著者
大槻 勤 関本 俊 沖 雄一 高宮 幸一 篠原 厚 末木 啓介
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

炉内に残留する放射性微粒子の挙動を推測するため、炉内に存在する放射性物質を含む様々な物質を材料として放射性微粒子が生成し成長する過程を解明することが本研究の目的である。そのため、まずは福島第一原子力発電所周辺の土壌中に存在する放射性微粒子の性状分析を行い、その元素組成等の化学的性質の調査を行った。ここでは複数の核種を含む放射性エアロゾルの成長・輸送機構の解明により炉内に残留する放射性微粒子の挙動を推測するため、土壌の観察・分析や人工放射性エアロゾルの発生実験を行った。環境中に放出された放射性微粒子の性状を調べるため、まずイメージングプレート等を用いて土壌中の微粒子探索を行った。また、核分裂生成物を含む人工放射性エアロゾルの成長・輸送の模擬実験を行った。まず、環境中に放出された放射性微粒子の性状を調べるため、イメージングプレートを用いて土壌中の微粒子探索を行い、採取されたType Bと推測される放射性微粒子に対し、SEM/EDX(Thermo Fisher Scientific社製Phenom ProX Desktop SEM)を用いた外観観察と粒子表面の元素分析を行った。粒子本体を構成する主要な元素は酸素、ケイ素、ナトリウムであり、少量のカルシウム、アルミニウム、マグネシウムなどを含むことが明らかとなった。人工放射性エアロゾルの発生実験では中性子照射したウラン試料から放出されたFPのうち、I-131,0Te-132,Ba-140(La-140)等を含んだ放射性エアロゾルが生成し、ポリカーボネート製フィルターまで輸送されて捕集されたことがわかった。この結果から、人工の放射性エアロゾルを用いて、放射性微粒子を形成する模擬実験が可能であることが示唆された。
著者
遠藤 章 沖 雄一 三浦 太一 神田 征夫 近藤 健次郎
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.210-218, 1997-03-30 (Released:2009-03-31)
参考文献数
35

現在,各国において種々の大強度高エネルギー加速器施設の建設計画が進められており,加速器を利用して得られる様々な放射線を用いた研究が,今後ますます盛んになることが予想される。大型加速器施設では,加速器の運転に伴い発生する高エネルギー放射線と,それにより生成される放射化物などに対する安全対策が重要になるが,原子炉施設とは異なる加速器施設特有の問題もある。本稿では,その一つである高エネルギー加速器施設における放射化と,それに基づく内部被ばくの問題について,加速器施設の安全管理の経験から得られた知見を中心に紹介する。