著者
泉田 直己 浅野 優 保崎 純郎 川野 誠子 沢登 徹 平岡 昌和
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.679-686, 1997-11-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
15

QT時間延長児の重症不整脈の危険度を明らかにするために, その再分極の不均一性の指標としてactivation reoovery interval (ARI) のdispersionを失神の既往のあるJervell and Lange-Nielsen症候群例と失神のない低力ルシウム血症によるQT延長児で調べ, 同年代の正常例と比較した.ARlは, 体表面87点から記録した心電図波形の一次微分のQRS区間での最小点とSTT区間でのdV/dtの最大点間の時間とし, 全体での最長値と最短値の差をARIのdispersionとした.ARI値の分布パターンは正常例とQT延長例のいずれもほぼ同様のパターンを示したがARI disperlionは失神発作のあるQT延長例で明らかに高値を示した.この結果は, 心室性不整脈による失神発作があるQT延長例での再分極の不均一性の増大と一致するものと考えられた.ARI dispersionは小児QT延長例における失神の危険度の判定因子として利用できる可能性が示された.
著者
沢登 徹 平野 裕司 平岡 昌和
出版者
The Japanese Society of Electrocardiology
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.5, no.6, pp.757-767, 1985

薬物による不整脈モデルとして使われているアコニチンの不整脈発生機序を明らかにするため, 外液Caを除去した条件およびCa<SUP>2+</SUP>遮断剤を加えた条件下で検討した。アコニチンは無Ca<SUP>2+</SUP>溶液中で活動電位の静止電位, オーパーシュート, Vmaxを減少し, 90%持続時間を短縮して, 5.5分後に遅延後脱分極 (DAD) を発生し, 11分後に誘発活動 (TA) を生じた。頻拍が自然停止した後はDADおよびTAは単発刺激で出現した。ベラバミル共存下または前処置でもDADの発生は抑制できず, LaCl<SUB>3</SUB>, TTX共存下で抑制できた。高Kや低NaはDADの振幅の大きさを抑制した。このアコニチンによるDADは一過性内向き電流 (T1) によりもたらされた。以上よりアコニチンは細胞内Na負荷を生じることで遅延後脱分極や誘発活動をもたらす。このことは誘発活動を引き起こす一つの実験的モデルとなり得ると思われる。