著者
鍋倉 淳一 江藤 圭
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.135, no.3, pp.104-108, 2010 (Released:2010-03-14)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

従来のイメージング技術では生きた動物の内部で起きている現象をサブミクロンの解像度でとらえることは困難であった.2光子顕微鏡はこのような生体現象を捉えることができる強力なツールとして注目を集めている.そこで,本稿では2光子顕微鏡の動作原理,特徴と,この顕微鏡を用いたin vivoイメージング応用例について紹介する.2光子顕微鏡の動作原理である2光子励起過程は対物レンズの焦点でのみ起きるため,また,近赤外光を用いるため,低侵襲性で組織深部の構造物を観察することができる.2光子顕微鏡はこのような特殊な励起過程を誘導するために必要なフェムト秒パルスレーザーや外部光路を有している.また,大脳皮質の構造物のin vivoイメージングを行うためには動物に対し,観察窓の形成手術(頭蓋骨を薄く削るthin skull法,または頭蓋骨を取り除くcranial window法)を行う必要がある.それぞれの手術法には長所と短所があるため,目的によって手術法を使い分ける必要がある.観察窓を作成した動物に2光子顕微鏡を適用し,神経細胞やグリア細胞のin vivo形態イメージングや,カルシウムイメージングを用いた機能イメージングなどを紹介する.
著者
鍋倉 淳一 住本 英樹 渡部 美穂 江藤 圭 金 善光
出版者
生理学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

中枢神経における長期シナプス再編とその制御機構について生体イメージングを主な手法として検討をおこなった結果、障害神経細胞において、ミクログリアは直接の接触により、過剰興奮による細胞障害死を抑制していること。幼若期においてミクログリアは直接接触によりシナプス形成に寄与していることが判明した。慢性疼痛モデル動物を用いて検討した結果、大脳皮質においては長期固定シナプスと可変シナプスが存在し、痛覚入力持続などの環境が変化する場合、可変シナプスがより高率に再編されることが判明した。グリア細胞は発達期や脳障害後の回復期など脳機能が大きく変化する時期の神経回路の変化に重要な役割を持っていることが判明した。