著者
西嶋 恭司 櫛田 淳子 河内 明子
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は,地上における大気チェレンコフ望遠鏡観測において,観測のスケジューリングや観測効率,観測データの質に大きな影響を及ぼす雲を常時監視し客観的な記録を残すために,赤外線全天雲モニターの開発を行うことであった.国立天文台で実用化された中間赤外線雲モニターをベースに,検出器部には8μmから14μmの赤外線に対して感度がある非冷却型固体撮像素子を備えた市販の赤外線カメラを用い,視野角を全天に拡大するための反射凸面鏡および副鏡を組み合わせた光学系を設計・製作した.画像の取得は,特注の45m長RS232Cケーブルでカメラとコントロールルームをつなぎ,パソコン上からGUIを用いてリモートコントロールできるようにした.リモートコントロールについては,適切なキャリブレーションを行えば,オフセットをオートにし,ゲインのみ調整すれば見やすい画像が得られることがわかった.また,昼間は摂氏40度を越える猛暑の砂漠の中で9日間の長時間連続運転テストの結果,一部のピクセルにノイズが乗ったものの正常に動作することが確認された.夜間の観測中には肉眼では視認できなかった薄い雲が,モニター画面上でははっきり見えており,その有効性が確かめられた.さらにデータを1次元スライスすると,雲の位置とその厚さが明確に見え,快晴でも天頂より低空の方が赤外線が強く見られた.当初,信号雑音比を上げるために画像の演算処理による重ね合わせを考えていたが,その必要が無いことも確かめられた.本雲モニターの導入により,空の状態の常時監視と客観的記録が実現するため、データの質の向上が期待され、効率的な観測のスケジューリングが可能となった。