著者
今西 俊介 貝沼 修 鍋谷 圭宏 小林 亮介 知花 朝史 石毛 文隆
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.35-37, 2017

<p>症例は68歳,男性。突然発症した強い腹痛と嘔吐で救急搬送された。前日に餅を食べた食餌歴があり,CTでは腸閉塞像を呈し,小腸のhigh densityを呈する狭窄部より口側に複数のhigh densityな構造物が描出された。餅による食餌性腸閉塞(以下,餅腸閉塞)と診断し,絶食・輸液治療を開始した。症状は軽快し退院となった。食餌性腸閉塞は全腸閉塞の中でもまれな病態ではあるが,餅も原因となることが知られている。餅の主な構成成分であるでんぷんはアミラーゼにより分解されるアミロースが少なく,分解されにくいアミロペクチンが多く含まれる。このため餅は膨化性や付着性が高く,不十分な咀嚼などが原因で,腸閉塞の原因となり得る。また自験例のように餅腸閉塞のCTのhigh densityな所見は特徴的であり,食餌歴の聴取と合わせて診断に有用である。</p>
著者
今西 俊介 貝沼 修 鍋谷 圭宏 小林 亮介 知花 朝史 石毛 文隆
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.035-037, 2017-01-31 (Released:2017-04-03)
参考文献数
19

症例は68歳,男性。突然発症した強い腹痛と嘔吐で救急搬送された。前日に餅を食べた食餌歴があり,CTでは腸閉塞像を呈し,小腸のhigh densityを呈する狭窄部より口側に複数のhigh densityな構造物が描出された。餅による食餌性腸閉塞(以下,餅腸閉塞)と診断し,絶食・輸液治療を開始した。症状は軽快し退院となった。食餌性腸閉塞は全腸閉塞の中でもまれな病態ではあるが,餅も原因となることが知られている。餅の主な構成成分であるでんぷんはアミラーゼにより分解されるアミロースが少なく,分解されにくいアミロペクチンが多く含まれる。このため餅は膨化性や付着性が高く,不十分な咀嚼などが原因で,腸閉塞の原因となり得る。また自験例のように餅腸閉塞のCTのhigh densityな所見は特徴的であり,食餌歴の聴取と合わせて診断に有用である。
著者
鍋谷 圭宏 大村 健二
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.191-194, 2018-08-15 (Released:2018-10-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1
著者
海堀 昌樹 宮田 剛 谷口 英喜 鍋谷 圭宏 深柄 和彦 鷲澤 尚宏 小坂 久 福島 亮治
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.221-227, 2021-12-15 (Released:2022-01-15)
参考文献数
9

本学会では2012年からESSENSE(ESsential Strategy for Early Normalization after Surgery with patient’s Excellent satisfaction)プロジェクトを立ち上げた.プロジェクトでの方策が現実に患者満足度を向上させて身体的回復を促進するか否かを検証するために,2014年に前向き多施設共同研究を行った.【方法】食道切除,胃全摘あるいは胃切除,膵頭十二指腸切除,肝切除,大腸切除を対象術式とした.対照期間として各施設従来通りの周術期管理を行う6カ月とした.その後ESSENSE介入による周術期管理を行う6カ月を介入期間とし,介入前後を術式ごとに比較する前向きコホート試験とした.【結果】術後3,7病日での質問法QoR40を用いた患者満足度の定量的評価では,5対象術式において介入群でのQoR40改善効果は認めなかった.各術式における生化学検査所見,Clavien‐Dindo分類による術後合併症発生率,在院日数,医療費においても両群間に差を認めなかった.【考察】ESSENSE介入群において良好な周術期管理結果が導けなかった要因として,「周術期不安軽減と回復意欲の励起に対する取り組み」としての患者自らのESSENSE日記記載ではQoR40患者満足度に対しては不十分であった.非介入群におけるQoR40結果自体が低値ではなく,さらなる上乗せ効果のエンドポイント設定自体が問題であったのではないかと推察された.また身体活動性の早期自立,栄養摂取の早期自立に対しても今回の介入策では不十分であったと考えられた.
著者
小林 亮介 山本 宏 貝沼 修 趙 明浩 鍋谷 圭宏 伊丹 真紀子
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.743-748, 2015

症例は33歳,男性.労作時のめまい・動悸を自覚し,近医受診しHb 7.3g/dlと貧血を指摘された.十二指腸水平部に2型腫瘍を認め,十二指腸癌の診断で,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織診断では,小円形細胞の増殖を認め,免疫染色では,MIC2,NSE陽性で,筋原性マーカーや上皮性マーカーは陰性であった.さらに,Ewing肉腫と同じ染色体転座も認め,末梢性未分化神経外胚葉性腫瘍peripheral primitive neuroectodermal tumor(pPNET)と診断した.術後は化学療法を行い,現在術後4年無再発生存中である.pPNETは四肢や胸壁などに発生する軟部腫瘍で,近年,Ewing肉腫と共通した染色体転座を有することが判明し,Ewing肉腫ファミリー腫瘍と総称される.腸管原発の発生は非常に稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.
著者
前田 恵理 鍋谷 圭宏 河津 絢子 金塚 浩子 實方 由美 高橋 直樹 若松 貞子
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.62-69, 2021-04-15 (Released:2021-05-15)
参考文献数
35
被引用文献数
1

外科とくに消化器外科周術期栄養管理の重要性は論を待たないが, その一環として給食の意義が論じられることは少ない. わが国ではかつて, 流動食から全粥までの段階食で外科医ごとに異なる術後管理が一般的であった. その後, 施設・術式ごとのクリニカルパスが普及し, 主に段階食で画一化された術後管理が行われるようになった. 最近は, 術後早期回復プログラムに則り術後早期経口摂取再開と早期退院を目指すクリニカルパス管理が増えているが, 実際の給食摂取状況や栄養状態などアウトカムの評価は少ない. 一方で, 患者の希望も考慮した術後食の個別化管理で, 栄養摂取増加や体重減少抑制などの有効性が報告されている. 今後は, 食事再開日, 段階食の必要性, 食形態, 提供量を患者ごとに考慮したアウトカム指向の個別化給食管理を念頭におき, 「栄養源として食べてもらえる」給食の考案と環境整備が望まれる. 適切な患者給食からの栄養摂取は患者の満足感や回復意欲の励起にも繋がると思われるが, 一方で栄養源としての限界も理解する必要があり, 癌患者の予後に影響するような栄養状態の低下を招かないように適時適切な経腸栄養・静脈栄養の併用を忘れてはならない.
著者
鍋谷 圭宏 永田 松夫 齋藤 洋茂 滝口 伸浩 池田 篤 貝沼 修 早田 浩明 趙 明浩 外岡 亨 有光 秀仁 栁橋 浩男 河津 絢子 實方 由美 掛巣 孝則 羽田 真理子 福原 麻后 近藤 忠 佐々木 良枝 前田 恵理 吉澤 直樹 内山 友貴 上野 浩明 高橋 直樹 山本 宏
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.1299-1305, 2014 (Released:2014-12-20)
参考文献数
12
被引用文献数
2

食道がん外科治療は「高リスク患者に対する高度侵襲手術」であり、特に高齢者では、日本外科代謝栄養学会ESSENSEプロジェクトの基本理念である「侵襲反応の軽減」、「身体活動の早期自立」、「栄養摂取の早期自立」、「周術期不安軽減と回復意欲の励起」を心掛けた手技と管理が必要である。近年、高齢食道がん患者に対する根治切除術も低侵襲化され、「身体に優しい」治療になりつつある。しかし、70歳以上の高齢者では、術後合併症が多い傾向で、食事開始後退院まで時間を要し、経腸栄養継続の意義が高いことが示唆された。高齢者では、oncological(がん治療としての有効性を踏まえた手術選択)、physical(肉体的)、mental(精神的)、social(社会的)な援助が適切に行われ、全人的支援があってこそ、「心にも優しい」術後早期回復が可能になると思われる。そのためには、NST・精神科医や医療ソーシャルワーカーなどを含めた多職種連携が必須である。
著者
鍋谷 圭宏 青木 泰斗 谷澤 豊 落合 武徳
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.1725-1732, 2006-08-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
15
被引用文献数
2

胃切除術後の経口摂取熱量を増やす目的で,主・副食をともに半量にした「ハーフ食」を自由摂食とし,栄養調整食インパクト™を間食とした新しい栄養管理法を47例の開腹胃切除術周術期に行った(H群).その有用性を,従来の全量粥食で摂取量を規定して管理した23症例(C群)と比較して評価した. H群では,退院直前の経口摂取熱量(1171±147kcal/日)がC群(896±163kcal/日)に比べて有意に増加し,ハーフ食からの摂取熱量に個人差が少ない傾向を認めた.しかし, H群でも熱量充足率には個人差が大きく,胃全摘術後症例では幽門側胃切除術後症例に比べて経口摂取熱量が有意に少なかった.われわれの新しい栄養管理法は,胃切除術クリニカルパスへの導入に適した統一化された方法として期待されるが,経口摂取アウトカム・目標熱量の設定や経口摂取状況の評価は術式や個人差を考慮して個別化すべきであると思われる.