著者
加藤 央之 永野 良紀 田中 誠二
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.95-114, 2013-03-01 (Released:2017-12-02)
参考文献数
33
被引用文献数
1 3

将来の地域気候予測に用いる統計ダウンスケーリング手法に利用するため,東アジア地域における海面気圧分布パターンの客観分類を行い,寒候期を対象として,平均分布型,出現の卓越季節,従来手法による分類結果などを参照し,得られた各パターンの特徴を明らかにした.本手法は,分布パターンを主成分スコアという客観指標に置き換え,主成分空間内でクラスター分析によりこれを分類するものである.対象領域における30年間(1979~2008年: 10958日)の午前9時の海面気圧分布パターン分類を行った結果,寒候期のパターンは強い冬型(3グループ),弱い冬型(3),低気圧型(1),移動性高気圧型(2),移動性高気圧・低気圧型(2),その他(1)の12のグループに分類された.各グループの継続性,グループ間の移行特性(特定のグループから特定のグループへの移行しやすさ,しにくさ)について,確率を用いて定量的に明らかにした.
著者
永野 良紀 加藤 央之 山川 修治
出版者
養賢堂
雑誌
農業気象 (ISSN:00218588)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.129-139, 2009-06-10
参考文献数
35
被引用文献数
2

8月のチベット高気圧の東アジアへの張り出しの年々変動を解析した.また,チベット高気圧の変動が北日本への天候の影響を統計的に解析した.北日本上空における100 hPa高度場は,1991年以前は正偏差であったが,1992年以降では負偏差が続いており,1991年を境に有意な不連続が認められた.8月のチベット高気圧は,1991年を境に北日本への張り出しが弱まっていることが統計的に確認された.気圧分類型を用いて日本付近における前線の出現日数を調べた結果,1992年以降の平均出現日数が1991年以前の平均出現日数の2.5倍になり,統計的にも有意な差が認められた.また,北海道における気温も1992年以降は負偏差が続いており,有意な不連続が認められた.日本付近における前線出現日数の増加や北海道の気温の低下はチベット高気圧の盛衰と連動していた.代表的な事例の解析も試みたが,チベット高気圧の張り出しが強かった1982年,1990年は北海道でも気温が高く前線出現は少なかった.対照的にチベット高気圧の張り出しが弱かった1993年や2002年は北海道では気温が低く,前線も平年より多く出現していた.