著者
河合 弘二
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.530-536, 2007 (Released:2007-12-13)
参考文献数
28

抗がん剤を用いた膀注化学療法と膀注免疫療法はともに表在性膀胱がんの治療体系に組み入れられた標準治療であり,特にBCG(bacillus Calmette-Guerin)菌を用いたBCG膀注療法は現状では最もよく行われ,かつ臨床的有用性の確立したがん免疫療法である.膀注療法の最も一般的な適応は表在性膀胱がんに対する経尿道的切除術後の再発予防である.また,膀注療法は上皮内がんに対する治療としてもその有効性が認識されている.また,これらの膀注療法の最終的な目標は表在性膀胱がんから浸潤性膀胱がんへの進展を予防することにある.TUR後早期の単回の抗がん剤膀注による膀注化学療法は,低あるいは中間リスク症例に適応され,その有効性が証明されているが,維持療法に関しては評価は一定していない.BCG膀注療法は一般的に膀注化学療法よりも有効であるが,有害事象も多いとされている.しかし,複数のメタアナリシスによる解析ではBCG膀注療法が有意に浸潤性膀胱がんへ進展するリスクを低減しうることが示されている.本稿では,最近のメタアナリシスによる知見も含めて膀胱がんに対する膀注療法の現状について概説したい.
著者
関戸 哲利 樋之津 史郎 河合 弘二 赤座 英之 小磯 謙吉
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.1177-1180, 1995-06-20
被引用文献数
3 1

患者は68歳女性で13年前に広汎子宮摘出術と放射線治療を施行された.1992年と1993年に腹膜炎で入院し, 2回目の入院時の腹水の生化学所見が尿の組成に近かったため尿路系からの溢流を疑われ泌尿器科を受診した.IVP上, 上部尿路に異常はなく, 膀胱造影, 膀胱鏡上も明らかな膀胱破裂は認められなかったが, 尿流動態検査上, 多量の残尿と尿意の異常, 低コンプライアンスが認められた.これらの結果から, 広汎子宮摘出術による神経因性膀胱と放射線照射による膀胱障害を基盤とした自然膀胱破裂が腹膜炎の原因として強く疑われた.