著者
兼本 浩祐 川崎 淳 河合 逸雄
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.9-14, 1995-02-28 (Released:2011-01-25)
参考文献数
19

てんかんを疑われて来院した進行性ミオクローヌスてんかんの症例 (以下PME群) を, 若年性ミオクローヌスてんかんの症例 (以下JME群) と比較し, 問診と初診時の脳波所見について, 両群で有意差を示す項目を見いだすことを試みた。その結果, (1) 基礎律動の徐波化, (2) 棘徐波の出現の頻繁さ (最初に棘徐波が出現した時点から30秒以内に棘徐波の群発が3回以上) が, PMEに, (3) 覚醒後数時間にほぼ限定された大発作がJMEに, 有意に多い特徴として取り出された。初期の段階におけるPMEは, JMEと様々の点で誤診される危険のある病態であることを強調し, JMEの診断の際に留意すべきであることを指摘した。
著者
河合 逸雄
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.45-53, 1983-01-15

抄録 異常脳波を呈した離人症4例について,その症状と脳波所見の縦断的検索を行った。初診時の脳波所見は2例において,棘波,鋭波が見出され,1例はδ波を含む徐波の混入,1例は徐波の群発が認められた。 離人症以外に4例中3例は間脳症的症状を,別の3例は機会性けいれんを併発する。 4例とも離人症は生活史的にある程度了解されるが,疾病論的には神経症,てんかんいずれも属し難いと思われる。離人症消退時4例とも脳波は正常化した。この際1例を除き,脳波正常化におよぼす薬物(特に抗けいれん剤)の影響は否定される。 ここにあげられた離人症例は特殊な型であろうけれども,離人症の病態機序として間脳の機能異常,脳機能の未熟性などを推論した。また,脳波が,個体の転換期において,変化すること,いかなる精神症状も生体の機能変遷として捉えられることを論じた。
著者
兼本 浩祐 川崎 淳 武内 重二 河合 逸雄
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.202-210, 1995-10-31 (Released:2011-01-25)
参考文献数
19
被引用文献数
2 4

難治側頭葉てんかんのため本院で手術を受け1年以上経過した22例の患者について術後の精神症状を検討した。その結果, (1) 術前に精神病状態を体験したことのない患者で術後新規に精神病状態を体験した患者が3例あり, いずれも右切除例であった, (2) 際立った精神症状をきたした患者では, 実体的意識性, 夢様状態を前兆とするものが比較的多かった, (3) うつ状態は術後3カ月以内には出現し, 時には自殺企図を伴うほど重症になった, (4) 術前に敵意・攻撃性が目立った患者は, 術後には改善がみられた, (5) 精神症状の大部分は1年以内には消失したが, 軽症化したものの2年以上遷延した例が2例みられた。以上の結果を文献例と比較し, 術後精神病を心因論だけからは説明することが難しいことを指摘するとともに, 側頭葉てんかんに対する外科手術後に, 神経学的, 神経心理学的評価だけでなく, 精神科的評価が不可欠であることを考察で論じた。