著者
福本 拓 藤本 久司 江成 幸 長尾 直洋
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.341-362, 2015-07-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
42
被引用文献数
1

本稿では,三重県四日市市を事例に,日本人住民の外国人受入れ意識について,地域内の住民構成や両者の接触などの要因に加え,ブラジル人の集住する郊外空間の変容との関連を明らかにするために,新たに集合的消費の観点を加味した分析を行った.これらの要因を比較検討する意味で,住居種別(一戸建て・UR住宅・県営住宅)間の差異に着目して検討した結果,外国人増加への認識や受入れの方向性について住宅種別間の差異は見出せなかった.しかし,ブラジル人に関連して問題視される具体的内容をみると,UR・県営では日常生活に関わる項目が中心であった一方,一戸建てでは過去の良好なコミュニティ像との対比から,特に教育環境の変化に焦点が当てられていた.これらの結果から,ブラジル人の存在が問題化される背景には,日常生活上の軋轢だけでなく,再生産される労働力の質に関わる,郊外空間における集合的消費の変質があることを指摘した.