著者
店村 眞知子 江川 直人 永田 勝太郎 大城 昌平 一之瀬 大資 犬塚 博
出版者
公益財団法人 国際全人医療研究所
雑誌
全人的医療 (ISSN:13417150)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.5-14, 2014-12-25 (Released:2019-04-09)
参考文献数
10

[目的]測定者側が音楽の理論(リズム,音組織,調性,旋律の意味するもの等)を予め把握しておいて,対象者に音楽を聴取させたとき,精神生理学的にどう反応するのか,(自律神経系と脳血流)の測定を行い,結果を検討した.[対象]聖隷クリストファー大学学生10名(女性,平均年齢20歳)である.[方法]楽曲には,ベートーベンの“エリーゼのために”(4分)を用いた.楽曲の構成は3部形式(ロンド形式:A-B-A-C-A)である.この曲は,Aという主題がB(展開部)とC(展開部)を取り込みつつ循環する形式である.1回目の主題を提示部とし,2回目の主題を再現部,3回目の主題を終結部とした.楽曲聴取の前後に1分の安静期を設定した.演奏には,デジタルピアノを用いた.測定方法:演奏聴取時の脳活動の計測を行うため,近赤外分光法(near-infrared spectroscopy:NIRS)を用いた.心電図(Mem-Calc/Tarawa)を被験者に装着し,心拍変動を記録し,そのスペクトル解析をおこないHFamp,LF/HFratioを検討し,これらの生理学的反応と音楽構成要素の相関を調べた.[結果]結果には個人差があった.しかし,概して以下の傾向が認められた.主題においては最後の終結部において交感神経系が治まり,副交感神経系が優位になった.リラックスが起きていると言えた.BとCの展開部においては副交感神経系が亢進し交感神経系の活動が治まった.展開部は心地よい状態と言えよう.主題が有する音楽的成分は安堵感や調和の世界を感じさせるものと分析でき,展開部の転調が情動に与える音楽的効果は爽快感や期待感と分析できた.脳血流においてはその反応は自律神経系の変動を観た後に起こり,終結部の主題のところで脳血流の活発な活動が観られた.それは安静期に入っても活発に活動した.これは脳活動がいろいろな情報を認識し整理しながら活動するためと考えられた.[考察]音楽を聴取したときの生理的反応と楽曲を構成する要素の有する意味との相関を検討出来た.今回の測定により,楽曲の諸要素の生理的変化に与える影響は,その個人差が強かったことから被験者の楽曲に対する嗜好度や音楽の経験度が大きく影響することが窺えた.特に音楽の嗜好度の高い被験者の場合は,楽曲の構成要素と生理的な反応との間に緻密な相関が見られたが,そうでない場合は反応が曖昧であり,一定の傾向を認めることはできなかった.しかし,嗜好度の高い聴取者では,自律神経系の反応は明確であり脳梗塞血流も増加した.これは,音楽をrelaxation with alertnessを目的とした治療法として考えるとき,合目的的であると考えられた.
著者
佐仲 雅樹 安食 元 江川 直人 門馬 久美子
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.1462-1472, 2009 (Released:2012-07-17)
参考文献数
27

本稿では主として内視鏡初級者を対象に,以下の点を強調しながら,上部消化管出血に対する内視鏡止血の基本的手技を解説する.1)循環動態の評価と安定化が最優先される.初期輸液によって迅速に循環動態を安定させることが救命率向上につながる.循環動態が不安定な例では内視鏡は禁忌である.2)緊急であるからこそ,通常の検査以上に丁寧にスコープを操作する.嘔吐反射を誘発しないように過度な送気を慎む.3)適切な視野を確保することが内視鏡止血を成功させる鍵である.4)内視鏡止血が困難と判断したら,時期を逸することなくinterventional radiology(IVR)や緊急手術を選択する.
著者
櫻本 美輪子 江川 直人 門馬 久美子 石渡 淳一 田島 強 後藤 元 宮下 久夫 滝澤 登一郎
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.1023-1030_1, 1993-05-15 (Released:2011-05-09)
参考文献数
49

症例は49歳の女性.昭和62年,反復性耳下腺腫脹と咽頭部違和感にて当院耳鼻科を受診し,平成元年1月,舌根扁桃生検から肉芽腫が認められた.平成3年4月,持続性の下痢を主訴に当院内科を受診し,大腸内視鏡を施行したところ,回腸末端部に多発性びらん性小隆起病変を指摘され,精査のため入院した.この小腸病変はクローン病との鑑別に苦渋したが,最終的にはサルコイドーシスと診断された. 本疾患の小腸病変の報告例は稀であり,また,従来からクローン病との異同について議論されているが,まだ結論は得られていない.そこで,われわれは自験例を基に,過去に報告された腸管サルコイドーシスの特徴,及びクローン病との関係について,若干の検討を加えて報告する.