著者
小野 昌彦 江角 周子 佐藤 亮太朗
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.307-318, 2021-09-30 (Released:2022-01-12)
参考文献数
15

本研究では選択性緘黙の中学2年女子に学校場面における発話行動形成のため、包括的支援アプローチを適用し、その効果を検討した。彼女の選択性緘黙は発現前条件が学校場面で誘発されるストレス反応、維持条件が彼女の代替発言をする生徒および筆談をする教員の存在と考えられた。そこで、彼女の学校場面でのストレス反応低減と発話行動形成を目的に、不安階層表の段階を唾液アミラーゼ評価で確認し、その段階のストレス反応の程度に合わせて刺激フェィディング法、系統的脱感作法、現実的脱感作法、主張反応法を併用適用した。また、彼女の選択性緘黙維持条件除去の目的で学校介入をした。専門支援機関でのセッション4回、学校訪問指導4回の10カ月の支援の結果、彼女の選択性緘黙は解消し学校場面における活発な発話行動が形成され、予後も良好であった。包括的支援アプローチの選択性緘黙への有効性が示され、今後の課題として技法選択基準の明確化をあげた。
著者
江角 周子 庄司 一子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.268-280, 2016 (Released:2016-08-08)
参考文献数
25
被引用文献数
3

本研究の目的は, 中学生を対象に聴くことを学ぶ研修を実施し, 研修を通した中学生の聴く行動の変容プロセスを認知面の変化の点から明らかにすることであった。中学1年生から3年生計30名を対象に1回60分の研修を4回実施し, 全てに参加した14名を対象にインタビュー調査を行い, 行動変容プロセスについて認知面の変化に焦点をあて, M-GTAにより分析を行った。分析の結果, まず, 認知面の変化と行動変容を合わせて11概念と6カテゴリーが得られた。つぎに, 聴くことに関する行動変容プロセスを明らかにするため, 各カテゴリーと概念間の関連を検討した結果, 研修における聴いてもらう体験, 聴く体験, 観察体験のそれぞれで異なる行動変容の仮説プロセスが見出された。なかでも, 聴いてもらう体験は他の2つの体験に比べより多くの気づきが得られることが示された。さらに, 聴く行動の変容により, 更なる認知面の変化がもたらされ般化が維持されること, 他者との積極的な関わりが促進されることが示された。
著者
江角 周子 庄司 一子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.268-280, 2016
被引用文献数
3

本研究の目的は, 中学生を対象に聴くことを学ぶ研修を実施し, 研修を通した中学生の聴く行動の変容プロセスを認知面の変化の点から明らかにすることであった。中学1年生から3年生計30名を対象に1回60分の研修を4回実施し, 全てに参加した14名を対象にインタビュー調査を行い, 行動変容プロセスについて認知面の変化に焦点をあて, M-GTAにより分析を行った。分析の結果, まず, 認知面の変化と行動変容を合わせて11概念と6カテゴリーが得られた。つぎに, 聴くことに関する行動変容プロセスを明らかにするため, 各カテゴリーと概念間の関連を検討した結果, 研修における聴いてもらう体験, 聴く体験, 観察体験のそれぞれで異なる行動変容の仮説プロセスが見出された。なかでも, 聴いてもらう体験は他の2つの体験に比べより多くの気づきが得られることが示された。さらに, 聴く行動の変容により, 更なる認知面の変化がもたらされ般化が維持されること, 他者との積極的な関わりが促進されることが示された。