著者
佐藤 守 阿部 和博 菊永 英寿 高田 大輔 田野井 慶太朗 大槻 勤 村松 康行
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
The Horticulture Journal (ISSN:21890102)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.295-304, 2015 (Released:2015-10-22)
参考文献数
17
被引用文献数
3 19

モモ[Prunus persica(L.)Batsch]とカキ(Diospyros kaki Thunb.)を供試し,福島第一原子力発電所事故の放射性降下物により休眠期汚染された落葉果樹に対する高圧洗浄機を用いた樹皮洗浄による放射性セシウムの除染効果を検証した.夏季洗浄処理として 18 年生モモ‘あかつき’を供試し,2011 年 7 月 5 日と 27 日の 2 回にわたり,樹皮洗浄処理を実施した.休眠期洗浄処理として 2011 年 12 月 21 日に 30 年生カキ‘蜂屋’,2012 年 1 月 24 日に 7 年生モモ‘川中島白桃’を供試し,樹皮洗浄処理を加えた.高圧洗浄処理によりカキではほぼ全ての粗皮がはく離したが,モモの表皮はほとんどはく離しなかった.2011 年夏季に洗浄処理されたモモ‘あかつき’の果実中 137Cs 濃度は洗浄による有意差は認められなかった.2011 年から 2012 年の冬季に洗浄処理されたモモ‘川中島白桃’の葉および果実中 137Cs 濃度は洗浄により有意に減少した.同様にカキ‘蜂屋’でも洗浄処理翌年の葉および果実中 137Cs 濃度は洗浄により有意に減少した.これらの対照的な結果と矛盾しない現象として,汚染された樹皮洗浄液による二次汚染および樹皮からの追加的汚染の可能性について考察を加えた.
著者
大槻 勤
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、フラーレンに核反応の反跳エネルギーを利用してEC崩壊核種である^7Beをフラーレンケージ内に導入し、^7Beの半減期を精密に測定する実験を行った。^7Be@C60フラーレンは^<12>C(γ,αn)^7Beや^7Li(p, n)^7Be反応を用いて製造し、ラジオクロマトグラフ装置を用いて精製した。精製された^7Be@C60フラーレンはヘリウム冷凍機で6Kに冷却され、Ge検出器を用いてその478keVのγ線を測定した。系統的誤差をできるだけ少なくするために常温測定と冷却測定は同じ装置(Ge検出器、MCAシステム、コンピュータ等)を用いて8時間ごとにRunが切られて行われた。また、系統的誤差を少なくするために自動サンプル交換装置を作成して常温及び低温において交互に測定した。結果として常温と冷却時では2%程度の変化が観測された。MCAによる不感時間は非常に少なく半減期測定にはそれほど影響しないことも確認された。6Kの温度では52.98±0.05、常温では51.97±0.05という結果が与えられた。この値は天然に存在する40Kの半減期の観測値が統計内で一定であることから信頼できる値と考えられる。本測定の結果では化学形によるHyperfine coupling constantの違いが観測されているのかもしれない。今までの最も大きな変化の報告(^7BeF_2では53.12と報告されている)に比較するとかなり大きいものと言える。
著者
箕輪 はるか 北 和之 篠原 厚 河津 賢澄 二宮 和彦 稲井 優希 大槻 勤 木野 康志 小荒井 一真 齊藤 敬 佐藤 志彦 末木 啓介 高宮 幸一 竹内 幸生 土井 妙子 上杉 正樹 遠藤 暁 奥村 真吾 小野 貴大 小野崎 晴佳 勝見 尚也 神田 晃充 グエン タットタン 久保 謙哉 金野 俊太郎 鈴木 杏菜 鈴木 正敏 鈴木 健嗣 髙橋 賢臣 竹中 聡汰 張 子見 中井 泉 中村 駿介 南部 明弘 西山 雄大 西山 純平 福田 大輔 藤井 健悟 藤田 将史 宮澤 直希 村野井 友 森口 祐一 谷田貝 亜紀代 山守 航平 横山 明彦 吉田 剛 吉村 崇
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

【はじめに】日本地球惑星科学連合および日本放射化学会を中心とした研究グループにより、福島第一原子力発電所事故により放出された放射性物質の陸域での大規模な調査が2011年6月に実施された。事故より5年が経過した2016年、その調査結果をふまえ放射性物質の移行過程の解明および現在の汚染状況の把握を目的として本研究プロジェクトを実施した。2016年6月から9月にかけて、のべ9日間176名により、帰還困難区域を中心とする福島第一原子力発電所近傍105箇所において、空間線量率の測定および土壌の採取を行った。プロジェクトの概要については別の講演にて報告するが、本講演では福島県双葉郡大熊町・双葉町の土壌中の放射性セシウム134Csおよび137Csのインベントリ、土壌深部への移行、134Cs/137Cs濃度比、また空間線量率との相関についての評価を報告する。【試料と測定】2016年6・7月に福島県双葉郡大熊町・双葉町の帰還困難区域内で未除染の公共施設36地点から深さ5 cm表層土壌を各地点5試料ずつ採取した。試料は深さ0-2.5 cmと2.5-5 cmの二つに分割し、乾燥処理後U8容器に充填し、Ge半導体検出器を用いてγ線スペクトルを測定し、放射性物質を定量した。【結果と考察】137Csのインベントリを航空機による空間線量率の地図に重ねたプロットを図1に示す。最大濃度はインベントリで137Csが68400kBq/m2、比放射能で1180kBq/kg・dryであった。インベントリは空間線量率との明確な相関がみられた。深部土壌(深さ2.5-5.0 cm)放射能/浅部土壌(深さ0-2.5 cm)放射能の比はおおむね1以下で表層の値の高い試料が多かったが、試料ごとの差が大きかった。また原子力発電所より北北西方向に134Cs/137Cs濃度比が0.87-0.93と明確に低い値を持つ地点が存在した。
著者
笠木 治郎太 大槻 勤 結城 秀行
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

1.固体金属中でのDD核融合反応の反応率金属中での重陽子密度とDD反応の遮蔽エネルギーの相関を見るために、Re, PdCaO, PdRe等の金属薄膜中でのD(d.p)T反応の反応率を入射エネルギー10keV以下の領域で測定した。測定結果は、従来の我々の結果をほぼ再現し、重陽子の流動性が大きい程遮蔽エネルギーが大きくなる傾向を示した。2.金属中でのD+D反応から放出される陽子(p)と三重陽子(t)の収量比(p/t)の精密測定BeからAuまでの各種金属を対象にp/t収量比測定を行った。この物理量は金属中の重陽子密度とは独立に、運動学的条件でのみ規定されており、運動学からの予想と比較することにより金属中での重陽子の運動に関する情報が得られる。結果は、いずれの金属にたいしても、p/t比は単純な運動学からの予想とは大きく異なることを示した。データから重陽子の運動に関する詳細な情報を得るために、金属中での入射重陽子の減速過程を解析するモンテカルロ計算のプログラムを開発中である。3.液体Liを標的とするLi+D核融合反応液体Liを標的とした^<6.7>Li+D→α+^<4.5>He反応を測定するための真空槽を作製した。重陽子エネルギー20keVから100keV領域での反応率の予備的な測定が行われた。その際、重陽子ビーム照射中のビームスポットの温度の直接測定が可能となり、反応率の標的温度依存性に関するデータも得られた。予備的データからLiD反応の遮蔽エネルギーを求めたところ、液相での反応が固相の反応に比較して大きくなるという結果となった。このことは、(1)の標的の流動性が遮蔽エネルギーの大きさと相関を持つという結論とも矛盾しない。
著者
大槻 勤 関本 俊 沖 雄一 高宮 幸一 篠原 厚 末木 啓介
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

炉内に残留する放射性微粒子の挙動を推測するため、炉内に存在する放射性物質を含む様々な物質を材料として放射性微粒子が生成し成長する過程を解明することが本研究の目的である。そのため、まずは福島第一原子力発電所周辺の土壌中に存在する放射性微粒子の性状分析を行い、その元素組成等の化学的性質の調査を行った。ここでは複数の核種を含む放射性エアロゾルの成長・輸送機構の解明により炉内に残留する放射性微粒子の挙動を推測するため、土壌の観察・分析や人工放射性エアロゾルの発生実験を行った。環境中に放出された放射性微粒子の性状を調べるため、まずイメージングプレート等を用いて土壌中の微粒子探索を行った。また、核分裂生成物を含む人工放射性エアロゾルの成長・輸送の模擬実験を行った。まず、環境中に放出された放射性微粒子の性状を調べるため、イメージングプレートを用いて土壌中の微粒子探索を行い、採取されたType Bと推測される放射性微粒子に対し、SEM/EDX(Thermo Fisher Scientific社製Phenom ProX Desktop SEM)を用いた外観観察と粒子表面の元素分析を行った。粒子本体を構成する主要な元素は酸素、ケイ素、ナトリウムであり、少量のカルシウム、アルミニウム、マグネシウムなどを含むことが明らかとなった。人工放射性エアロゾルの発生実験では中性子照射したウラン試料から放出されたFPのうち、I-131,0Te-132,Ba-140(La-140)等を含んだ放射性エアロゾルが生成し、ポリカーボネート製フィルターまで輸送されて捕集されたことがわかった。この結果から、人工の放射性エアロゾルを用いて、放射性微粒子を形成する模擬実験が可能であることが示唆された。
著者
二宮 和彦 北 和之 篠原 厚 河津 賢澄 箕輪 はるか 藤田 将史 大槻 勤 高宮 幸一 木野 康志 小荒井 一真 齊藤 敬 佐藤 志彦 末木 啓介 竹内 幸生 土井 妙子 千村 和彦 阿部 善也 稲井 優希 岩本 康弘 上杉 正樹 遠藤 暁 大河内 博 勝見 尚也 久保 謙哉 小池 裕也 末岡 晃紀 鈴木 正敏 鈴木 健嗣 高瀬 つぎ子 高橋 賢臣 張 子見 中井 泉 長尾 誠也 森口 祐一 谷田貝 亜紀代 横山 明彦 吉田 剛 吉村 崇 渡邊 明
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

日本地球惑星科学連合および日本放射化学会を中心とした研究グループにより、福島第一原子力発電所事故により放出された放射性物質の陸域での大規模な調査が2011年6月に実施された。事故より5年が経過した2016年、その調査結果をふまえ放射性物質の移行過程の解明および現在の汚染状況の把握を目的として、福島県の帰還困難区域を中心として、100箇所で空間線量の測定と土壌の採取のフィールド実験を行い[1]、同時に計27箇所で土壌コア試料を採取した。本発表では、このコア土壌試料について分析を行ったので、その結果を報告する。土壌採取は円筒状の専用の採土器を用いて行い、ヘラを用いて採取地点で2.5 cmごとに土壌を切り取って個別にチャック付き袋に保管した。採取地点により、土壌は深さ20-30 cmのものが得られた。土壌を自然乾燥してからよく撹拌し、石や植物片を取り除いたのちにU8容器へ高さ3 cmに充填した。ゲルマニウム半導体検出器を用いてガンマ線測定し、土壌中の放射性セシウム濃度を定量した。なお、各場所で採取した試料のうち最低でも1試料は、採取地点ごとに放射性セシウム比(134Cs/137Cs)を決定するために、高統計の測定を行った。深度ごとの測定から、放射性セシウムは土壌深部への以降が見られているものの、その濃度は深度と共に指数関数的に減少していることが分かった。一方で土壌深部への以降の様子は土壌採取地点により大きく異なることが分かった。また、本研究の結果は同一地点で表層5 cmまでの土壌を採取して得た結果ともよく整合した[1]。[1] K. Ninomiya et. al., Proceedings of the 13th Workshop on Environmental Radioactivity 2017-6 (2017) 31-34.
著者
北 和之 篠原 厚 河津 賢澄 二宮 和彦 稲井 優希 箕輪 はるか 大槻 勤 木野 康志 小荒井 一真 斎藤 敬 佐藤 志彦 末木 啓介 高宮 幸一 竹内 幸生 土井 妙子 阿部 善也 岩本 康弘 上杉 正樹 遠藤 暁 大河内 博 勝見 尚也 神田 晃充 久保 謙哉 小池 裕也 末岡 晃紀 鈴木 杏菜 鈴木 正敏 鈴木 健嗣 高瀬 つぎ子 高橋 賢臣 張 子見 中井 泉 長尾 誠也 南部 明弘 藤田 将史 森口 祐一 谷田貝 亜紀代 横山 明彦 吉田 剛 吉村 崇 渡邊 明
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

【研究背景】 2011年3月に起こった、東京電力福島第一原子力発電所の事故により、福島県を中心とする陸域に大規模な放射能汚染が起こった。事故後の2011年6月には、日本地球惑星科学連合および日本放射化学会を中心とした有志の研究グループが、汚染状況の把握のための土壌採取のフィールド実験を実施した。これにより初期の汚染状況が明らかとなったが、航空機サーベイ等による汚染状況の把握は継続して行われているものの、実際に土壌を採取して汚染状況の詳細を把握する大規模な調査はそれ以降行われていない。事故から5年以上が経過し、土壌に沈着した放射性核種(主に放射性セシウム:134Csおよび137Cs)は環境中でその化学形態等を変化させ、土壌の深部への浸透や流出により、初期とは異なる分布状況に変化していることが予想される。帰還困難区域の除染作業が開始されようという状況で、土壌の放射性核種の汚染状況を把握するのはきわめて重要である。そこで本研究では、福島県内の帰還困難区域を中心として土壌採取のフィールド実験を行い、その分析により現在の汚染状況の把握することを目的に実施した。【調査概要】 本研究プロジェクトは、2016年6月から9月にかけての9日間、のべ176名で実施した。福島県内の帰還困難区域を中心として、公共施設等を選定したうえで、各自治体との情報交換を行い、除染が行われていない地点全105か所を土壌採取場所として選択した。まずはNaIシンチレーターもしくは電離箱を用いて地面から1 mおよび5 cmの空間線量の測定を行い、専用の採土器を用いて表層より5 cmの土壌を採取した。試料採取場所におけるばらつきを評価するために、1地点ごとに5試料の採取を実施し、5年間の環境中での放射性核種の移動状況を評価するために、土壌は表層部の0.0-2.5 cmと、深部の2.5-5.0 cmに分けて採取した。また放射性核種の移行過程をより詳しく調べるために、4地点につき1地点程度、深さ30 cmのコア試料の採取も行った。本講演では、この調査について概要を説明し、事故直後と5年後の比較などいくつかの初期結果について簡単に紹介する。より詳細な結果については、別の講演にて報告が行われる。
著者
大槻 勤 菊永 英寿
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

軌道電子捕獲崩壊[EC崩壊]は,核位置に存在する軌道電子を核内核子に取り込んで崩壊する現象で,その確率は核位置での電子密度に比例する.本研究の目的は加速器による量子ビーム(陽子や電子)を用いてBe-7を製造し,温度・化学形・結晶形等の因子を変えて,半減期を大きく変化させることである.Be-7@C60の温度変化(室温と5K)で半減期変化をみる実験をおこなった.その結果,室温のベリリウム金属中Be-7と5Kに冷却されたC60 内のBe-7の半減期を比較すると1.5%以上も短くなることを見出した.C60,C70を特殊な環境下でのBe-7の半減期測定を行い,大きな半減期変化を実現させるに至った.
著者
佐藤 守 阿部 和博 菊永 英寿 高田 大輔 田野井 慶太朗 大槻 勤 村松 康行
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
The Horticulture Journal (ISSN:21890102)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.295-304, 2015
被引用文献数
19

モモ[<i>Prunus persica</i>(L.)Batsch]とカキ(<i>Diospyros kaki</i> Thunb.)を供試し,福島第一原子力発電所事故の放射性降下物により休眠期汚染された落葉果樹に対する高圧洗浄機を用いた樹皮洗浄による放射性セシウムの除染効果を検証した.夏季洗浄処理として 18 年生モモ'あかつき'を供試し,2011 年 7 月 5 日と 27 日の 2 回にわたり,樹皮洗浄処理を実施した.休眠期洗浄処理として 2011 年 12 月 21 日に 30 年生カキ'蜂屋',2012 年 1 月 24 日に 7 年生モモ'川中島白桃'を供試し,樹皮洗浄処理を加えた.高圧洗浄処理によりカキではほぼ全ての粗皮がはく離したが,モモの表皮はほとんどはく離しなかった.2011 年夏季に洗浄処理されたモモ'あかつき'の果実中 <sup>137</sup>Cs 濃度は洗浄による有意差は認められなかった.2011 年から 2012 年の冬季に洗浄処理されたモモ'川中島白桃'の葉および果実中 <sup>137</sup>Cs 濃度は洗浄により有意に減少した.同様にカキ'蜂屋'でも洗浄処理翌年の葉および果実中 <sup>137</sup>Cs 濃度は洗浄により有意に減少した.これらの対照的な結果と矛盾しない現象として,汚染された樹皮洗浄液による二次汚染および樹皮からの追加的汚染の可能性について考察を加えた.
著者
大槻 勤
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.551-554, 2005-07-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
17

β崩壊の一つの形式である軌道電子捕獲崩壊[Electron Capture (EC)崩壊]核種の半減期は物理的・化学的環境をパラメータ(化学形, 圧力, 温度等の関数)としてどのように変化するか?これはSegreらが1947年に提唱した古くからの問題である.しかし, 環境の変化が半減期に最も影響しやすいと予想されるEC崩壊核種7Beでも, わずかな半減期の変化(0.15%程度)の報告がなされているにすぎなかった.特殊な内部環境を持つとされるフラーレン(C60)に7Beを内包させた試料と, 金属ベリリウム(Be metal)中に7Beをドープした試料を用いて半減期の比較測定を行った.7Beの半減期はBe metal中よりもC60中の方が0.83%程度短くなることが分かった.本稿では実験概要と結果を考察を含めて紹介する.
著者
高瀬 つぎ子 高貝 慶隆 内田 守譜 難波 謙二 大槻 勤 村松 康行
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.281-290, 2013 (Released:2013-05-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1

福島第一原子力発電所の事故は,福島県東部の広範な地域に,放射性セシウムによる環境汚染をもたらした。本研究では,汚染された餌を摂取したウシの血液中と内臓組織中の137Cs濃度を測定し,コンパートメントモデルによる解析を行った。その結果,血液と内臓組織に含まれる137Cs濃度には,線形相関が存在することが明らかになった。また,内臓組織中での137Csの蓄積性(aiE/aEi)を推計したところ,137Csは,筋肉に蓄積しやすいことが明らかになった。
著者
大槻 勤 大野 かおる
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

環境の変化が崩壊定数(半減期)に最も現れやすいと予想される核外電子捕獲(Electron Capture(EC)崩壊は核外の1sや2s電子が原子核に捕獲されて崩壊する。本研究者らはフラーレン(C_<60>)内にEC崩壊核種である^7Beを内包させることに成功したことにより、^7Beの半減期測定が可能となった。本研究ではフラーレンという特殊な環境にある^7Beの半減期がどれほど変化するか調べることを目的とする。本年度までに、フラーレン中の^7Beの半減期がヘリウム温度の環境下でどれほど変化するかを調べた。また、ベリリウム金属中でも^7Beの半減期がヘリウム温度でどれほど変化するかを調べた。分子動力学計算を駆使して^7Beの原子核位置での電子密度を調べ、実験・理論両面から核外の電子状態がEC崩壊にどれほど影響を及ぼすか解明した。その結果、以下の研究成果が得られた。1)金属ベリリウム中の^7Beの半減期は室温で53.25日、C_<60>中の^7Beの半減期はT=5Kで52.45日であった。この半減期の差異は約1.5%短く、これまでの観測で最大の達いとなった。2)^7Beをドープした金属ベリリウムをT=5Kに冷却した場合と室温中の場合では約0.3%後者の方が半減期が長くなることが分かった。3)密度汎関数理論・局所密度近似(LDA)に基づき、研究分担者(大野)が開発した全電子第一原理計算手法(全電子混合基底法)を用いて、各々の実験のケースに沿った原子核位置での電子密度を決定した。これらの成果はアメリカ物理学会誌等に投稿中である。