著者
笠岡 俊志 大塚 洋平 牟田口 真 熊谷 和美 金子 唯 河村 宜克 鶴田 良介 前川 剛志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.283-288, 2010-06-30 (Released:2023-03-31)
参考文献数
9

救急隊の活動中には現場や搬送の状況により良質な胸骨圧迫を実施できない可能性が指摘されている。本研究の目的は救急隊による心肺蘇生の質的評価と課題について検討することとし,救急救命士を対象に心肺蘇生の質に関するアンケート調査を行うとともに,蘇生訓練用シミュレーターを用いて胸骨圧迫の質および身体的ストレス度について評価した。アンケート調査では,蘇生活動時間のうち平均27%(中央値5分)は良質な胸骨圧迫を実施できていなかった。シミュレーターによる評価では,2分間の胸骨圧迫のうち約30%は良質な胸骨圧迫ではなかった。救急救命士の血圧・脈拍数・呼吸数で評価したストレス度は,胸骨圧迫実施前に比べ胸骨圧迫後に有意に上昇した。救急隊による心肺蘇生中には良質な胸骨圧迫を実施できない時間が存在し,改善策が必要である。
著者
河村 宜克 藤田 基 井上 智顕 山本 隆裕 古賀 靖卓 八木 雄史 中原 貴志 戸谷 昌樹 金田 浩太郎 鶴田 良介
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.552-556, 2023-08-31 (Released:2023-08-31)
参考文献数
9

トンネル内で急性一酸化炭素(carbon monoxide,以下COと略す)中毒患者が多数発生した事例において,隣県のドクターヘリコプター(以下ドクヘリと略す)とともに傷病者7例を高気圧酸素(hyperbaric oxygen,以下HBOと略す)治療装置のある4施設に分散搬送したので報告する。トンネル内で作業員が倒れているとの情報で,ドクヘリが覚知要請された。 現場到着時,傷病者はトンネル内で,発電機を複数台持ち込み作業していたとの情報から,急性CO中毒を疑った。傷病者は7例で19〜58歳,全員歩行不能であり,JCS 1桁であった。 経皮的カルボキシヘモグロビン濃度は,測定可能であった4例では30%前後であった。最終的に救急車で直近のHBO治療装置保持施設に3例,次に近い施設に1例搬送した。山口県ドクヘリで2例,広島県ドクヘリで1 例をさらに離れたHBO治療装置保持施設2施設へ分散搬送した。
著者
藤田 基 古賀 靖卓 中原 貴志 戸谷 昌樹 宮内 崇 金子 唯 金田 浩太郎 河村 宜克 小田 泰崇 鶴田 良介
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.663-669, 2014-10-31 (Released:2015-01-24)
参考文献数
24

過去10年間に当院で初期治療を行った急性一酸化炭素(以下CO)中毒患者69例を24時間以内に行った治療で気管挿管群(9例),酸素マスク群(20例),HBO群(40例)に分け,高気圧酸素(以下HBO)治療が間歇型の発症予防及び間歇型・遷延型の症状改善に有用かを後方視的に検討した。間歇型を気管挿管群1例,酸素マスク群1例,HBO群2例に,遷延型を気管挿管群2例,酸素マスク群1例,HBO群1例に認めたが,どちらも各群間で症例数に有意差は認めなかった。間歇型症例は全例発症後に複数回HBO治療が施行され,酸素マスク群の1例を除く3例で症状は改善した。遷延型症例はHBO群の1例のみ慢性期に繰り返しHBO治療が施行され,症状改善を認めた。当院のプロトコールによるHBO治療では間歇型の発症予防効果は明らかでなかった。発症した間歇型・遷延型の治療としてのHBO治療は有用である可能性が示唆された。
著者
田中 亮 金田 浩太郎 戸谷 昌樹 宮内 崇 藤田 基 河村 宜克 小田 泰崇 鶴田 良介
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.398-401, 2016-07-01 (Released:2016-07-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

当施設では心停止蘇生後患者に対する目標体温管理の導入と維持など,治療を目的とした体温管理に血管内冷却システムを使用している。今回,38歳男性のIII度熱中症患者に対し,体温管理目的に血管内冷却システムを使用し,良好に体温を管理できた症例を経験した。当施設に救急搬送され,体表冷却・冷却輸液などの従来の冷却方法を用いて管理した症例との比較では,目標温度到達時間や冷却速度は両者に差はなかったが,従来型冷却法では体温のリバウンドが認められたのに対して,血管内冷却システムを使用した本症例では目標温度到達後も体温を安定して管理できた。血管内冷却システムは熱中症症例の体温管理にも有用である可能性が示唆された。