著者
河江 敏広 加藤 哲也 高木 隆司 松岡 立也 中山 誠子 服部 順和
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.D0627, 2004 (Released:2004-04-23)

【はじめに】近年、肥満症に対する有効な治療法としてVery Low Caloric Diet(VLCD)がある。これは総摂取エネルギーを420kcal/dayに制限し短期の減量を可能とするものである。先行研究によればVLCD中に運動を実施した報告は散見するが運動効果に関する報告は少ない。今回、糖尿病を合併した単純性肥満一症例に対しVLCD中にAmerican College of Sports Medicine(ACSM)の推奨する減量プログラムを実施しAerobic Exercise(AE)とResistance Training(RT)が体重(BW)、脂肪量(FM)、除脂肪量(LBM)に与える効果を文献的考察を交えて検討した。【症例】43歳、男性、身長162cm、体重104.5kg、BMI39.8、糖尿病、高度肥満指摘されるも放置。1ヶ月後、空腹時血糖268mg/dlとなり、controlおよびdiet目的にて入院となる。入院中の食事量は当初1200kcal/dayから開始し、3日後にoptifast70によるVLCDを15日間実施した。その後は漸次1200kcal/dayとした。運動指導日数は19日であった。【方法】 TANITA社製BC‐118によるインピーダンス法を用い午前、午後に身体組成を測定。数値に誤差の無いよう衣服は同一の物とした。運動プログラムはACSMに準じた内容でAE、RTを行った。【結果および考察】BWは治療前104.5kgから99.5kg(5kg減)、FMは45.3kgから41.5kg(3.8kg減)、LBMは59.3kgから57.4kg(1.9kg減)となった。先行研究によれば減量時のAEは体脂肪減少の相乗効果、RTはLBM維持効果があることを明確にしている。今回得られた結果もAEによる総消費量増加によりBW、FMの減少効果を相乗させたと考えられた。また本研究において、RTの実施にも関わらずLBMの減少が認められた。先行研究においてVLCD後のLBMの変化をみると増加または維持を認めた報告は少ない。長澤によれば絶食時の筋量減少は摂取エネルギー制限によるタンパク質不足によりアミノ酸合成が制限されることや、それによる恒常性維持の為、骨格筋タンパクが利用分解されることを原因として挙げており、VLCD中はRTによるLBM維持は困難であることが示唆された。しかしながら本症例のように肥満症は元来インスリン抵抗性を来しやすいことや糖尿病、高脂血症を合併することが多く、これらに対するRTの効果はインスリン感受性の亢進、VLDLの異化亢進による血中TGの低下など動脈硬化病変の進展防止に有効であるとの報告が多く見受けられる。VLCDにおけるRTのLBM維持効果は明確ではないがAEのみではなくRTを取り入れることはインスリン抵抗性改善の面では有用であると考えられた。
著者
馬屋原 康高 関川 清一 河江 敏広 曽 智 大塚 彰 辻 敏夫
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.9, 2019 (Released:2019-07-19)

高齢者の肺炎の約 80%が誤嚥性肺炎であり、誤嚥性肺炎リスクを早期に発見し対応すること が急務である。嚥下機能と咳嗽能力の関連があることが報告されており、咳嗽能力を評価する ことは重要である。その評価指標の一つとして、咳嗽時の最大呼気流量(CPF)が用いられてい る。CPF値が270 L/min以下となった場合、呼吸器感染症を発症すると、急性呼吸不全に陥る 可能性があるとされ、160 L/min以下では、気管内挿管も考慮される値と報告されている。そ の他 242 L/min 未満が誤嚥性肺炎のカットオフ値として報告されている。臨床的には、そのカッ トオフ値を参考に低下した CPF を種々の咳嗽介助法を用いてカットオフ値以上に引き上げるこ とが重要となる。さらに筆者らは、咳嗽音を用いてより簡便な咳嗽力の評価方法を提案している。 誤嚥性肺炎を予防する第 1 歩としてより幅広く咳嗽力評価が用いられることを期待する。
著者
馬屋原 康高 関川 清一 河江 敏広 曽 智 大塚 彰 辻 敏夫
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.9, 2019 (Released:2019-07-05)

高齢者の肺炎の約 80%が誤嚥性肺炎であり、誤嚥性肺炎リスクを早期に発見し対応すること が急務である。嚥下機能と咳嗽能力の関連があることが報告されており、咳嗽能力を評価する ことは重要である。その評価指標の一つとして、咳嗽時の最大呼気流量(CPF)が用いられてい る。CPF値が270 L/min以下となった場合、呼吸器感染症を発症すると、急性呼吸不全に陥る 可能性があるとされ、160 L/min以下では、気管内挿管も考慮される値と報告されている。そ の他 242 L/min 未満が誤嚥性肺炎のカットオフ値として報告されている。臨床的には、そのカッ トオフ値を参考に低下した CPF を種々の咳嗽介助法を用いてカットオフ値以上に引き上げるこ とが重要となる。さらに筆者らは、咳嗽音を用いてより簡便な咳嗽力の評価方法を提案している。 誤嚥性肺炎を予防する第 1 歩としてより幅広く咳嗽力評価が用いられることを期待する。