁 小野 耕介 津口 裕茂 藤田 匡 三上 彩 近藤 圭一 劉 國勝
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

集中豪雨を数値モデルで予測するため、大気の3次元的な状態を観測データを用いて精度良く解析する研究、および予測の信頼性を定量的に見積もる手法の研究を行った。非定時の観測データを同化する高解像度4次元変分法の開発、GPSデータ、マイクロ波放射計データ等の同化実験を行い、豪雨の予測が改善できることを示した。アンサンブル予報の手法をメソ現象の短時間予測に適用し、予報誤差を定量的に見積もる手法を示した。
著者
村上 正隆
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.715-720, 2003-09-30
参考文献数
1
被引用文献数
2
著者
村上 正隆 松尾 敬世 水野 量 山田 芳則
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.671-694, 1994-10-25
被引用文献数
8

1989年から1992年の4冬期間に、雲粒子ゾンデ・雲粒子ドロップゾンデ・ドップラーレーダ・マイクロ波放射計を用いて、日本海上の対流性降雪雲の観測を行った。この論文では、雲の一生の中でステージの異なる雪雲の観測例を多数コンポジットし、雲頂温度-20±3℃の比較的寿命の短い対流性降雪雲内の微物理構造の変化を調べた。発達期には中程度(〜4m/s)の上昇流によって雲全体に断熱凝結量に近い高濃度の過冷却雲水が生成される。このとき水晶数濃度(200μm以下)は10個/リットル程度で降雪粒子(200μm以上)はまだ形成されていない。最盛期には、氷晶は時々100個/リットルを越える高濃度となり、アラレや濃密雲粒付雪結晶からなる降雪粒子ができ、その濃度は10個/リットル程度となる。これらの降雪粒子の昇華及びライミング成長により、過冷却雲水のかなりの部分が消費される。衰退期までには、ほとんどの過冷却雲水が消費され、雲内には全くライミングしていないか、又は軽くライミングした雪結晶が残る。降雪機構としては、過冷却雲粒の共存下で発生した氷晶(特に厚角板や角柱などの軸比が1に近い結晶)が、昇華・ライミング成長を続け、最終的にアラレになる機構が主なものである。一方、暖かい雨の形成機構が慟いていることや、凍結水滴がアラレの芽となっている可能性を示唆する結果も得られているが、過冷却及び凍結水滴の数濃度が低いこと、また分布が時空間的に限定されていることから、その寄与は小さいものとみられる。雲水量の収支計算から、発達期には、気塊の断熱上昇による過剰水蒸気生成項が卓越しており、雲水量は断熱凝結量に近い値となるが、一端降雪が強くなると、1m/s程度の上昇流を含む雲でさえ定常状態を維持できなくなり、降水粒子の昇華・ライミング生成に消費され、過冷却雲水は急速に減少・消失することが示された。