著者
大泉 伝 斉藤 和雄 伊藤 純至 レ デュック
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2016

本研究では、「京」コンピュータに最適化した気象庁非静力学モデル(JMA-NHM)を用いて、広域を対象とした超高解像度実験を行い、それによって豪雨の予測が向上するかを調べた。豪雨の数値予報に影響を与える次の3つの要因について調べた:(1)解像度(5, 2 km, 500, 250 m)、(2)乱流クロージャモデル:Mellor-Yamada-Nakanishi-Niino(MYNN)とDeardorff(DD)スキーム、(3)島の地形。 MYNNを用いた解像度2kmと500mの実験では、強い降水帯が実況より北西に位置し、島を完全に覆わなかった。DDを用いた実験では、実況と同様に降水帯が完全に島を覆い、再現性が良かった。高精度な地形を用いた解像度250mで実験が、降水帯の位置と伊豆大島内の降水分布を最もよく再現した。本研究の結果から、数値モデルによる豪雨の予報では、広い領域を高解像度で計算する事によって、降水の再現性が良くなることを示した。
著者
斉藤 和雄
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.301-329, 1994-04-25
被引用文献数
10

放射ネスティング側面境界条件を用いた非弾性非静水圧3次元モデルが示され、1991年9月27日のやまじ風のシミュレーションに適用される。気象庁JSMに2重ネスティングした2.5km分解能非静水圧モデルにより、四国山地後面での内部ハイドロリックジャンプの出現と一般風の強まりに伴うジャンプの移動がシミュレートされる。モデルは既報Part2(Saito, 1993)で用いられた3次元非弾性方程式モデルを側面境界条件を通して変化する一般場の情報を表現出来るように改良したもので、上・下部の境界条件と非弾性の連続の式を満足するような初期場を変分客観解析を用いて作成した。側面境界条件として、内挿した親モデルの予報値を外部参照値に持つOrlanskiタイプの放射条件を用いた。3次元の山を越える流れの非静水圧線形解析解との比較でネスティングの有効性が確認された。1991年9月27日の台風19号によるやまじ風を例に、気象庁JSMとネスティングした10kmと2.5kmの分解能の非静水圧モデルによるシミュレーションを行った。10km分解能モデルの予報風は基本的にJSMによるものに近く、一般場の変化を良く表現するものの顕著なおろし風はシミュレートされなかった。2.5km分解能モデルでは、四国山地後面のおろし風・新居浜付近の逆風・やまじ風前線(ハイドロリックジャンプ)がシミュレートされ、観測された地上風の変化と概ね良く対応していた。シミュレーションで示された風系と一般風の強さの変化に対応するハイドロリックジャンプの消長は、より単純な設定の下で行われた数値実験や理論的考察(Saito, 1992)に基づいて提唱された既報(Part1=Saito and Ikawa, 1991a ; Part2)のやまじ風の概念モデルを概ね支持する。地面温度・地表面粗度の大小が、やまじ風の強さに影響する事を比較感度実験により確かめた。やまじ風の場合、既報で強調された四国の特徴的な地形(四国山地の風上側・風下側の非対称性、鞍部の存在)に加え、燧難の存在が、海陸の粗度の違いを通じて平野部での強風の発生に寄与している。
著者
斉藤 和雄 瀬古 弘 川畑 拓矢 青梨 和正 小司 禎教 村山 泰啓 古本 淳一 岩崎 俊樹 大塚 道子 折口 征二 国井 勝 横田 祥 石元 裕史 鈴木 修 原 昌弘 荒木 健太郎 岩井 宏徳 佐藤 晋介 三好 建正 幾田 泰酵 小野 耕介
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

局地豪雨による被害軽減につながる基盤技術開発のための研究として以下を行った。・観測データを高解像度の数値モデルの初期値に取り込む手法(データ同化手法)の開発と豪雨事例への適用を行なった。衛星で観測するマイクロ波データ、GPSデータ、ライダー観測による風のデータを用いた同化実験などを行うとともに、静止衛星の高頻度観測データの利用に向けた取り組みにも着手した。・局地豪雨の発生確率を半日以上前から定量的に予測することを目標に、メソアンサンブル予報のための初期値や境界値の摂動手法の開発と雲を解像する高分解能モデルへの応用と検証を行い、局地豪雨の確率的予測の可能性を示した。
著者
中澤 哲夫 別所 康太郎 坪木 和久 斉藤 和雄 榎本 剛 原 昌弘
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

2008年に行った航空機からの台風直接観測による進路予報へのインパクトについて調査を行った結果、ターゲット観測の予報改善効果が確認できたものの、台風第13号と第15号の二つの台風での限られた観測のため、有効性を十分に確認することまでは至っていない。高い感度領域でのデータ同化が、必ずしも予報精度の改善へ寄与していない事例のあることもわかった。台風周辺での観測のインパクトについては、数値予報の成績がよい気象庁やヨーロッパ中期予報モデルなどでは改善率が小さく、逆に米国のモデルなど通常の予報成績があまりよくない場合に改善率が大きいこともわかった。また、台風中心付近のデータをどのように同化システムに取込むかどうかによって予報精度が大きく影響されることが明らかになった。
著者
斉藤 和雄 村上 正隆 松尾 敬世 水野 量
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.797-813, 1996-12-25
被引用文献数
1

冬季北日本山岳域と日本海側平野部への降雪における地形効果と雲物理学的役割を調べるため、水物質の混合比と氷物質の混合比および数濃度を予報する2次元非静水圧モデルを用いて感度実験を中心とする数値実験を行った。東北地方とほぼ同スケールの単純化した地形と海陸分布を与えた実験により、日本海上での気団変質と降雪雲の発生、山岳域風上側斜面での降雪の集中と風下側での雲の消滅がシミュレートされた。雲頂高度は海上から海岸付近、内陸の順に増大し、雲頂温度の低下に伴って氷晶数の増大が見られた。降雪の分布への副次的な要素として海陸の粗度と温度差の影響を調べた。比較実験では、陸域風上側での降雪の集中には海陸の温度差による収束効果が寄与しており、粗度の違いによる摩擦収束の影響は小さかった。日本海上で変質した気団が山の高さだけ強制上昇させられることを前提に、強制凝結量の内どれだけが陸面での降水になるかを求めて降水能率を定義し、山の高さを変えて降水能率を比較した。実験では、山の高さが雲底高度を越えると降水量の急増が起こり、600m以下で40%前後だった降水能率は1000m以上では80%前後に上昇する。一方、氷相過程を取り除いたwarm rain processでは、山の前面で凝結した雲水の大部分は雨水へと転化する前に山岳後面の強制下降域に入ってしまい、降水量・降水能率ともに氷相を含む実験の1/3程度の低い値に留まった。氷晶生成項についての感度実験を行い、山岳域で氷晶生成を抑制することで陸域の降雪が減少することと、山が無くても陸域で氷晶生成を促進すると降雪量が増大することを確かめた。これらの結果は、冬季北日本の地形性降雪においては、一般に指摘されている地形強制上昇による水蒸気凝結のみならず、山岳域での雲頂温度低下に伴う氷晶生成の促進による天然の種蒔き効果-natural seeding-が、降雪量の増大に重要な役目を果たしていることを強く示唆している。日本海上の特定の場所で水晶生成を促進する実験を行い、人工的な種まきによる降雪の抑制あるいは促進の理論的な可能性を示した。
著者
高桑 栄松 大中 吉人 斉藤 和雄 井守 輝一 小峰 妙子
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.386-390, 1969-08-30 (Released:2009-08-24)
参考文献数
16

In the previous paper the authors reported that a muscular work load resulted in the lowering of the function of concentration maintenance (TAF), the grade of which significantly correlated with the volume of oxygen consumed for the work.The present experiment has been carried out to discuss about the lowering of TAF due to muscular work from the viewpoint of excitability level of spinal motoneurone, the final common path of motor nerve system, in relation to the physiological function as one of the factors of the change of TAF.Eighteen healthy male students were loaded with bicycle ergometric work of oxygen consumption of 710ml/min. for 90 minutes. Before and after the work load, they were administered the TAF test, measurement of eye-hand reaction time and recording of H-wave recovery curve from the right lower extremity.The results obtained were as follows:1. The function of concentration maintenance tended to lower with muscular work.2. Comparing the reflexes appeared in H-wave at time intervals of 50 to 900 msec between the conditioning shock and the test shock, the suppression in H-wave recovery curve with ergometric work was noticeable at both 100 and 400 msec against the pre-work values.3. Lowering of the excitability of spinal motoneurone corresponding to muscular fatigue was revealed by a significant correlation between the inhibition rate in H-wave (post-to-pre value) at 400 msec of shock interval and the time of appearance of irregular Piper's rhythm as myographical fatigue.It is reasonable that the excitability of spinal motoneurone lowers at 100 msec in the process of after-hyper-polarization, while the fact that even beyond the rage of the process, at 400 msec, a significant suppression in H-wave recovery curve was observed may suggest also a lowering of its excitability without regard to the relative refractory period of after-hyper-polarization.These results lead us to recognize that the lowering of TAF due to a physical load may be caused by the central depressive action in relation to muscular fatigue.
著者
斉藤 和雄 Lecong Thanh 武田 喬男
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
Papers in Meteorology and Geophysics (ISSN:0031126X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.65-90, 1994 (Released:2006-10-20)
参考文献数
25
被引用文献数
2 7

紀伊半島、尾鷲付近での降雨の集中に対する地形効果をみるため、3次元山岳地形を越える流れの場を非静水圧ドライモデルを用いて調べ、観測された降雨量分布との比較を行った。 北東~南西方向に長軸を持つ楕円で単純化した地形に対する数値実験では、南東の一般風が弱い場合、山岳風上側下層の上昇流域は、斜面上と海上に2つのピークが見られた。海上のピークは、ブロッキングによる2次的な上昇流で、山岳前面最下層の逆風を伴っていた。それぞれのピークは一般風が小さいほど風上側に生ずるが、一般風が強く (あるいは安定度が小さく) ブロッキングが生じない場合は、海上の2次的な上昇流は見られない。紀伊半島地形の特徴的な湾曲は、南東風時のブロッキングの効果を高める働きを持つ。 1985年の紀伊半島での降水事例を解析し、尾鷲では潮岬に比べ雨量が多い事と大雨は東南東~南の下層風向時に生じている事を確かめた。紀伊半島の現実地形を用いた数値実験では、東~南のいずれの風向時にも尾鷲付近と紀伊半島南部に下層の上昇流域が見られ、榊原・武田 (1973) で示された紀伊半島の年平均降水量分布の極大地点と良い一致が見られた。ブロッキングにともなう海上の2次的な上昇流は南西~西の風向時には生じなかった。 大雨時に観測された一般場を用いた数値実験でも同様な傾向が見られ、シミュレーションで得られた下層の上昇流域は観測された降水分布に概ね良く対応していた。また、いくつかのケースでは、尾鷲の北東で観測された地上の降水域に対応する場所に山岳波による風下側中層の上昇流域がシミュレートされた。 実験結果は、実際の降雨分布と一般風の大きさの関係-弱風時の海岸域と強風時の内陸域-に対応している。また、弱風時にしばしば見られる紀伊半島風上側海上での対流性降雨バンドの発達に、紀伊半島の地形のブロッキングによる下層の水平収束が影響している事を示唆している。
著者
斉藤 和雄 田宮 久一郎 青梨 和正 瀬古 弘 小司 禎教 川畑 拓矢 大関 誠 原 昌弘 柳野 健 中澤 哲夫 國井 勝 田中 博 古本 淳一 永戸 久喜 村上 正隆 田中 博 津田 敏隆 古本 淳一 若月 泰孝 林 修吾 露木 義 小泉 耕 西嶋 信 石川 宜広 本田 有機 三好 建正 経田 正幸 山口 宗彦 澤田 謙 酒井 亮太 米原 仁 小野 耕介 津口 裕茂 藤田 匡 三上 彩 近藤 圭一 劉 國勝
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

集中豪雨を数値モデルで予測するため、大気の3次元的な状態を観測データを用いて精度良く解析する研究、および予測の信頼性を定量的に見積もる手法の研究を行った。非定時の観測データを同化する高解像度4次元変分法の開発、GPSデータ、マイクロ波放射計データ等の同化実験を行い、豪雨の予測が改善できることを示した。アンサンブル予報の手法をメソ現象の短時間予測に適用し、予報誤差を定量的に見積もる手法を示した。
著者
加藤 輝之 栗原 和夫 瀬古 弘 斉藤 和雄 郷田 治稔
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.719-735, 1998-10-25
被引用文献数
6

10km分解能気象研究所非静力学メソスケールモデル(MRI-NHM)が予想した降雨の精度検証を1996年梅雨期について行った。精度検証結果については気象庁の10km分解能静力学領域スペクトルモデル(RSM)の結果とも比較した。MRI-NHMには雲水、雨水を直接予報する暖かい雨タイプの降水スキームを用い、RSMでは2つの対流のパラメタリゼーションスキームを大規模凝結とともに用いている。MRI-NHMは1時間降水量1mm程度の小雨を僅かに過小に予測した一方、降水強度の最大値20mm以上の強雨の面積を相当に過大評価した。統計的なスコアを取ったところ、1時間降水量10mm以上の強雨についてはMRI-NHMの方がRSMより正確に予測していた。ただし、5mm以下の雨についてはMRI-NHMはRSM程成績は良くなかった。MRI-NHMは1時間降水量20mm以上の雨のほぼ半数を予想することができた。降水は九州北部より南部の方が精度良く予想されていた。このことは九州北部と南部とで強雨形成のメカニズムが異なるためだと考えられる。
著者
瀬古 弘 加藤 輝之 斉藤 和雄 吉崎 正憲 楠 研一 真木 雅之 「つくば域降雨観測実験」グループ
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.929-948, 1999-08-25
被引用文献数
7

台風9426号(Orchid)が日本列島に接近した1994年9月29日に、関東平野にほぼ停滞するバンド状降雨帯が見られ10時間以上持続した。つくばにおける特別高層観測、2台のドップラーレーダーおよびルーチン観測のデータを用いて、この降雨帯を解析した。この降雨帯はニンジン形の雲域を持ち、バックビルディング型の特徴を持っていた。南北に延びた降雨帝はマルチセル型の構造をしていて、その中のセルは降雨帯の南端で繰り返し発生し, 西側に広がりながら北に移動した。水平分解能2kmの気象研究所非静水圧メソスケールモデルを用いて、数値実験を行った。メソ前線は実際の位置の約100km南東に形成されたが、バックビルディング型の特徴を持つニンジン型の形状のほぼ停滞する降雨帯が再現され、3時間以上持続した。セルが北西に移動すると共に降雨帯の東側で降水が強化されて、ニンジン形が形成されていた。降雨帯の形成メカニズムを調べるためにまわりの場と雲物理過程を変えて感度実験を行った。その結果、中層風の風上側からの高相当温位の気塊の供給と風の鉛直シアが重要であることがわかった。