著者
池住 洋平
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.1385-1390, 2018-07-10 (Released:2019-07-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

近年,胎児期及び出生後の生活環境が成人期における生活習慣病発症に関与するというdevelopmental origins of health and disease(DOHaD)仮説が提唱され,多くの疫学研究,動物実験等から,その妥当性が認識されるようになった.我々は,腎生検にて巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis:FSGS)と診断された患児の多くが低出生体重であることを見出し,さらに,これらの患児では,腎における糸球体肥大や密度の減少等がみられることを報告した.このような低出生体重児に生じる臓器障害機序は,腎疾患にとどまらず,さまざまな成人疾患の病態に関わると考えられ,低出生体重を成人期疾患の発症を予測する1つのパラメータとしてとらえ,低出生体重児を生じる要因の改善とともに,生活環境の改善を通じた予防策を講じる必要があると考えられる.
著者
唐澤 環 池住 洋平 鈴木 俊明 内山 聖
出版者
The Japanese Society for Pediatric Nephrology
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 = Japanese journal of pediatric nephrology (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.13-18, 2009-04-15

わが国では小児IgA腎症の治療指針が示され,比較的重症例に対してステロイド薬,免疫抑制薬を含むカクテル療法が行われ良好な成果が得られている。しかし,治療による副作用などマイナス面については十分に検討されていない。今回私たちは,ステロイド治療が成長に与える影響を後方視的に検討した。<br> 対象はステロイド治療を行った小児IgA腎症48例 (治療開始時平均11歳10ヵ月) で,2年間の治療前後で身長,体重および骨年齢を比較した。<br> 身長SDスコアは平均0.229から-0.116 (p<0.05) へと有意に低下した。一方,肥満度は平均-0.38から5.94 (p<0.05) へと有意な増加を認め,骨塩量SDスコアは平均-0.357から-0.853と有意差はないものの低下傾向を認めた。<br> 小児IgA腎症のステロイド治療により成長障害を高頻度に来す可能性があり,今後はこうした副作用を考慮した治療法の質的向上が必要と考えられた。