著者
石黒 直隆 富岡 直人 本郷 一美 松井 章 上原 静 江上 幹幸 山岸 則夫
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、縄文時代から中世にかけての遺跡より拙土する古代犬とオオカミの骨に残存するミトコンドリアDNA(mtDNA)を分離・増幅して古代犬を遺伝子面で復原し、日本在来犬の遺伝的系統を明かにすることを目的とした。1)縄文時代(20遺跡)、弥生時代(2遺跡)、古墳時代(1遺跡)、中世(1遺跡)、オホーヅク分化期(6遺跡)より出土した古代犬の骨よりmtDNA198bpを分離し、日本在来犬の遺伝的系統を解析した。北海道から関東にかけての遺跡では、ハプロタイプM5が多いのにくらべ、西日本から東北地方にかけてハプロタイプM2が多く、縄文時代からかなり複雑な遺伝子分布をしていることが明かとなった。しかし、縄文犬と弥生犬を遺伝的に明確に区別することはできなかった。2)中国試料のDNA分析と日本在来犬との遺伝的関係:中国の3遺跡(上海馬橋、大旬子、河南花国庄)から出土した古代犬25点をDNA分析した結果、10サンプルより残存遺伝子が増幅された。系統解析の結果、クラスター3に属した現生犬のM20の1サンプルを除いて、全てが日本の古代犬に検出されたM5,M10,M11のハプロタイプであり、日本在来犬の遺伝的起源が大陸由来であることが明かとなった。3)ニホンオオカミの遺伝的復原と日本在来犬との関係:日本在来犬とニホンオオカミとの遺伝的な関係を明かにするため、ニホンオオカミのmtDNAを解析した。形態的にニホンオオカミと同定された6試料(高知県:仁淀村、熊本県産、国立科学博物館所蔵の3試料、縄文中期1試料)よりmtDNA(750bp)の増幅し系統解析した結果、ニホンオオカミは犬と大陸のオオカミの中間に位置した。