著者
池田 美桜
出版者
国際学院埼玉短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02896850)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.53-56, 2008-03

日本児童文学史において,近代に移入された諸外国の児童文学作品から受けた影響を無視することはできない。外国児童文学の受容という視点から日本の児童文学史を概観すると,それが明治期に一斉に開始されたことがわかる。未知の概念をことばで表現しようとするとき,多くの場合,そこには混乱が生じるものである。外国児童文学作品の翻訳が開始された明治期に視点を据え,「こびと」の翻訳状況を分析すると,「一寸法師」「小さき鬼」「老人」など様々な訳語が見られ,そこにある種の「混乱」が生じたことが見てとれる。この混乱こそが,外来の「こびと」が移入されたことによる既存の「こびと」像のゆらぎであると考え,本稿では日本人のもつ「こびと」像の変遷を探るべく,語誌的観点から「こびと」の意味内容を分析する方法論を探る。
著者
池田 美桜 松本 学
出版者
国際学院埼玉短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02896850)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.77-81, 2005-03

幼稚園および保育所の多くが,年間を通じてあらゆる行事を計画している。幼稚園教育要領や保育所保育指針では,幼稚園・保育所は数多くの社会的行事や伝統的行事の中から園内行事を「精選」するべきであると,その選択についての重要性を強調している。園内行事は,子ども達の生活を彩るだけでなく,心身の発達にも大きく影響する活動であることはいうまでもない。本研究では,保育現場において,園内行事に合わせて読み開かせ用の絵本が選定されることに着目し,行事絵本の在り方について,七夕行事に焦点を当てて考察した。
著者
池田 美桜
出版者
国際学院埼玉短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02896850)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.39-44, 2007-03

絵本とは文字表現と絵画的表現から成る本を指すのが一般的な通念であるが,中にはそれに当てはまらないものもある。物語中に文字の記載のない「文字なし絵本」はその-類型である。「絵が語る」「絵を読む」とは,絵本を鑑賞するひとつの方法として常套的に言われることである。文字なし絵本では「絵を読む」ことが鑑賞の中心であり,それこそが醍醐味となる。本論では「文字なし絵本」に焦点をあて,「みえないさんぽ このあしあとだれの?」と「くさむら」の2作品を介して,絵本における文字表現と絵画的表現の機能分析を試みている。また,文字なし絵本として一度出版したものを,後年になって文字を添えて改めて発表し直した田島征三の絵本「くさむら」に注目し,文字なし版と改訂版とを比較することにより,絵本における文字表現が読者の作品解釈を限定する可能性について分析している。
著者
池田 美桜
出版者
国際学院埼玉短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02896850)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.111-116, 2006-03

児童文学には,一般文学とは異なった独特の表現様式がある。本論では,児童文学の独自性を探る一歩として,作品の文体に着目している。「誰(何)に向けて書くか」「誰(何)について書くか」ではなく,「どのように書くか」という観点からの試みである。本稿はその第一歩として,児童文学特有の文体的特徴を国立国語研究所発行の「分類語彙表」を使用し,その有効性をさぐっている。「分類語彙表」では,言葉の意味にもとづいた分類が行なわれるため,単語の難易の程度は一切考慮されない。また,助詞や助動詞を分類の対象としないため,文末表現に見られる特性も考慮されない。そのため,「分類語彙表」に基づいた分析では,児童文学の特性を明らかにすることはできなかった。このことは,児童文学の文体的特性が言葉の易しさや文末表現にあることを示している。