著者
中村 壽志 渡部 美穂 田中 一秀
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P3093-A3P3093, 2009

【目的】パフォーマンスに対する評価は結果のみで判断することが多い.しかし,パフォーマンスの向上には結果だけではなく,結果をふまえた過程に目を向けることが重要である.メタ認知的言語化は自分が体感したことを振り返り言語表出する行為のことで,過程に目を向けるツールとして有効な方法とされている.今回,メタ認知的言語化がパフォーマンスに与える影響について検証する.<BR><BR>【方法】偏光眼鏡をかけた経験がない無作為に選んだ20名を対象とする.メタ認知的言語化群(以下A群)は男性5名,女性5名(21.9±1.91歳).非言語化群(以下B 群)は男性5名,女性5名(21.9±2.60歳)とする.運動課題において,視野を右に10°偏移させる偏光眼鏡をかけ,半径60cmの扇形のテーブルの外縁にある目標点(正中,右,左)に向かいリーチ動作を行う.利き手の示指でランダムに指示される目標点をテーブルの下から指差し,指し示したら手を元の位置へ戻す.A群は課題試行中にメタ認知的言語化を行う.また,実験前日はメタ認知的言語化の練習をジェンガにて行う.手順は,Prism adaptationの先行研究を参考に,適応試行を100回,効果保持試行を60回行う.数値は,目標点と示指の爪までの距離を0.5cm刻みで誤差を測定した.尚,この研究について説明し,その承諾を得たもののみを実施した.<BR><BR>【結果】適応試行では,A群はB群より試行後半に誤差が低値にある傾向がみられた.効果持続試行では,A群はB群より誤差が持続していく傾向がみられた.マン-ホイットニーのU検定より,適応試行,効果保持試行ともにA,B群に有意差が認められる.(p<0.05)<BR><BR>【考察】今回,Prism adaptationを基盤にメタ認知的言語化が運動学習に与える影響を検証した.適応試行では,環境変化における運動課題への適応の速さをみている.つまり,メタ認知的言語化をすることで,エラーに意識を向けることができ,より早く修正することが可能となったと考える.効果保持試行は,偏光眼鏡をはずすことで,元の環境に再適応する経過である.研究結果では,誤差の修正に時間を要したことから,メタ認知的言語化には,運動学習をより強固にし,さらに環境が変化しても不変的なパフォーマンスを発揮する可能性があると考えられる.メタ認知的言語化はスポーツ領域において使用されることが多いが,医療において学習を促進する方略として考えられるのではないだろうか.今後の理学療法治療においてどのような形で導入できるか,臨床研究を踏まえて今後のテーマとしていきたい.<BR><BR>【まとめ】メタ認知的言語化が運動学習を促進することが理解でき,理学療法における治療への導入を次回の研究課題としていきたい.
著者
加藤 沙織 渡部 美穂 武田 輝美 高橋 俊章
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0888, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】リーチングは,発達過程の様々な場面で頻繁に行われ,姿勢制御の能力を向上させ,奥行き知覚の発達などに寄与する。しかし,脳性麻痺痙直型両麻痺児はスムーズな重心移動が困難であり,代償運動や特異的な運動パターンを用いることが多い。本研究の目的は,痙直型両麻痺児者のリーチング動作時の各身体部位の運動角度と移動距離および重心移動を定量化し代償運動を明らかにすること,リーチング促通の介入ポイントを検討することである。【方法】脳性麻痺痙直型両麻痺児者(年齢15.6±6.3歳,両麻痺群)7名,健常成人(対照群)8名を対象に座位前方へ利き手側のリーチングを行った。両麻痺群は自力,他動的骨盤前傾操作,体幹伸展操作の3条件,対照群は自力の1条件で行った。ハイブリッド高速度カメラを使用して,頭部,C7,Th7,S1,ASIS,大転子,外側裂隙,肩峰,尺骨茎状突起の移動距離・速度,頸部・体幹・股関節の運動角度を算出した。また,重心動揺計を用いて軌跡長・単位軌跡長を計測した。統計処理は,3条件のパラメータの比較には一元配置分散分析及びTuker法,両麻痺群と対照群の比較は対応のないt検定,尺骨茎状突起と各身体部位の移動距離との関係をPearsonの相関係数を用いて検討した。統計ソフトはSPSSver.22を用い,有意水準は5%とした。【結果】自力リーチングにおいて,両麻痺群は対照群より,移動距離は頭部,C7及び尺骨茎状突起が有意に長く,ASISは有意に短かい(p<0.05)。また,股関節屈曲角度は有意に小さく,上・下部体幹屈曲角度は有意に大きかった(p<0.05)。また対照群は尺骨茎状突起と外側裂隙,頭部,Th7,C7の移動距離に高い相関(それぞれr=.51,r=.64,r=.69,r=.76,p<0.01)があり,両麻痺群は頭部にのみ高い相関があった(r=.78,p<0.05)。骨盤操作の場合,体幹操作より各部位の速度の増加,軌跡長や単位軌跡長が増加し,体幹伸展は小さい傾向があった。また,尺骨茎状突起と頭部,Th7,C7の移動距離に高い相関(それぞれr=.76,r=.84,r=.87,p<0.05)があった。体幹操作の場合,骨盤操作より頸部伸展角度及び上部体幹屈曲角度は減少し,軌跡長は有意に小さかった(p<0.05)。尺骨茎状突起とASIS,頭部,S1,Th7,C7の移動距離に高い相関(それぞれr=.84,r=.84,r=.85,p<0.05。r=.91,r=.94,p<0.01)があった。【結論】下部体幹や骨盤周囲の筋緊張が低下している両麻痺児のリーチングの代償運動は,骨盤の運動性低下のため,肩甲帯や上肢を過剰に前方に移動し,目標物を目視するために頸部は過剰に伸展する傾向がある。よりスムーズな重心移動や遠い場所へのリーチングを促通するための理学療法ポイントは,リーチングと骨盤運動を連動させるための体幹操作が有効であり,少ない重心移動でリーチングが可能になることがわかった。
著者
渡部 美穂
出版者
浜松医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロンの制御機構におけるGABA興奮性入力の役割を明らかにするために、独自に作成したGnRHニューロンへのGABA作用を興奮性から抑制性に操作できる遺伝子改変マウスを用いて調べた。このマウスでは性周期が乱れ発情期が続き、妊娠が認められず、卵巣には多数の小さな卵胞がみられたことから、生殖機能にはGABA興奮性入力が重要な役割を持つことが明らかになった。
著者
鍋倉 淳一 住本 英樹 渡部 美穂 江藤 圭 金 善光
出版者
生理学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

中枢神経における長期シナプス再編とその制御機構について生体イメージングを主な手法として検討をおこなった結果、障害神経細胞において、ミクログリアは直接の接触により、過剰興奮による細胞障害死を抑制していること。幼若期においてミクログリアは直接接触によりシナプス形成に寄与していることが判明した。慢性疼痛モデル動物を用いて検討した結果、大脳皮質においては長期固定シナプスと可変シナプスが存在し、痛覚入力持続などの環境が変化する場合、可変シナプスがより高率に再編されることが判明した。グリア細胞は発達期や脳障害後の回復期など脳機能が大きく変化する時期の神経回路の変化に重要な役割を持っていることが判明した。