著者
金山 佐喜子 小野 昌彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.157-169, 2007-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究では、保健室登校をしていた12歳女児への教室登校支援について検討した。彼女の保健室登校は教室での困難な課題からの回避の機能をもち、そして彼女の回避行動は養護教諭のかかわりによって維持されてきたと分析された。個別支援計画のおもな内容は、困難な課題を克服するための目標設定行動や支援依頼行動の指導、教室登校計画と授業準備の支援、学校や家庭との連携(母親指導含む)であった。1か月にわたる支援の結果、彼女は教室に復帰した。追跡調査の結果、支援終了後も教室登校は継続していた。
著者
石川 信一 小野 昌彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.99-110, 2020-05-31 (Released:2020-10-23)
参考文献数
73

学校における行動的・情緒的問題は近年は増加の一途を辿っている。そのため、この社会的問題に対する適切な支援と予防は急務であるといえ、現在のエビデンス水準と適用可能性を鑑みると、認知行動療法が重要な役割を果たすと考えられる。教育場面における認知行動療法の現状を展望すると、不安とその関連する問題、抑うつ、怒り、不登校に対する指導・助言や予防的取り組みに関する研究が積み重ねられてきた。以上を踏まえ、認知行動療法を教育場面で効果的に適用する際には、科学者、教育者、支援者、創造者としての姿勢が求められることが議論された。そして、認知行動療法は、個別の指導・助言、集団に対する介入、「チーム学校」としてのアプローチが可能であることが示された。今後の課題としてエビデンスの更なる蓄積、教育・研修方法の構築と普及、組織的・大局的な活動の必要性が述べられた。
著者
小野 昌彦 江角 周子 佐藤 亮太朗
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.307-318, 2021-09-30 (Released:2022-01-12)
参考文献数
15

本研究では選択性緘黙の中学2年女子に学校場面における発話行動形成のため、包括的支援アプローチを適用し、その効果を検討した。彼女の選択性緘黙は発現前条件が学校場面で誘発されるストレス反応、維持条件が彼女の代替発言をする生徒および筆談をする教員の存在と考えられた。そこで、彼女の学校場面でのストレス反応低減と発話行動形成を目的に、不安階層表の段階を唾液アミラーゼ評価で確認し、その段階のストレス反応の程度に合わせて刺激フェィディング法、系統的脱感作法、現実的脱感作法、主張反応法を併用適用した。また、彼女の選択性緘黙維持条件除去の目的で学校介入をした。専門支援機関でのセッション4回、学校訪問指導4回の10カ月の支援の結果、彼女の選択性緘黙は解消し学校場面における活発な発話行動が形成され、予後も良好であった。包括的支援アプローチの選択性緘黙への有効性が示され、今後の課題として技法選択基準の明確化をあげた。
著者
小野 昌彦 小林 重雄
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.355-362, 2002
被引用文献数
3

中学3年生女子不登校S(14歳)へ再登校行動の形成・維持を目的として介入を実施した。Sは、不登校発現前の不登校に至る要因として主張的スキルの欠如が考えられた。Sの対人関係困難場面からの回避行動へ正の強化刺激が随伴してしまったことにより、不登校が誘発されたと考えられた。Sへの再登校のための介入として、学習指導、体力訓練、登校行動の再形成、再登校行動維持のために主張的スキル訓練を実施した。また、家庭指導、学級担任への助言も実施した。6期(7か月間)、51セッションの介入の結果、再登校した。予後も良好であった。Sおよび家庭への総合的アプローチの有効性が示唆された。本研究において登校行動を維持する目的で体力、学力、再登校状況に関する情報を収集する必要性が示唆された。
著者
小野 昌彦
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.61-71, 2003-03-31 (Released:2019-04-06)

水泳授業参加困難を契機とした小学6年生女子不登校Y(11歳)へ、再登校行動の形成および維持を目的として、専門機関の立場からおもに家庭、学校へ行動論的支援を実施した。その有効性と問題点を検討した。本事例は、不登校発現前の要因として、水泳のスキル不足が考えられた。そして、Yが水泳不参加の訴えをした時点で、親が学校を休ませる対応をしたことにより、不登校が誘発されたと考えられた。Yが家庭に滞留する行動は、祖母による世話やきといった強化刺激で維持されていると分析された。再登校行動形成のための行動論的支援は、Yへの水泳スキルの形成を目的として行われた。専門家からは、家族による話し合いの実施、家族によるYへの水泳指導、Yの訴えに対する親の対応の指導、担任のYの水泳授業参加援助への助言を実施した。援助期間は2か月間であった。面接4回、学校訪問1回、家族による水泳指導2回、担任による家庭訪問2回が実施された。結果、Yは再登校を開始し1年間登校行動が維持した。特定学校場面の回避による不登校事例の場合、その特定学校場面に関する綿密な行動アセスメントの必要性が示唆された。
著者
小野 昌彦 小林 重雄
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.37-45, 1999-09-30

小学5年生女子不登校(10歳)に対して、再登校行動の形成を目的として介入を実施した。そして、その有効性と問題点の検討を行った。 本症例は、不登校発症前の要因として、社会的スキル、特に書三張的スキルの欠如が考えられた。主養育者が祖母から母親に交替した後、彼女の対人関係困難場面からの回避行動を母親が強化的対応をしてしまったことにより、不登校が誘発されたと考えられた。彼女が家庭に滞留する行動が、母親からの世話やき、電話掛けといった強化刺激が提示され、維持されていると分析された。 彼女への介入として、かかわりの形成、社会的スキル訓練、体力訓練、学習指導、単独通室訓練、親指導が導入された。2期(2ヶ月間)、9セッションの介入の結果、再登校が開始した。予後も良好であった。 かかわり形成が困難な事例の場合、行動アセスメント項目として、友人関係における正の要因が何であるか、欠如しているか、習得の可能性や手順はどうかが問題となる。
著者
小野 昌彦
出版者
明治学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

不登校経験者が入学者の8割を占めるA定時制高校入学者に対して、2年間、入学時、年度末に学力テストを実施した結果、入学者の学力は、算数は小4、語彙は中1の段階の生徒が最も多い事が明らかになった。また、不登校経験高校生及び大学生を対象に個別支援を実施した結果、的確なアセスメントを実施すれば、学力補充は可能であることが示された。不登校経験者の学力実態を実証的に明らかにした日本で初めての研究といえる。