- 著者
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小野 昌彦
- 出版者
- 一般社団法人 日本認知・行動療法学会
- 雑誌
- 行動療法研究 (ISSN:09106529)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.1, pp.61-71, 2003-03-31 (Released:2019-04-06)
水泳授業参加困難を契機とした小学6年生女子不登校Y(11歳)へ、再登校行動の形成および維持を目的として、専門機関の立場からおもに家庭、学校へ行動論的支援を実施した。その有効性と問題点を検討した。本事例は、不登校発現前の要因として、水泳のスキル不足が考えられた。そして、Yが水泳不参加の訴えをした時点で、親が学校を休ませる対応をしたことにより、不登校が誘発されたと考えられた。Yが家庭に滞留する行動は、祖母による世話やきといった強化刺激で維持されていると分析された。再登校行動形成のための行動論的支援は、Yへの水泳スキルの形成を目的として行われた。専門家からは、家族による話し合いの実施、家族によるYへの水泳指導、Yの訴えに対する親の対応の指導、担任のYの水泳授業参加援助への助言を実施した。援助期間は2か月間であった。面接4回、学校訪問1回、家族による水泳指導2回、担任による家庭訪問2回が実施された。結果、Yは再登校を開始し1年間登校行動が維持した。特定学校場面の回避による不登校事例の場合、その特定学校場面に関する綿密な行動アセスメントの必要性が示唆された。