- 著者
-
永坂 鉄夫
- 出版者
- 日本生気象学会
- 雑誌
- 日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.1, pp.3-13, 2000 (Released:2002-02-28)
- 参考文献数
- 67
- 被引用文献数
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動物には高体温時に体温とは独立して脳を冷却する機構がある.この選択的脳冷却(SBC)はヒトにも存在し,鳥類,哺乳類に普遍的な機構である.ヒトは多くの動物にみられるような頚動脈網をもたず,頭蓋内で強力な対向流熱交換が期待できないとする意見もあるが,ヒトでは導出(眼角—眼)静脈の血流の増加と分時換気量の増加がこのSBCに大きく貢献する.ヒトでSBC機構が有効に作動するためには,導出静脈や眼角静脈を経て頭蓋内に還流する静脈血が,頭部の汗の蒸発と上気道粘膜での水の蒸発により十分冷却される必要がある.このような事実を十分理解し応用することにより,極端な高温環境下での作業,スポーツ,あるいは温熱療法時のヒトの健康と快適性,パーフォーマンスの向上を図りうるが,その具体策につき提言した.ヒトの脳温測定の目的で用いる鼓膜温の有用性についても考察した.