著者
川島 朋也 澁澤 柊花 林 正道 池田 尊司 田中 悟志
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.91-101, 2023-02-28 (Released:2023-03-31)
参考文献数
49

電気刺激や磁気刺激などの脳刺激技術を用いて脳活動と認知機能の因果関係を調べる試みが続けられている.本稿では,さまざまな脳刺激研究を概観することで認知心理学研究の展開を考えることを試みた.池田はtDCS(経頭蓋直流電気刺激)とワーキングメモリ変調の可能性について,澁澤はtACS(経頭蓋交流電気刺激)と知覚変調の可能性について,林はTMS(経頭蓋磁気刺激)と時間知覚変調の可能性について紹介する.これらの話題提供の後,田中による指定討論を受け,脳刺激研究の新たな視点と認知心理学における今後の展開について議論する.
著者
苧阪 直行 池田 尊司 Naoyuki Osaka Takashi Ikeda 京都大学大学院文学研究科 京都大学大学院文学研究科 Department of Psychology Graduate School of Letters Kyoto University Department of Psychology Graduate School of Letters Kyoto University
出版者
日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 = Journal of the Color Science Association of Japan (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.197-203, 2006-12-01
参考文献数
27

視覚的に呈示された色情報の短期的保持が言語(言語的ワーキングメモリ)に依存するのか、あるいは視覚(視覚的ワーキングメモリ)に依存するのかは、当該色が色カテゴリーの境界をクロス(跨ぐ)するかしないかで異なるというモデルを提案した。機能的磁気共鳴脳画像法(fMRI)を用いて、代表的なワーキングメモリ課題であるNバック課題を導入してモデルを検証した。色の記憶における言語と視覚のワーキングメモリの寄与について検討した結果、基本色名で定義される色カテゴリーをクロスする条件では、左半球の下前頭回や下頭頂小葉が強く活動することがわかった。左の言語半球のこれらの領域の活性化は色の名前を音韻ループで保持する言語性ワーキングメモリが働いていることを示している。一方、同じ色カテゴリー内に留まる色差の小さい色の場合は、右半球の下前頭回が強く活動すること、つまり視覚的ワーキングメモリは視空間的スケッチパッドで保持されていることが示された。記憶すべき色刺激が左の音韻ループ(言語性ワーキングメモリ)で保持されるのか、右の視空間スケッチパッド(視覚性ワーキングメモリ)で保持されるのか、その認知負荷のバランスは色カテゴリーの境界を手がかりとした認知的方略によることが明らかになった。脳は色差に応じて色をことばであるいは知覚イメージで短期保持するのである。We proposed a model that colors could be memorized either in verbal or visual working memory depending on the color category borders. Using functional magnetic resonance imaging (fMRI), the model was tested by introducing a 2-back working memory task. We investigated the involvement of verbal and visual working memory in color memory. Colors between (cross) the categories defined by basic color names strongly activated the left inferior frontal gyms (IFG) and left inferior parietal lobule (IPL) corresponding to the phonological loop as verbal working memory, while colors within the category boarder strongly activated the right IFG corresponding to the visuospatial sketchpad as visual working memory. The choice of colors to memorize might modulated the cognitive load balance between the phonological loop and the visuospatial sketchpad.