著者
河原崎 達雄 赤松 裕久 知久 幹夫 堀内 篤 番場 公雄
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 = The Japanese journal of swine science (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.183-190, 2002-09-20
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

系統造成豚や希少品種などの遺伝資源を効率的に保存することを目的とし, 発泡スチロール容器を用いた, 少容量ストローによるブタ精液簡易凍結法のための温度コントロール, グリセリン平衡時間について検討した。生殖能力の確認されている大ヨークシャー種2頭, デュロック種2頭, ランドレース種2頭の6射出精液を用い, 5℃で, 2.5%グリセリン添加BF5で希釈し, 0.5m<i>l</i>プラスチックストローに封入した。表面が硬質ゴム製のラックにストローを載せ, 発泡スチロール容器内の液体窒素面から4, 10, 15, 20cmの高さで凍結, あるいは, 凍結容器内で予め冷却された金属製ラック (液面から4cm) の上にストローを直接載せ凍結させてから20分後にストローを液体窒素内に浸漬した。-15℃~-30℃温度域のサンプルの冷却速度は3.5~90.5℃/minであった。凍結精液の融解は50℃の恒温水槽内で8秒間加温することによって行った。融解後の最終温度は27℃, -196~27℃までの加温速度は1,672℃/minであった。融解後の精液は30℃のBTSで10倍希釈した後, 37℃恒温水槽内で6時間培養し, 精子活力, 頭帽正常精子率を調べた。精子活力はゴム製ラックを利用して液体窒素液面から4cmの部位で凍結したときが最も優れていた。頭帽正常精子率は金属製ラックあるいはゴム製ラックを用いて, 液体窒素液面から4cmの位置で凍結したときが優れていた。これらの結果から, 0.5m<i>l</i>ストローでのブタ精液凍結保存時の至適冷却速度 (-15~-30℃の温度域) は, 35~90℃/minであると推察された。グリセリン添加後, 希釈精液を5℃で, 0~6時間処理したが, グリセリン平衡時間は凍結, 融解後の精子の生存性にほとんど影響しなかった。本研究で用いた0.5m<i>l</i>の少量ストローの簡易凍結法は体外受精や卵管内授精での利用が可能であり, 遺伝資源の保存等に応用できるものと思われる。
著者
皆川 至 高力 宙 佐方 醍 柴田 昌利 与語 圭一郎 河原崎 達雄 高坂 哲也
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第103回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.81, 2010 (Released:2010-08-25)

【目的】リラキシン関連因子(RLF)はブタで発見されたinsulin-relaxin gene familyの一つで,マウスでは精巣下降に必須である。多くの動物でcDNAのクローニングがなされ,RLFはA-B-C鎖からなる前駆体(プロRLF)として生合成された後,A-B鎖ヘテロダイマーとして機能すると推測されてきた。しかし,native RLFがダイマーとして精巣に存在するか不明である。加えて,本遺伝子の発現は成熟精巣でも認められているものの,その機能は定かでない。本研究ではブタ精巣よりnative RLFを単離してその構造と特性を明らかにすると共に,分泌後の行方や受容体の分布から作用発現の可能性を究明した。【方法】デュロック種の雄ブタを用いた。各種クロマトを組み合わせ精巣よりRLFを単離した。構造解析はMaldi Tof/Tof MSで行い,生物活性は受容体LGR8を導入したHEK293細胞におけるcAMP産生能で評価した。血中および体液中RLF濃度は時間分解蛍光免疫測定法で,受容体の局在は免疫染色で調べた。【結果】In situ hybridizationと免疫染色よりライディッヒ細胞でRLFの産生を確認した。精巣をゲル濾過,イオン交換FPLCおよび逆相HPLCに供し,RLFを約12kDaの単一ピークとして単離することに成功した。MSMS解析の結果,60%のプロテインカバレッジでA-B-C鎖ドメインが同定され,RLFは前駆体の構造をとることが判明した。単離したRLFはnMオーダーでcAMP産生を刺激し,十分な生物活性を有していることが分かった。一方,産生源のライディッヒ細胞から分泌されたRLFは精巣静脈のほか,精巣間隙,精細管内液および精巣網液で高濃度で検出された。さらに,精細管内上皮細胞とライディッヒ細胞では受容体の免疫局在が観察された。【結論】ブタでは,RLFは生物活性を持った前駆体としてライディッヒ細胞より分泌され,内分泌,傍分泌または自己分泌因子として機能することが示唆された。