著者
河本 和明 鵜野 伊津志 梅澤 有 斎藤 有
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

東シナ海上空における海洋の生物過程から生じる硫酸塩エアロゾル(海洋生物エアロゾル)について、海洋現場観測や同位体分析、数値大気モデルによる計算を通して動態を明らかにし、その雲場への影響について調査した。海洋生物エアロゾルの寄与は、様々な種類のエアロゾルが混在する東シナ海上空ではあまり大きくない。しかし雲場は、衛星搭載のレーダと受動型放射計による解析から特徴的な振る舞いを示すこと、海洋現場観測によってDMSとクロロフィルの季節変動、同位体分析によって鉛の起源について知見を得ることができた。
著者
早坂 忠裕 河本 和明 谷田貝 亜紀代 久芳 奈遠美
出版者
総合地球環境学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、主に衛星データを用いて、低層雲を対象に、その雲量、光学的厚さ、鉛直積算雲水量、雲粒有効半径の日変化の実態を明らかにし、変化のメカニズムを解明した。まず、静止衛星GOESデータを用いて雲特性の日変化を調べた。1997年7月のGOESデータに前述の雲解析手法(太陽反射法)を適用し、カリフォルニア沖の雲の様子を解析した。その結果、雲の光学的厚さは午前中から正午にかけて減少、その後夕方にかけて増加すること、一方雲粒有効半径は逆に午前中から正午にかけて増加、その後夕方にかけて減少することがわかった。雲の光学的厚さの日変化は一日の中で日射量の変化による大気加熱の時間変化などの要因に依るものと考えられる。また雲粒有効半径の日変化は粒子が時間とともに成長し、大きな粒子が重力沈降で落下し雲1頂付近には比較的小さな粒子が存在することも考えられる。また蒸発などの熱力学過程や衝突併合などの微物理過程など複雑な機構が関与しているであろう。太陽反射法では近赤外チャンネルによる水の吸収率の関係から雲頂付近の様子を見ているため、このような現象を捉えている可能性が示唆される。次に、NOAA/AVHRRデータを用いて、衛星の赤道通過時刻のずれを利用して日変化を調べた。全球平均した雲粒有効半径の変化は、昼から夕方になるにつれて海陸ともに粒径が小さくなっていることがわかった。この傾向は前節で述べたGOESデータを用いたカリフォルニア沖の雲の解析例とも一致する結果である。雲の日変化の地上観測については同じくカリフォルニア西部において行われた例があり、この研究では地上からマイクロ波放射計と日射計を用いて雲の光学的厚さと雲粒有効半径を推定しており、午後から夕方にかけて雲粒有効半径が徐々に減少していることがわかった。これも本研究と整合性のある結果である。