著者
永岡 篤 森 大毅 有本 泰子
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.73, no.11, pp.682-693, 2017

<p>感情音声コーパスに付与されている感情ラベルには,次元で記述されたものとカテゴリで記述されたものがあり,これらには互換性がない。複数コーパスを統合し大規模なコーパスとして扱うためには感情ラベルの共通化が必要であるが,人手による感情ラベル付与はコストが高い。音声からの感情認識の技術を利用すれば異種感情ラベルの自動付与が可能だが,その推定精度は十分とは言えない。本論文では,音声から得られる特徴量に加え,それぞれの感情音声コーパスにもともと付与されている感情ラベルをも推定器への入力として利用した異種感情ラベル推定手法を提案する。まず,感情カテゴリラベルを持つコーパスOGVCに対する感情次元ラベルの推定実験を行った。モデル学習用のコーパスに付与されている感情ラベルとしては,次元とカテゴリの両方が利用できる場合,及び次元だけが利用できる場合についてそれぞれ検討した。次に,感情次元ラベルを持つコーパスUUDBに対する感情カテゴリラベルの推定実験を同様に実施した。実験の結果,対象コーパスにもともと付与されている感情ラベルの併用により,異種感情ラベルの推定精度を向上できることが示された。特に,UUDBに対する感情カテゴリラベルの推定においては,モデル学習用のコーパスが感情次元ラベルを持たず,推定された感情次元ラベルで代用した場合でも,推定精度を改善できることが分かった。</p>