著者
後藤 千寿 梅田 道 大澤 友裕 甲田 明英 池上 遼 勝野 隼人 大野 佑城 安田 昌宏 水井 貴詞
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

【目的】ボノプラザンは、カリウムイオン競合型アシッドブロッカーとも呼ばれる、新たな作用機序を有する新しいカテゴリーのプロトンポンプ阻害薬(PPI)である。既存のPPIは、低マグネシウム血症を引き起こすことが報告されているが、ボノプラザンについては報告されていない。今回、ボノプラザンの投与が、既存のPPIと同様に低マグネシウム血症を引き起こすリスク因子であるかについて検討を行ったので報告する。【方法】2016年11月~2018年10月に、岐阜市民病院において血清マグネシウム(S-Mg)の測定がされた患者を対象に、遡及的に調査を行った。調査期間内におけるS-Mgの最低値が施設基準下限値(1.8mg/dL)未満を「未満群」、以上を「以上群」とし、2群間の差の検定にはFisher’s exact testを使用した。さらに、単変量解析においてp<0.2であった因子を独立変数とし、多重ロジスティック回帰分析を行った。なお、いずれもp<0.05の場合を有意差ありと判定した。【結果】対象患者は384名(男性:207名、女性177名)、平均年齢(±SD)は69.4(±17.0)歳であった。多変量解析の結果、「ボノプラザン投与」(オッズ比(OR):2.26、95%信頼区間(CI):1.17 – 4.37、p=0.02)および「マグネシウム製剤投与」(OR:0.42、CI:0.18 – 0.97、p=0.04)において有意差が見られた。【考察】既存のPPIと同様に、ボノプラザンの投与がS-Mg値低下のリスク因子である可能性が示唆された。そのため、新規PPIであるボノプラザンを投与されている患者においても、S-Mg値の低下に注意する必要があると考えられた。