著者
前田 恵理 鍋谷 圭宏 河津 絢子 金塚 浩子 實方 由美 高橋 直樹 若松 貞子
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.62-69, 2021-04-15 (Released:2021-05-15)
参考文献数
35

外科とくに消化器外科周術期栄養管理の重要性は論を待たないが, その一環として給食の意義が論じられることは少ない. わが国ではかつて, 流動食から全粥までの段階食で外科医ごとに異なる術後管理が一般的であった. その後, 施設・術式ごとのクリニカルパスが普及し, 主に段階食で画一化された術後管理が行われるようになった. 最近は, 術後早期回復プログラムに則り術後早期経口摂取再開と早期退院を目指すクリニカルパス管理が増えているが, 実際の給食摂取状況や栄養状態などアウトカムの評価は少ない. 一方で, 患者の希望も考慮した術後食の個別化管理で, 栄養摂取増加や体重減少抑制などの有効性が報告されている. 今後は, 食事再開日, 段階食の必要性, 食形態, 提供量を患者ごとに考慮したアウトカム指向の個別化給食管理を念頭におき, 「栄養源として食べてもらえる」給食の考案と環境整備が望まれる. 適切な患者給食からの栄養摂取は患者の満足感や回復意欲の励起にも繋がると思われるが, 一方で栄養源としての限界も理解する必要があり, 癌患者の予後に影響するような栄養状態の低下を招かないように適時適切な経腸栄養・静脈栄養の併用を忘れてはならない.
著者
鍋谷 圭宏 永田 松夫 齋藤 洋茂 滝口 伸浩 池田 篤 貝沼 修 早田 浩明 趙 明浩 外岡 亨 有光 秀仁 栁橋 浩男 河津 絢子 實方 由美 掛巣 孝則 羽田 真理子 福原 麻后 近藤 忠 佐々木 良枝 前田 恵理 吉澤 直樹 内山 友貴 上野 浩明 高橋 直樹 山本 宏
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.1299-1305, 2014 (Released:2014-12-20)
参考文献数
12
被引用文献数
2

食道がん外科治療は「高リスク患者に対する高度侵襲手術」であり、特に高齢者では、日本外科代謝栄養学会ESSENSEプロジェクトの基本理念である「侵襲反応の軽減」、「身体活動の早期自立」、「栄養摂取の早期自立」、「周術期不安軽減と回復意欲の励起」を心掛けた手技と管理が必要である。近年、高齢食道がん患者に対する根治切除術も低侵襲化され、「身体に優しい」治療になりつつある。しかし、70歳以上の高齢者では、術後合併症が多い傾向で、食事開始後退院まで時間を要し、経腸栄養継続の意義が高いことが示唆された。高齢者では、oncological(がん治療としての有効性を踏まえた手術選択)、physical(肉体的)、mental(精神的)、social(社会的)な援助が適切に行われ、全人的支援があってこそ、「心にも優しい」術後早期回復が可能になると思われる。そのためには、NST・精神科医や医療ソーシャルワーカーなどを含めた多職種連携が必須である。