著者
油井 邦雄
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.146-153, 2015 (Released:2017-02-16)
参考文献数
36

ASD の病態には,ミトコンドリアの機能障害,これと密接に関連するグルタチオン生成障害,さらに総合的抗酸化能の低下の 3 タイプが存在し,予後も治療方向性も異なっている。特に,ミトコンドリア機能障害に付随する ASD 症状は神経症状,易疲労性,胃腸障害,運動機能遅滞,けいれんを示し,かつ難治なので,診断と病態の把握は予後と治療にとって重要である。診断に役立つバイオマーカーとしては血液中の酪酸,尿中有機酸,血漿ピルビン酸,血清クレアチンキナーゼ,酸化アスコルビン酸(モノデヒドロアスコルビン酸,MDA),血液中の酪酸 / ピルビン酸の比,血清のアスパラギン酸トランスアミナーゼとアラニン酸トランスアミナーゼなど多数が報告されている。グルタチオン生成障害は社会的相互性障害,コミュニケーション障害,限定的・常同的行為といった中核症状を示すASD でも認められる病態であり,ミトコンドリアの機能障害へ容易に移行する。診断にはグルタチオン(GSH)/ 酸化型グルタチオン(GSSG)比の低下がバイオマーカーとなる。中核症状を示す ASD の一般的な病態は総合的抗酸化能の低下であり,この診断には酸化ストレスの度合(ヘキサノイルリジン, HEL)総合的抗酸化能(total antioxidant capacity,TAC)が役立つ。病態指標を検索したうえで,より合理的な診断と治療選択,予後の判断が行われることを期待したい。
著者
油井 邦雄 小柴 満美子 中村 俊 濱川 浩
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.29-34, 2011 (Released:2017-02-16)
参考文献数
47

不飽和脂肪酸のアラキドン酸は神経発達に重要な役割を果すので,ミラー入 0 ロン系を中心とした情報伝達・処理や志向性に関わる脳機能の発達不全とされる自閉症スペクトラム障(Autism Spectrum Disorders : ASD)の対人的相互性障害を改善し得ると期待される。アラキドン酸 240mg/日(12 歳以下は1/2)の臨床効果を 16 週間の double-blind placebo-controlled trial で検索した。アラキドン酸投与群はプラセボー投与群にくらべて,社会的ひきこもりとコミュニケーションが有意に改善した。神経細胞の signal transduction に関わっている transferrin が投与前にくらべてアラキドン酸投与群で有意な変動を示し,superoxide dismutase も投与前にくらべてアラキドン酸投与群有意傾向で変動した。社会的相互性障害の改善は signal transduction の upregulation によると推察された。
著者
油井 邦雄 小柴 満美子 中村 俊 濱川 浩
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 = Japanese journal of biological psychiatry (ISSN:09157328)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.29-34, 2011-03-25
参考文献数
47
被引用文献数
1

不飽和脂肪酸のアラキドン酸は神経発達に重要な役割を果すので,ミラー入 0 ロン系を中心とした情報伝達・処理や志向性に関わる脳機能の発達不全とされる自閉症スペクトラム障(Autism Spectrum Disorders : ASD)の対人的相互性障害を改善し得ると期待される。アラキドン酸 240mg/日(12 歳以下は1/2)の臨床効果を 16 週間の double-blind placebo-controlled trial で検索した。アラキドン酸投与群はプラセボー投与群にくらべて,社会的ひきこもりとコミュニケーションが有意に改善した。神経細胞の signal transduction に関わっている transferrin が投与前にくらべてアラキドン酸投与群で有意な変動を示し,superoxide dismutase も投与前にくらべてアラキドン酸投与群有意傾向で変動した。社会的相互性障害の改善は signal transduction の upregulation によると推察された。