著者
木下 順弘 蒲原 英伸 藏元 一崇 池田 公英 入江 弘基 笠岡 俊志 浅井 篤
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.323-326, 2014-10-20 (Released:2014-10-20)
参考文献数
5

【症例】30代女性,妊娠25週.軽乗用車の後部座席に乗車中,他車と衝突し受傷した.来院時意識清明であった.多発外傷の治療中,原因のはっきりしないびまん性脳腫脹をきたした.神経学的所見,平坦脳波より脳死状態と診断した.家族は母体の延命を希望せず,挙児の希望があり,脳死後4日目に帝王切開術にて718gで出生し,まもなく母体は心停止した.世界的にも脳死母からの出生は極めてまれであり,本例の方針決定の経過を報告する.
著者
田中 拓道 金子 唯 辛島 龍一 岩下 晋輔 入江 弘基 吉野 幸生 笠岡 俊志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.741-744, 2016-12-31 (Released:2016-12-31)
参考文献数
7

症例1:55歳,男性。主訴,意識障害。既往歴,2型糖尿病。早朝に唸り声を上げているのを家人が発見,呼びかけても返答がないため救急要請。救急隊血糖測定で51mg/dL。当院救急外来搬入時血糖測定を施行し35mg/dL。ブドウ糖投与し,意識レベル改善,経過観察の後,独歩帰宅となった。症例2:74歳,男性。主訴,意識障害。既往歴,2型糖尿病。就寝後の排尿介助時に意識が朦朧としており,3時間後の排尿介助時は呼びかけに反応がなく,救急要請。救急隊血糖測定で61mg/dL。当院救急外来搬入時血糖測定を施行し36mg/dL。ブドウ糖を投与し,意識レベル改善,経過観察の後,独歩帰宅となった。今回経験した2例は低血糖発作症例であったが,病院前ブドウ糖投与プロトコール適応とならなかった。
著者
笠岡 俊志 金子 唯 原田 正公 奥本 克己 前原 潤一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.146-150, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
6

救急救命士による低血糖症例へのブドウ糖溶液の投与に関して,熊本県メディカルコントロール協議会では20%ブドウ糖溶液を用いることを決定した。熊本県の全消防本部に依頼して,低血糖のため救急救命士が20%ブドウ糖溶液40mlを投与した症例を対象にして,ブドウ糖溶液投与前後の意識レベル(Japan Coma Scale)と血糖値を調査した。対象症例は30例で,男性18例,年齢は72歳(中央値)。ブドウ糖溶液投与から病院到着までの時間は7.5分(中央値)。血糖値(中央値)はブドウ糖溶液投与前の38mg/dLから病院到着時には88mg/dL まで有意に上昇した。病院到着時の意識レベルは30例中24例(80%)で改善を認めた。病院前における低血糖症例に対する20%ブドウ糖溶液の投与は,血糖上昇および意識レベル改善に一定の効果が期待でき,高張な50%ブドウ糖溶液投与のリスクを考慮すると病院前において有用かもしれない。
著者
田中 拓道 岩下 晋輔 金子 唯 辛島 龍一 入江 弘基 笠岡 俊志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.733-737, 2017-12-31 (Released:2017-12-31)
参考文献数
9

症例は34歳の女性でNeurofibromatosis 1(以下,NF1)の既往があり,呼吸困難を主訴に救急搬入された。来院後間もなくショック状態となり,左椎骨動脈破裂の診断で緊急カテーテル塞栓術を施行した。その後,止血したが脳死とされ得る状態となった。若年症例であり家族の希望から臓器移植のドナー適応があるか検討を行った。NF1に合併する全身血管の奇形や脆弱性が問題となり,臓器提供には踏み切れないとの判断に至った。その後,第21病日に死亡退院となった。NF1はvon Recklinghausen 病として知られる先天性疾患であり,血管奇形・脆弱性から血管破裂・出血をきたし,しばしば重篤なショック状態に陥る。NF1に伴う血管奇形は国内でも多く報告される。本例では出血性ショックおよび血管攣縮で脳幹虚血・梗塞から脳死とされ得る状態になったと考えられた。臓器移植適応も検討されたが臓器提供には踏み切れなかった。
著者
金子 唯 池松 英治 池田 光隆 笠岡 俊志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.716-719, 2016-12-31 (Released:2016-12-31)
参考文献数
11

背景:院外心肺停止に対する,情報指令員による心肺蘇生(CPR)の口頭指導は蘇生ガイドラインで推奨されるが,その神経学的予後の改善効果は明らかではない。今回,熊本市消防局の心肺停止活動記録を用いて,口頭指導の予後改善効果を検討した。方法:2013年1月から2014年12月における熊本市消防局活動記録を後方視的に検討した。口頭指導あり・なしの2群に分類し,傾向スコア解析を用いて神経学的予後を比較検討した。また2群間のバイスタンダーCPRおよびAED使用率について比較検討した。結果:傾向スコア解析による口頭指導あり群(n=701)となし群(n=290)の神経学的予後(CPC1-2)比較で,口頭指導あり群は有意に予後良好であった(オッズ比2.338(1.161-4.711),P=0.0176)。口頭指導あり群は,有意にバイスタンダーCPR・AED使用率が高かった。結論:口頭指導の神経学的予後改善効果が示唆された。
著者
笠岡 俊志 大塚 洋平 牟田口 真 熊谷 和美 金子 唯 河村 宜克 鶴田 良介 前川 剛志
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.283-288, 2010-06-30 (Released:2023-03-31)
参考文献数
9

救急隊の活動中には現場や搬送の状況により良質な胸骨圧迫を実施できない可能性が指摘されている。本研究の目的は救急隊による心肺蘇生の質的評価と課題について検討することとし,救急救命士を対象に心肺蘇生の質に関するアンケート調査を行うとともに,蘇生訓練用シミュレーターを用いて胸骨圧迫の質および身体的ストレス度について評価した。アンケート調査では,蘇生活動時間のうち平均27%(中央値5分)は良質な胸骨圧迫を実施できていなかった。シミュレーターによる評価では,2分間の胸骨圧迫のうち約30%は良質な胸骨圧迫ではなかった。救急救命士の血圧・脈拍数・呼吸数で評価したストレス度は,胸骨圧迫実施前に比べ胸骨圧迫後に有意に上昇した。救急隊による心肺蘇生中には良質な胸骨圧迫を実施できない時間が存在し,改善策が必要である。