著者
呉 珠響 斉藤 恵美子 河原 加代子
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.74-79, 2009-03-31 (Released:2017-04-20)

目的:本研究は,都市部の一地域に暮らす在日フィリピン人の肥満と生活習慣の実態を明らかにし,基礎資料を得ることを目的とした.方法:20歳以上の在日フィリピン人60名に対し,無記名の英語の自記式質問紙による集合調査を実施した.結果:回収数は53名,有効回答数は40名であった.男性は12名(30.0%),女性28名(70.0%),BMI≧25の割合は男女ともに25.0%であった.男女での2群間での比較では,男性のほうが,家族以外の者との同居,大学卒業以上,8時間以上の勤務の人の割合が有意に高かった.また,男性のほうが,毎日フィリピン料理を食べる人の割合が有意に高く,ミリエンダの回数が有意に多く,食品摂取の多様性得点が有意に低く,食事の時間が有意に短かった.肥満群と非肥満群との比較では,肥満群のほうが,腹囲≧90cmの人の割合,身体的疲労がある人の割合,日本料理を食べる頻度が少ない人の割合が有意に高かった.結語:在日フィリピン人の肥満者の割合は25.0%であった.彼らの身体的な疲労,肉体労働への従事や長時間勤務,および食生活に関する習慣が肥満に影響を及ぼしていることが明らかになった.仕事や生活状況を考慮した肥満予防と健康維持および増進のための保健指導の必要性が示唆された.
著者
榎本 聖子 松下 祥子 河原 加代子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.5_75-5_85, 2012-12-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
27

【研究目的】本研究の目的は,糖尿病児童生徒への支援の現状を分析することである。【研究方法】埼玉県の公立学校に勤務する養護教諭997名を対象に質問紙調査を行い,451名の有効回答を得た。質問内容は,①糖尿病に関する専門知識と低血糖リスクへの判断,②学校での支援の実際,③医療機関との連携等であった。②と③は,強化インスリン療法一般化以降の指導経験者204名を対象にした。【研究結果】1)養護教諭は,糖尿病に関する基本的な理解はできていたが,長期合併症やヘモグロビンA1cに関する知識は不十分であった。2)専門知識,指導経験をもつ養護教諭は,低血糖リスクに対してより適切な判断をしていた。3)養護教諭と看護職とのかかわりはほとんどなかった。4)医療的ケアの実施を依頼された経験のある養護教諭は指導経験者の11~15%で,そのうちの一部は同意していた。5)看護職と養護教諭との協働は,学校における支援の質の向上につながる,と考えられた。
著者
笠井 真紀 河原 加代子
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.75-80, 2007-03-30 (Released:2017-04-20)
被引用文献数
1

目的:育児期間中の母親への夫の育児サポートと夫婦関係との関連を明らかにし,子育てに取り組む母親への育児支援についての示唆を得る.方法:対象は東京都内A保健センターの乳幼児健康診査に来所する母親とし,「夫の育児サポート」(5項目)と「夫婦関係」(8項目),基本属性などについて,研究者作成の自記式・無記名の質問紙調査を行った.結果:対象者は407名であり,196名から回答を得た(回収率48.2%).1)対象者の平均年齢は32.4±4.2歳,結婚時の平均年齢は26.5±4.2歳,健診対象児が第1子である者は91名(47.2%)であった.2)「夫の育児サポート」と「夫婦関係」の因子分析を行った結果,どちらも1因子であり,『共同感』,『親近感』と名づけた.3)「夫の育児サポート」と「夫婦関係」の因子得点の相関分析を行った結果,強い正の相関が認められた(r=0.759, p<0.01).4)母親の基本属性,性別役割分業観別に「夫の育児サポート」と「夫婦関係」の因子得点の平均値を比較した結果,有意差は認められなかった(p<0.01).結論:育児期間中の「夫の育児サポート」と「夫婦関係」はどちらも1因子で構成され,重複する部分が多い概念であった.母親が『親近感』を感じることにより,『共同感』も高まることが期待できる.
著者
河原 加代子
出版者
首都大学東京
巻号頁・発行日
2006

1.本研究は、後遺症として認知機能に障害をきたす割合が高い脳血管障害者を対象に、リハビリテーション病院のベットサイドの生活空間において、患者の動作と脳血流の変化を測定することにより、認知機能のアセスメントと評価、そして具体的な看護方法を開発することを目的とする。2.対象は、リハビリテーション病院に入院中の脳血管障害者7名(男6名、女1名)と、健常者1,1名(男6名、女5名)の合計18名であった。測定用具は、非侵襲的かつ量的視覚的に測定可能な近赤外光イメージング装置fNIRS(functional near-infrared spectroscopy)島津製作所を用いて前頭葉の脳血流の変化を測定した。看護方法の課題(タスク)の作成と精選-歯をみがく、髭をそる、靴下をはく、靴をはく、ボタンをかける、手洗いをする、字をかく、塗り絵をぬる、字をよむ、ルービックキューブ、アイスマッサージ、箸をつかうなど16動作を実施した。3.全タスクにおいて、健常者、脳血管障害者の両者で、介助よりも自力で行った際の脳血流量の変化が著明であった。脳血管障害者が生活動作を再獲得していく過程において、自力で行うことへの看護介入の段階的な援助は、刺激として有効であることを新ためて視覚的に確認することができた。また「食べる」タスクは、他のタスクに最優先して援助される必要がある。「食べる」能力の再獲得は他の日常生活動作の能力を引き出すきっかけともなり得る。この脳賦活化の良質な刺激となるタスク動作の順序性と段階的な刺激の提示が、障害者の機能レベルに合致した介入方法としてプログラミングされることが重要である。こうした看護介入の根拠を明らかにすることは、同時に患者及び家族にとっても機能回復にむけた訓練の効果を視覚的に知ることが可能となる。
著者
石田 千絵 河原 加代子 高石 純子 入江 慎治 杉本 正子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.139-147, 2004-12-25

〔目的〕統合カリキュラム後の本学3年次生で実施されている地域看護実習(保健所・保健センター実習)の4年間の実態を検討し, 今後の教育活動に生かすことを目的とした。〔方法〕平成12年度から15年度の3年次生314名の実習記録物と平成14年度の3年次生75名の実習後レポートを分析対象とした。調査内容は, 1)実習経験の有無とその内容2)実習の学びについては, 実習目標の項目から質的に分析した。〔結果〕1) 4年間の実習形態の実態は, (1)教育的な働きかけをとり入れた「実施」経験の増加(2)「実施」できる事業内容の変化(3)家庭訪問の継続訪問の経験の減少2)実習内容では, (1)実習地域の健康問題と看護活動を関連付けて学べていること(2)継続看護・関係機関や他職種との連携は, 精神保健事業を通して多くの学生が学べていたことがわかった。今後さらに, 実習前の演習の工夫や実習施設との連携が重要である。